連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。
小さなサイクルバッグ専門店から、アウトドアシーンに欠かせないバックパックの名門として飛躍した「karrimor(カリマー)」。ブランド名の由来=“carry more”にもあるように、モノを運ぶことを信条とし、革新的独自技術を多数有し、現在も高性能な逸品を送り続けている。
とくに象徴といえるのが、長年定番として定着し、今季も新モデルに更新された2モデル。同ブランドの技術とプライドが詰まった傑作について、マーケティングを担当する稲田里樹さんに教えてもらった。
疲れにくいのは、肩ではなく腰で背負うから
——バックパックに定評のあるカリマーですが、なぜ背負い心地が良いのですか?
すべてのモデルが人間工学に基づいた設計だからです。創業当時から重視しているのは、快適に荷物を運べること。そのため、カリマーのバックパックは、腰で背負う、骨で支える発想から生まれています。

肩に頼ると疲労するんです。筋肉に負荷をかけるわけですからね。硬い骨なら疲れません。例えば、腰に巻きつけるヒップベルト。今でこそ多くのブランドが取り入れていますが、カリマーは特に力を入れています。

アウトドアカラーの定番であるパープルをクライミングカルチャーに初めて落とし込んだのもカリマーです。伝説のクライマー”ドゥーガル・ハストン”のシグネチャーバッグに採用された紫は、ハストンパープルとしてアウトドアマンたちの憧れになりました。弊社がパイオニアになったアウトドア界の常識って、意外と多いんです。

リッジは日帰り~1泊登山に。軽量ながらしっかりしたつくりが魅力

——ちなみに、看板モデルのリッジとクーガーはどのような違いが?
基本的には積載量とポジションによる違いです。リッジは日帰り~1泊ほど、クーガーは縦走・テント泊などの荷物をより多く背負うような登山向きですね。あとは付属システムが若干違うので、その違いになります。
——なるほど。リッジをもう一歩詳しく教えて下さい。
“リッジ”は1999年の発売以来、山での疲労軽減や快適性を最優先に考え、マイナーチェンジを重ねているロングセラー。流行の形や素材、ウルトラライト化などに左右されない、普遍的な使いやすさで勝負しています。
真価は背面側にあり、他社の同等のサイジングのモデルより重厚なんです。
これは、山に行ったあとの疲労軽減を考えた結果。必ずしも、軽いこと=疲労が少ない、というわけではないことは覚えて頂けると有難いですね。なお、背面長がS・M・Lから選べるのも特徴。背中とバックパックのサイズを合わせることも、疲労感軽減に寄与します。
SAシステムが一層改良された名品・クーガー

——ブランドを代表する大型モデル、クーガーもアップデートに成功したとか。
クーガーのほうが(リッジよりも)収納力が高く、カリマー独自のSA(サイズアジャスト)システムを採用しています。今回の世代は背面パッドの厚みを増し、安定感とフィット性の強化が図られています。
軽さより耐久性とコンフォート性を重視。タフな420Dコーデュラナイロンをメインファブリックにし、特にヒップベルトのボトム部分は追加補強によって立てて置いても綻びにくくしました。

——ハイスペックなクーガーですが、よりラクに背負うコツを教えてください。
稲田 バックパックによって起きる登山中の痛みのほとんどは肩。ストラップを緩めれば負荷が腰にかかり、肩まわりはラクになります。とはいえ、ブレやすくなるので、背面長をSAシステムで調節して安定させてください。ショルダーストラップ上部についている、赤いタグを肩の真上に設定するのが目安です。

基本的に重心が体に近いほど負担を感じにくくなります。急登時は前傾姿勢ですから、ヒップベルトを上げて背面長も短くしたほうが楽。逆に、ダウンなどを着込んだ際には背面長を長くして、腰に適切なウェイトが集まるように調整してください。
ただ、残念ながらお店で試着しても良さがわかりにくいんですよ。中身が空の状態ですから。ある程度の重さを加えた状態で試していただければと思います。
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——今回、日本人クライマーのアドバイスを多く受けたそうですが、今後もシリアスな意見を重視したモノ作りを?
天候が読めない日本アルプスは、世界でも屈指のハードさだと思います。そんな環境で製作したアイテムはきっと最強。
金井幸男=取材・文 平安名栄一=写真
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