連載「iPhone再入門」
子供の成長記録を収めたり、仕事のメールを確認したりと、もはや生活に欠かせないiPhone。しかし、そんな“相棒”の真価をぼくらは知らないかもしれない。
家庭持ちの男が写真を撮る対象といえば、なにはなくとも子供や家族。一眼レフでキレイな画を撮るのも一興だが、その前に最大限利用したいのが、もっとも手近なiPhoneだ。
「iPhoneカメラの性能は年々上がっています。以前まではよく『コンパクトデジカメがいらない』と言われていましたが、近年は一眼レフに迫るほどのレベルになっている印象です。SNS映えのみならず、肖像写真や遺影に使えるくらいのクオリティはあるのではないでしょうか」。
そう語るのは、Appleフリークであり編集者、しかもお坊さんとしても活躍する吉州正行さん(38歳)。オーシャンズ世代ど真ん中の吉州さんに、即使えるiPhoneの撮影テクを聞いた。
――まさに異色の経歴ですね(笑)。いつごろからAppleフリークに?
かれこれ25年以上になりますかね。小6で初めてMacを買ってから、一度もWindowsに鞍替えすることなく、ひたすらApple愛を貫いてきました。オールドMac(90年代の古いMac)をコレクションしているほか、iPhoneに関しては毎年ショップに並んでいる“徹夜組”です。

――それは心強い!
じつはApple創設者のスティーブ・ジョブズは、大学時代に日本の禅僧である乙川弘文師に師事していたのですよ。その影響もあってか、Apple製品には禅的な思想が宿っているような気がしています。無駄のない美しさや、直感的でなにも考えることなく使用できる設計思想は、人間に寄り添う道具として美学が貫かれていると感じます。

――なるほど。ではさっそく、近年のiPhoneカメラ事情を教えてください!
今年の大きなトピックは、iPhone 11シリーズに初めて搭載された超広角カメラですね。これまでと比べて4倍もの広範囲を捉えられるため、被写体の近くからでも引きの写真を撮れるのはもちろん、独特の立体感も表現できるようになりました。
さらに3眼カメラを持つiPhone 11 Proの場合、通常の広角カメラと超広角カメラに加えて、望遠カメラも内蔵されています。デジタルズームではない光学ズーム写真を撮れるので、運動会のお子さんの写真なども、ありのままのクッキリとした姿で切り取ることができるのです。

人物撮影は「ポートレートモード」で。ボケ味はあとから調整できる!
――具体的にどうすれば、美しい写真を撮れるのでしょうか。
お子さんや家族の記念写真など、人物撮りでぜひ活用いただきたいのが『ポートレートモード』ですね。

【実際にiPhoneで撮影した写真】

――ただ撮っただけなのにフォトジェニック。なぜこんな仕上がりに?
デュアルカメラに内蔵されている画角の違う2つのレンズが、手前の像と奥の像をそれぞれ認識するからです。これにより被写界深度、すなわち奥行きを捉えられるので、背景だけを美しくボカすことができます。さらにiPhoneが素晴らしいのは、写真を自動的に補正してくれる点です。
――えっ、そんな隠れ機能が。
たとえば『スマートHDR』です。1回のショットで明るさの違う複数の写真を撮り、それを合成することによって最適な明るさへと補正してくれる機能。つまり、白飛びや黒く潰れた箇所のない一枚になるのです。今年発売されたiPhone 11シリーズでは、その精度がより進化しました。

――一方で、旅行などで景色をバックに写真を撮るときは、背景のボケ味を弱めたい場合もあると思いますが……。
ご安心ください。

――背景がくっきり!
iPhoneにはもともとの実像データも保存されるので、ボケ味のある写真をガンガン撮って、あとから調整すればOKです。このようにiPhoneならではの気の利いた機能は、ほかにも数多く存在します。以下でご紹介しましょう。
「もっと使える!」機能①
家族の集合写真で活躍する「セルフタイマー」
家族で集合写真を撮るとき、“自撮り”のインカメラを使って撮影する人は多い。だが、シャッターボタンを押そうとして手ブレしてしまうなど、不便もつきものだ。
「そんなときに重宝するのが『セルフタイマー』機能です。カメラ画面の上部にある時計のアイコンをタップすることで、シャッターボタンを押してから3秒後もしくは10秒後に写真を撮影できます。ちなみに、お馴染みの『Hey Siri』でSiriを呼び出して『自撮りしたい』と声をかければ、カメラアプリがインカメラの状態で起動します。クイックに写真を撮りたいときは、Siriで立ち上げることを頭に入れておくと便利です」(吉州さん、以下同)。

さらに精緻な写真を撮りたいときは、Apple Watchと連携する手もある。
「インカメラのレンズは単眼なので、iPhoneのカメラスペックをいかんなく発揮できるとは言い難いのです。

「もっと使える!」機能②
テーブルに置かれた料理やアイテムを映えさせる「グリッド」
SNSでよく見かける、料理やアイテムを真上から撮影した”映え写真”。いつも唸らされていた一枚も、iPhoneの機能を使えばカンタンに撮影できるのだ。
「カメラの設定から『グリッド』機能をオンにしておくと、カメラを下に向けたとき、画面の中央に白と黄色の+マークが表示されます。これらがピタリと重なるように向きを合わせて撮影しましょう。真上からキレイに写った水平写真に仕上がります」。


「もっと使える!」機能③
シャッター音を控えたいなら「ライブフォト」あるいはサードパーティー製アプリを
また、カフェや人混みのなかで撮影するときに気になるのが、iPhoneカメラのシャッター音。だが、防犯上の理由もあり、シャッター音を設定によって消すことはできない。吉州さんはその解決策も教えてくれた。
「動画を2秒間だけ記録する『Live Photos』モードで撮影すれば、シャッター音は『カシャ』ではなく『ピコッ』という音になるので、少しだけ控えめになります。それでも気になる人は、サードパーティー製のカメラアプリをダウンロードしましょう。

「iPhoneのカメラアプリは、面倒な設定をすることなく、美しい写真を撮るために最適化された機能が満載です。これらのテクニックを駆使することで、ただ撮っているだけでも美しい写真が、プロ顔負けの写真に進化するかもしれません。ぜひ活用してみてください」。
ポケットに収まり、常に持ち主へと寄り添ってくれるiPhone。子供との思い出やちょっとした日常の一コマを切り取るのに、これほどのパートナーは存在しない。皆さんもiPhoneカメラを使いこなして、自分なりの撮影術を編み出してみてほしい。
小島マサヒロ=写真 佐藤宇紘=文