看板娘という名の愉悦 Vol.104
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。
多彩なメニューを売りにするのもよいが、専門店はやはり信頼が置ける。何かひとつに特化することで当然クオリティが上がるからだ。
今回訪れたのは目黒。
「茶割」の看板が見えた。その名の通り、お茶割り専門店。1号店は学芸大学にあり、こちらは2号店。昨年末には代官山に3号店がオープンした。

まだ早い時刻なのに店内はほぼ満席。あとで聞いたところでは「今日みたいに予約で埋まっている日も多い」そうだ。

客層が若いうえに女性が多い。さて、どんなお茶割りと出合えるのかとメニューを見て驚いた。

お茶割りといえば抹茶割りやウーロンハイぐらいしか馴染みがないので、これは新しい世界の扉が開いた気分だ。
ちなみに、+0がベース価格の440円。看板娘のオススメは「青い煎茶」と「宝焼酎」の組み合わせで660円となる。
看板娘、登場

こちらは服飾系の専門学校に通う京子さん(20歳)。店では「ゴメスちゃん」と呼ばれているという。しかし、なぜゴメス?
「オープニングスタッフとして入ったときは私が最年少で、何かお役に立とうと思ってみんなのあだ名を考えたんです。私はセレーナ・ゴメスが好きだと言ったら『ゴメス』になりました」。

学校ではスタイリスト科を専攻、今日のセーターは古着で抹茶をイメージしている。


おお、これがオススメの理由か。青い煎茶とレモンの酸が化学反応を起こして変色するそうだ。
ゴメスさんは埼玉県は北浦和の出身。保育園の頃から『名探偵コナン』や『ONE PIECE』などの少年漫画を読み漁っていた。
「このお店の求人に応募したきっかけは、大好きなお酒をたくさん飲めそうだったから。あと、美味しい唐揚げも食べられるかなと思って」。
オーナーの多治見智高さん(30歳)は彼女を採用した理由を「人当たりがいいし、かわいいから」と明かす。

厨房で鳥肉を揚げていた男性スタッフも「うちのスタッフのなかでいちばんファンが多い。人懐っこさが勝因ですかね」と添える。

満を持して唐揚げをいただこう。メニューを見てまた驚いた。こちらも10種類の鳥肉×10種類の味付けという100種類が選べるのだ。

ダチョウに似たオーストラリアの国鳥で、北海道でも飼育されているのは知っていたが、こんなところで賞味できるとは。ゴメスさんいわく、「めっちゃ美味しいですよ。エミューならプレーンがオススメです」。

ここの唐揚げの美味しさの秘密について、多治見さんに聞いてみた。
「口当たりをよくするために余分な皮や筋を丁寧に取り除いてるからでしょうね。あとは、温度が違う油で2度揚げすることで中はジューシー、外はカリッと揚がります」。

さて、ゴメスさんは学校の課題に追われる日々だ。下の写真はショーで1位になったときのスタイリング。

「ドクターマーチンを履いた女の子が、友達に電話して『遊びに行こうよ』と言っているイメージ。このマーチンは友達のもので、人が大切にしているアイテムでスタイリングするというコンセプトでした」。

次回のショーは2月23日。この日もスーツの肩や背中に付ける刺繍セットを持ち歩いていた。

ゴメスさんには画才もある。

「あと、これは勝手にやっていることで、21人のクラスメイトと講師、スタッフ全員のLINEスタンプを作っています。全部できたら公式申請したいんですが、忙しくてなかなか完成しません」。

お茶割りと唐揚げに特化した店だが、ほかのお酒や料理メニューもある。さらに、ランチタイムには100種類のお茶漬けが楽しめるというから、こちらも行ってみたい。

スタッフからも客からも愛され、かつ多才な京子さんに最後まで「ゴメス」という呼び名がしっくりこなかったが、何度も通ううちに慣れるだろう。では、読者へのメッセージをお願いします。

【取材協力】
茶割 目黒
住所:東京都目黒区下目黒1-3-25 サンウッド目黒B1F
電話:03-6417-9811
https://chawari-meguro.owst.jp
石原たきび=取材・文