水辺のサウナで汗をかき、冷たい湖に、川に、そのままダイブする。そんな本場フィンランド式の楽しみ方が、アウトドアサウナとしてじわじわと人気を増している。
そこで気になるのが、どんなタイプのサウナがあるのかというところ。一般的には耐火サウナの中で薪ストーブを燃やすという、至ってシンプルなものが多いが、意外にも個性豊かなサウナが揃っている。さらに、トレーラー型の改造サウナで、実際に購入できるものも登場しているとか。
ここで紹介するサウナは、日本でも最先端のものばかり。知っているだけでもサウナーから一目置かれるかも!?
最大20人が一気に入れる。ミリタリー由来のテントサウナ
日本人が温泉を大好きなように、フィンランド人はサウナが大好き。サウナに入らないと元気がでない。それは軍隊の兵士たちだって同じらしい。この大きなテントサウナは、フィンランド軍でも採用されているもの。造ったのは、サボッタというフィンランドのバックパックメーカーだ。
日本の代理店を通して購入できるテントサウナとしては最大級の大きさで、定員は20名。

フットワークが激軽なバックパックサイズ

個人で楽しめる現実的な価格とサイズのテントサウナを探しているなら、このバックパックサウナが有力かも。その名の通り、バックパックが付属し、背負ってどこへでも持ち運べるというところが利点。総重量は12.8kgと軽量で、定員は2名。モビバというロシアのメーカーが作っている。
設営には特別な道具も必要なく、20分ほどで建てられるから、ファミリーキャンプのテント並の手軽さ。それでいて最高室温も80~100℃と申し分ないぞ。

クルマで牽引できるトレーラータイプも登場

普通自動車の免許で牽引できるフィンランド製のトレーラーサウナ。キャンピングトレーラーではなくサウナを牽引するって贅沢だけど、湖畔のオートキャンプ場にこれで陣取れば注目されること間違いなし。敷地があれば家の前でだって楽しめる。
サウナ室は大人4人がゆったり入れる広さがあり、小さなテラスはベンチになっていて、そこで外気浴することも可能だ。

サウナ好きが高じてトレーラータイプを自作

家庭用サウナメーカー、ティーロの代理店を務めるスチームワークスの荒木さんが自作したというのがこのトレーラー式のサウナ。もともとサーフィンなどマリンスポーツが趣味だったという荒木さん。このトレーラーは、ジェットスキーを運んでいたものだというから驚きだ。
中にはティーロのストーブが入っており、しっかり暖まれる。入り口部分は着脱式で、移動時にはサウナ室の中にすっぽり収納できるようになっているなど、アイデアも活かされた造りになっている。

ロシア生まれのパワフルなテントサウナ

サウナはやっぱり熱くなくちゃ、という人に人気なのがMORZH(モルジュ)というテントサウナ。ロシア製で、マイナス20℃以下の環境でも熱いサウナに入れるように設計されている。
秘密は3層式の幕にある。キルティング素材「サーモスティック」を採用していて、断熱材が入っているおかげで温度は最大で約120℃まで上昇。こちらはテントサウナの情報を発信するサイト「Sauna Camp.(サウナキャンプ)」が別注したオールブラック仕様だ。

1970年代のワーゲンバスをサウナに改造!もちろん自走可能

なんと、ワーゲンバス(タイプⅡ)の後部座席をまるっとサウナに改造してしまったサウナカーも存在する。中は天井までヒノキ張り。電気ストーブを設置し、大人5~6名が入れる大きさがある。パワフルなストーブを使っているので、蒸気浴のロウリュもスポーティーに楽しめる。
発案したのは、埼玉県さいたま市にある温泉施設「おふろcafé utatanne」などを運営する株式会社温泉道場の新谷竹郎さん。もちろん日本初、日本に一台だ。普段は同社が運営する埼玉県比企郡ときがわ町のグランピング施設「ときたまひみつきち COMORIVER」にあり、イベントなどで活躍中。

日本初の移動式薪サウナカー

キャンピングカーやキッチンカーとして活用されるハウストレーラー「ルーメット」がベースのサウナ。日本初の移動式薪サウナカーとして2016年に作られたものだ。中は2段になっていて、7名ほどが入ることができる。
気仙沼サウナクラブの本拠地、宮城県気仙沼市にある「唐桑御殿 つなかん」に常設されているので入ってみたい人はぜひチェックを。

さらにその裏には、人力移動できる「カメラサウナ」も控えていた。これは写真家でプロサウナーの池田晶紀さんが考案したもの。「小さい箱」が語源となっているカメラになぞらえ、窓から見える風景を楽しむ1人用のサウナとなっている。
窓が中盤カメラに使われるブローニーフィルムの比率6:7になっていたり、ドアの取っ手に中盤カメラの名機ペンタックス67のグリップを使っていたりと、写真家ならではのこだわりが光る。

番外編:これがサウナの元祖だ。古式スモークサウナ

移動式ではないので番外編とするが、サウナの元祖にしてキング・オブ・サウナといわれるのが、スモークサウナというスタイル。現在の薪サウナのようにダクトがなく、サウナ内部で薪を焚き、その煙を一定時間中に閉じ込めた後、煙を外に出してから入るというもの。
フィンランド人の間でも、これこそが真のサウナであると言う愛好家も多いとか。しかし、手間がかかりすぎるためフィンランドでも珍しい存在だとか。
当然、日本にはほとんど普及していない。写真は長野県の小海町にある「フィンランドヴィレッジ」のもので、入れるチャンスは年に数回だけだ。ちなみにピットサウナとは地中のサウナのこと。

さて、いかがだろうか。こうして見てみると、日本にも想像以上に個性豊かなサウナが揃っていることがわかるだろう。まだまだ数は少ないけれど、だからこそ、いち早く体験してみたくもなるというもの。テントサウナをビーチに張って、海上がりに「ととのう」っていうのも楽しそうだよね。
玉井俊行=写真 石井 良=取材・文