ディーゼルカーという選択●1990年代には悪者のようにやり玉に挙げられていたが、技術の進歩により環境規制をクリアし、最近は日本国内でも多くのメーカーから登場しているディーゼル(軽油)カー。
環境性がクリアになることで、ディーゼル独特のねばりのある走りやパワー、燃費が評価され、選ぶ人も多くなってきている。
ガソリンエンジンよりも低回転域から最大トルクを発揮するため、加速が力強くなるのがディーゼルエンジンの特徴。
加えて燃費もガソリン車よりいい。そのため、かつては車重が重くて遠出をよくするSUV(当時はクロカン四駆)&ミニバン(当時はワンボックスカー)によく搭載されていた。
つまり、両者とディーゼルの相性は抜群ってわけ。最新のディーゼルエンジンを積んだSUV&ミニバンを紹介しよう。
日本で唯一のディーゼルミニバン
三菱 デリカ D:5
かつてデリカ(デリカ D:5の祖先)やパジェロなどにディーゼルエンジンを搭載していた三菱自動車。排ガス規制をクリアしたクリーンディーゼル搭載モデルを2012年からデリカ D:5に搭載している。そして実は日本で唯一のディーゼル搭載ミニバンだ。
デリカ D:5の“SUV+ミニバン”という、世界で唯一のコンセプトは、祖先であるデリカから受け継いだ。パジェロやランサーエボリューションで砂漠や砂礫を走るラリーレースで培った三菱の4WD技術を搭載し、7~8人が雪道でも悪路でもガンガン行けるタフなミニバンなのだ。
2.2Lディーゼルターボは8速ATと組み合わされ、スタート時から約2tある車重をものともせず加速させる。
家族で長距離を走る国のファミリーカー
シトロエン C4スペースツアラー

知らない人のほうが多いだろうが、フランスでは2012年に70%を超えたほど、つい最近までディーゼル車が主流だった(現在は政策としてEVへシフト中)。またトヨタや日産より早く、ルノーが1984年にエスパスというミニバンを開発するなど、日本より早い時期からミニバンが走っている。
そんなわけで、シトロエンがディーゼルエンジンを搭載したミニバンを日本に導入しても何の不思議はない。トヨタのヴォクシーやノアよりもコンパクトなボディに2Lディーゼルターボ&8速ATを搭載。コンパクトとはいえ3列目にもちゃんと大人が座れるし、2列目は3人平等の広さが与えられる(日本車の2列目は真ん中の席が狭くなりがち)。
乗り心地がバツグンなのも、この車の特徴だ。だいたい、パリから家族で約800kmも走って南仏プロヴァンスまでバカンスに出かけるお国柄。長距離を快適に走れるのは当たり前なのかもしれない。
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フォルクスワーゲン ゴルフトゥーラン

街中も走りやすいサイズで、オシャレな輸入ミニバンの代表格として支持されているのがゴルフトゥーラン。サイズは上で紹介したC4スペースツアラーとほぼ同じだ。
2Lターボに6速ATの組みあわせ。車名に「ゴルフ」と付くようにゴルフをベースに作られ、しっかりとした走りはゴルフ譲りで、国産ミニバンと比べれば特にコーナリングでの安心感が高い。
そんなゴルフトゥーランにディーゼルモデルがラインナップしたのは昨年9月。
トヨタ唯一のディーゼル車
トヨタ ランドクルーザープラド

90年代。ディーゼル悪者論が吹き荒れる中、世界初のハイブリッドカーを開発したトヨタ。以降ハイブリッドを推し進める一方で、かつてはランクルにも搭載していたディーゼルエンジン開発を縮小していったのは当然だろう。
とはいえ海外市場まで視界を広げれば、特に東南アジアや中東、オーストラリアでも人気のランクル。安くて燃費もいいディーゼルの人気は高く、日本での販売を終了しても、これらの地域にディーゼルを供給するとともに開発を続けてきた。
そしてトヨタ初のクリーンディーゼルが開発されたのが2016年。日本ではランドクルーザープラドに搭載された。実はディーゼル車比率の高いヨーロッパでの販売も見込んでいたのだが、最近のヨーロッパは電動化が急速に進んでいる。
先日オーナーたちに語ってもらったプラドの衰えない魅力を聞いても、もしかしたらこのディーゼルエンジン搭載車、後々かなり希少性の高いモデルになるかもしれない。
NEXT PAGE /日本でいち早く規制をクリアした先駆け
メルセデス・ベンツ Gクラス

90年代に東京都が課した厳しい排ガス規制。これをいち早くクリアしたのは国産メーカーではなくメルセデス・ベンツだった。同社のEクラスが2006年に初めて、環境規制をクリアしたクリーンディーゼルを搭載したのだ。
その後も同社は日本でのディーゼル車のラインナップを増やし、人気の高いGクラスにも3Lディーゼルターボが搭載されている。
最高出力286ps、最大トルク600Nm。同じGクラスのV8ツインターボなみの600Nmをわずか1200回転、つまりアクセルをちょんと踏んだ程度の低回転域から力強く発揮し、車重約2.5tをスタートさせる。9速ATと組み合わされたことで、ただでさえ燃費で有利なディーゼルなのに、さらに燃費向上が期待できる。Gクラスというと一番上のグレード「G63」をよく街で見かけるけれども、ディーゼルを積んだ350dという選択も、クレバーだと思わせてくれる1台だ。
現状、ディーゼルモデルのみ
BMW X5

街乗りもこなせるSUV(BMWはSAVと呼ぶ)の先駆者X5が、今年行われたフルモデルチェンジでついにディーゼルエンジン搭載モデルをラインナップした。というか今のところ日本市場ではディーゼルモデルしか用意されていない。それだけX5というキャラクターとディーゼルの相性に自信があるということだろう。
最新の3Lディーゼルエンジンは最高出力265ps/最大トルク620Nmを発揮。0-100km/hの加速タイムは6.5秒とスポーツセダン並みだ。一方で静粛性が高められて、車内は驚くほど静か。高速道路ではドーンと安定して走り、ワインディングではBMWらしく車を操る楽しさを味わえる。
もちろん先進の安全機能もタップリ備わり、高速道路の渋滞ではステアリング・アクセル・ブレーキを自動制御してくれる機能もある。燃費が良くて悪路も市街地も渋滞も……って、もはや敵なしのSUVではないか!?
これからは電気自動車の時代が来ると言われて久しい。しかし、こんなにも相性の良いディーゼル×SUV&ミニバンを見ると、電気になるまでの間の我が家の愛車は、ディーゼルというのも賢い選択では?
籠島康弘=文
