昭和おじさんの聖地、サウナ。しかし元号をふたつも跨げば変化もある。
湖や川の目の前でサウナに入り、そのまま水に飛び込んでクールダウン。そんな遊び方がじわじわと熱を帯びてきているらしい。
アウトドアサウナについて教えてもらおうと訪れたのは、長野県の小海町にある「フィンランドヴィレッジ」で開かれた日本最大級のサウナフェス「SAUNA FES JAPAN 2019」の会場。
そこは、湖畔に建てられた19のサウナで老若男女が「ととのう」不思議空間。このイベントのプロデューサーでもあり、“プロサウナー”として活動するサウナ師匠・秋山大輔さんにシーンの最前線を聞いた。
サウナの流儀① 究極のチルで自然と一体になる

——サウナが気持ちいいのはわかるんです。でも、ちょっと苦しさも伴うというか。我慢大会みたいなところありません?
それは昔ながらの“おじさんサウナ”のカルチャーですね。そもそも日本のサウナって高温で低湿度のドライサウナと呼ばれるジャンルなんです。だから熱くて息苦しいから苦手という人も多いんですが、本場フィンランドのサウナは焼いた石に水を掛けて蒸気を起こすロウリュが欠かせないので、比較的低温で高湿度。10分くらいであれば気持ちよく入っていられるものがほとんどなんです。もちろんアウトドアサウナもフィンランド式です。
——アウトドアでサウナをやろうっていうのも、斬新な気がするのですが。
サウナといえば日本では温浴施設の一角についているものですからね。でも、フィンランドをはじめ、世界的にはアウトドアでやるのが当たり前なんです。本場には水風呂というものもなくて、寒い外や湖が水風呂代わり。日本でもそれに倣い、テント式やトレーラー式の移動サウナを大自然に持ち込んでサウナを楽しむ、というのがアウトドアサウナとして広まってきているんです。キャンプと一緒に楽しんでいる人もいますね。


——外でやると、何が違うんですか?
地球に愛撫されるような感覚って言ったら良いのかな(笑)。サウナの一般的な入り方は「サウナ→水風呂→外気浴」を1セットとして、3セット程度繰り返します。そうすると「ととのう」という究極のリラックス状態が訪れるのですが、その状態を一番味わえるのが外気浴なんですね。火照った肌に風がさーっと吹いてきて、自然と一体になれるんですよ。その後に飲むビールやフードもより美味しく感じられます。
NEXT PAGE /サウナの流儀② サウナで検討し、水風呂で決断する

——経営者にもサウナーが多いと聞きましたが、「ととのう」とどんな良いことがあるんですか?
日本人って電源オフにするのが苦手じゃないですか。でも、サウナで「ととのう」と勝手にブレーカーが落ちるんですよ。
——一旦、リセットしてゼロに戻る、みたいな?
そうですね。だから確かに経営者たちの間でサウナは流行っているんですよ。ふだんからいろんなことを考えないといけないから。経営判断するときに、サウナで検討して水風呂で決断する、という人もいるくらいですよ。

——仕事にも良い影響があるっていうのは発見です。
仕事だけじゃないですよ。心の底からリラックスできる時間をつくることって、ふだんの生活でも重要ですよね。水着で楽しむものなので、男女関係なく仲間達と共有できるっていうのも、今までにはないものかなと。
NEXT PAGE /サウナの流儀③ 「ととのう」ための準備も大切に

——とってもサウナに入りたくなってきたんですが、フィンランド式のサウナをウリにしている施設以外には、どこで楽しめるのでしょうか?
アウトドアサウナの良さが広まってきたことで、今はいろんなところで開催されるイベントを中心に体験できるようになってきましたね。僕がプロデュースしている「SAUNA FES JAPAN 2019」はだいたい年1回の開催で今回が4回目。

——サウナを楽しむうえで注意すべきことや作法ってありますか?
サウナだけ入って満足したり嫌になってしまう人も多いですが、重要なのは水風呂です。外気浴の前の工程として、「ととのう」ためにはすごく大切です。サウナの熱さが苦手なら、サウナ室のひな壇の一番下から始めると良いです。熱は上に溜まるので、楽に入れると思います。
——だから上段のほうにはプロっぽい人たちが座ってるんですね。
あと、外気浴のときにはしっかり身体の水滴を拭いてください。水滴に風が当たると気化熱で体温が逃げていってしまうんです。水滴がなければ毛穴がきゅっと締まって、体温が逃げないままリラックスできます。それと、当然ですが水分補給をしっかりと。無理せず、気持ちいい範囲でサウナを楽しんでください。

自然と一体になることで、究極のリラックス状態になれるというアウトドアサウナ。
ストレスばかり溜め込んでいないで、とりあえずサウナで頭空っぽにしてみない?
玉井俊行=写真 石井 良=取材・文