キャンプは“楽しむ”ものだけど、“魅せる”時代でもある。SNS全盛期、インスタ上で多くのユーザーを魅了する、こだわりを持つ大人たちの「魅せるキャンプ」に密着。
バイクにお気に入りのギアを積み、気ままにソロキャンプをしながら旅をする。キャンプ歴11年のノリさんは、そんなライフスタイルを送るひとりだ。年間40泊ほど楽しむそれは、いつだってツーリングとともにある。
名前|ノリさん(40代)
インスタグラム|noripuri
仕事|会社員
住まい|神奈川県
家族構成|独身
長年の夢を叶えるための手段が、いつしか目的に
「ずっとバイクの長旅に憧れていたんです。僕にとってキャンプは最初、旅を続けるための宿泊手段だった。だけどギアを集めたり、キャンパーの方たちと交流していくうちに、すっかりその魅力にハマってしまって、今ではキャンプを目的に旅することも多くなりました」。

かつて観た『モーターサイクル・ダイアリーズ』という映画で、若かりし頃のチェ・ゲバラが南米大陸をバイクで旅する姿に憧れ、いつか自分もと考えていたノリさん。以前から愛車のベスパで旅することはあったが、ヤマハのSR400に乗り換えてから、彼の本格的なキャンプツーリングが始まった。

「“ザ・オートバイ”っていう感じのバイクなんです。今では珍しいキック式エンジンや、走行時に振動音を体で感じられるところが、『バイクで旅をしてるぞ』って気分を盛り上げてくれる。僕にとってバイクはただの移動手段ではない。夜はキャンプしながら寄りかかり、一緒に星を見上げてお酒を飲む、旅の相棒だと思っています」。

自慢のバイクはわざと純正タンクの塗装を剥がしてむき出しに。
バイク旅の延長線上に、キャンプがある

旅先でキャンプをしながら、気ままなバイク旅を楽しむノリさん。山梨や静岡、東京の奥多摩に出かけることが多いが、九州や四国、東北などの遠方に1週間から3週間かけて旅することもあるという。

「バイクでキャンプに行く最大の魅力は、走り始めた瞬間からもうアウトドアが始まるところだと思うんです。キャンプ場に向かうまでに見られる景色や風の匂いなど、バイクに乗っているとダイレクトに感じられる。目的地に着くまでの道すがらもキャンプの一環なんですよ」。
NEXT PAGE /ギア選びは引き算。アクシデントがきっかけで習慣化したタープ泊
キャンプツーリングへのこだわりは、バイクの後ろに積まれたギアにも現れる。バイクに積めるのは最小限のギアのみ。だからこそ定期的にアップデートしなければならないし、厳選も必要だ。そんな愛用ギアを見てみよう。

「長旅になるとその分、衣類が必要だし、お土産も買って帰りたいから荷物が増えますよね(笑)。だからこそギア選びは、引き算が大事。
驚くことに、キャンプ泊では必需品と思われるテントを、彼はほとんど持っていかない。その代わりに登場するのがタープだ。

「年間40泊のうち9割がタープ泊です。テントも持ってはいるんですが、重さが4キロくらいで荷物の中でもかなり比重が重いんです。それに比べてタープは800グラム弱。タープだけだと、かなり積載量の節約になるんですよ」。
以前、キャンプの途中でテントのポールが壊れてしまい、やむを得ずタープで一夜を過ごしたのが、ノリさんがタープ泊を始めるきっかけだった。
「テントと違って外から丸見えなので、初めは少し周りの目が気になりましたね。だけど、その代わりに見上げた夜空の美しさや虫の声、自然の美味しい空気を身近に感じられる。その開放感がやみつきになったんです」。

以来、真冬でも基本はタープだけ。
究極の自己満足を叶える、最愛のギアたち
「削れるところを削れば、余裕ができた分、お気に入りのギアを積めます。ソロキャンプって究極の自己満足だと思うんですよ。だから誰かが見ていると意識して体裁を整えるのではなくて、すべてが自分の楽しみのため。自分が心地よい空間を作ることが大事なんです」。
だからギア選びもマイルールでいい。そう話すノリさんが格別にこだわるのは、ランタンと火起こしギアだ。

「ギアの中ではランタンがいちばん好きです。特に気に入っているのは、オイルが燃料のハリケーンランタン。LEDランタンなどと比べると光量は落ちますが、独特のオレンジ色の灯火が、ソロキャンプには明るすぎずにちょうどいいんですよね」。

「キャンプで焚き火は絶対必要。メタルマッチ(火打ち石)や火吹き棒、薪を割るための斧など、火起こしギアは毎回持っていきます。焚き火の炎って不思議と心を落ち着かせてくれるんですよね。

A4サイズに折りたためる焚き火台や、全面芝生のキャンプ場で焚き火をする際に使う焚き火シートなども必ず持参するというから、それだけノリさんの焚き火にかける情熱のアツさが伺える。
NEXT PAGE /一期一会から、バイクが縁でキャンプ仲間に
「ソロキャンプというと孤独なものと思われがちですが、実は全然そうじゃないんですよ」とノリさんは話す。
「友達と行くキャンプは、決まったコミュニティの中で楽しめてしまいますが、ソロキャンプは違う。ひとりだからこそ周囲の人々に対して自分の心の窓を開けやすい。フラっときた者同士で不思議な一体感も生まれて、よく一緒に飲んだりすることもありましたね。なんとなく会話が生まれて、自然と一杯やりましょうってね」。
ソロキャンプで生まれた一期一会が、バイクによってさらなる縁に繫がることもあるという。

「バイク乗り同士だったらバイクという共通言語で、話がもっと盛り上がりますね。それが縁で翌日一緒にキャンプやツーリングに出かけることもあります。それが醍醐味かなとも思います。
相棒のバイクにお気に入りのギアを積んで、今日もノリさんは自由なキャンプ旅を続ける。行く先々でバイクの縁を繋ぎながら。
これからどんな写真で我々を魅せてくれるのか、今後もインスタの投稿を楽しみに待ちたい。
