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25歳でヨガと出会い、30代でヨガインストラクターとしてデビューを果たした更科有哉さん(42歳)。

技術力と集中力を要する難易度の高い「アシュタンガヨガ」の日本における第一人者は、どのようにして人気インストラクターへと成長していったのだろうか。


車で日本全国を縦断したヨガの旅

ヨガインストラクター更科有哉(42歳)。人生ワクワクし続けるために「夢は大きくあれ」

ヨガ発祥の地であるインド南部での修行後、更科さんのヨガへの向き合い方や意識は大きく変わっていた。

「帰国してすぐ、インドでの日々を友人に報告したら、日本でもアシュタンガヨガをもっと広めようという話になりました。どうせなら、東京だけではなく自分たちの足で日本を一周してヨガを教えたいと思い、全国各地でヨガワークショップを開くことにしたんです」。

更科さんの地元である北海道からスタートし、トラックで南下していく日本縦断ヨガの旅。当初は車での移動に想定より時間がかかってスケジューリングがうまくいかなかったり、友人との意見の相違があったりとトラブルも少なくなかった。

「トラックで何時間も運転し続けて、疲れたら車中泊。体はラクではなかったし失敗もありましたが、とにかく楽しかった! 初めて訪れる場所ばかりだったんですが、改めて日本の良さを感じました。僕は札幌出身なので、東京とは異なる地方の原風景を見ると、どこかホッとするんですよね」。

ハードスケジュールの日々を支えたのは、各地で迎えてくれた受講生たちの笑顔だ。地方でも多くの人が集まったことは、ヨガが単なる一過性のブームではなく、多くの人に大切な習慣として受け入れられていることを実感させてくれた。

「各地で僕のクラスを受講したいという方に出会って、モチベーションが高いなかでレッスンができるのは刺激になりました。彼らの笑顔に自分もパワーをもらいましたね」。

トラックで全国を旅したからこそ広がった出会い。

そんな日本縦断ヨガの旅も、今年でもう10回目となる。

「インドやヨーロッパに修行や仕事で訪れるようになってからは、より一層、日本という国の素晴らしさを実感するようになりました。四季折々の景色があって、どこに行っても安全で清潔。そして僕がお邪魔しても誰もがあたたかく出迎えてくれるんです。ヨガの本場はインドですが、僕はやっぱりこの日本という場所でヨガを指導し、魅力を発信し続けたいと思っています」。


海外を知ることで芽生えた日本への愛

ヨガインストラクター更科有哉(42歳)。人生ワクワクし続けるために「夢は大きくあれ」

つい先日も日本人のあたたかさを感じるできごとがあった。

「帰国して空港から都内へ戻るためにバスを待っていたんです。到着時間までは10分ほど。すごく寒い日だったんですが、そばにいたバスの運転手の方が『2、3分前に来ていただければちょうどいいので暖かい空港の中でお待ちくださいませ』とわざわざ声をかけてくれたんですよ。日本ではよくある光景かもしれないけど、インドだったらありえないですからね(笑)」。

海外を知ることで芽生えた日本への愛。それが今もなお更科さんがバックパックひとつを車に積んで日本全国を旅しながら、各地でヨガを指導し続ける理由でもある。車中泊での気ままな旅は、更科さんの人生のように自由で解放的だった。

「俳優時代はなかなか芽が出ない自分に対して焦りがあったけど、アシュタンガヨガを見つけられたことで人生が変わりました。逆にいえば、ヨガしか僕にできることはなかったんです。きっと人間ってそういうものがひとつでもあれば、どこに行っても生きていけるんじゃないかな」。


夢を大きく持つことがモチベーションの源

ヨガインストラクター更科有哉(42歳)。人生ワクワクし続けるために「夢は大きくあれ」

40代に突入してもなおチャレンジングな人生を歩み続けているようにみえる更科さんだが、後悔していることもあるという。

「学生時代はどこか自分を信じられなくて、夢を大きく持てませんでした。サッカーを夢中でやっていた時代、『日本代表になる』という夢を掲げてもよかったはずなのに、自分のなかでそれは現実的じゃないなと最初から諦めてしまっていたんです。北海道代表どころか札幌選抜に選ばれればそれでいいや、と思ってしまった。だからいざ札幌選抜という夢を叶えた後に、さらに上を目指そうという気持ちになれなくなってしまったんですね」。

挑戦する人生の裏には過去の苦い記憶があった。夢が叶ってしまった途端にモチベーションを維持するのは難しくなる。夢や目標は大きくあればあるほど可能性を広げることができるのだ。そう感じたからこそ、ヨガの道はとことん突き詰めようと思えた。

更科さんの今の夢はなんだろうか。

ヨガインストラクター更科有哉(42歳)。人生ワクワクし続けるために「夢は大きくあれ」

「ひとつは、アシュタンガヨガの鍛錬を積んでさらにレベルアップすること。まだまだできないポーズがたくさんありますから。もうひとつは、どこかに腰を据えて自分のヨガのクラスを開催できる空間を持つこと。そしてアシュタンガヨガの文化を日本に発信し続ける第一人者として、多くの人との出会いを広げていきたいですね」。

夢を追い続けることが、「楽しい」を持続する秘訣なのかもしれない。

 

藤野ゆり=文 小島マサヒロ=写真

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