若い頃と比べて、今は仕事&プライベートともに楽しみ方が変わってきたと語る俳優・大東駿介さん。
そこには自らの視野を広げてくれる、何げない人との出会いがあった。
小さなことでも気になったらとことん調べる! 掘り下げ好きです
「仕事もプライベートも、基本的にはいつでも楽しいなって思っているんですよ。最近は特にそうですね」。
何をしているときが楽しいかとたずねてみると、大東はソファに体を預け、リラックスしながら鷹揚に語る。そう思えるようになったのは、20代後半くらいからだそう。
「若い頃は肩肘張って“仕事はこうあるべき”とか“休日は絶対に何かする”って、目標みたいなものを決めて過ごしていたのですが、年齢を重ねていく中でそういった思いがなくなってきました。プラベートでの趣味や遊びから派生した興味や好奇心が、結果的に仕事の肥やしになるっていうことが増えました。
逆に、仕事を通じて初めて触れたのを機に、プライベートでも掘り下げてみたいって思うものができたり……。気になることがあれば、なんでも調べます。図書館に行くことも。そういうフラットな心持ちや良いリズムが自分の中でできてきたので、仕事も遊びも今すごく楽しいです」。

肩肘を張らなくなったのはファッションも同じ。
「奇抜なものが嫌いになったわけじゃないですが、昔ほどは着ないですね。最近は適度に余裕のある、リラックス感のあるスタイルが多いです」。
旅やアウトドア、観葉植物、映画鑑賞など、多趣味なことで知られる大東。最近はひとりでフラッと出かけて初対面の人と出会ったり、気の許せる仲間と過ごし、たわいもない話をして過ごすことが多いという。新たな刺激は、そんな些細な瞬間から生まれる。
「今回の映画は、まさに人との出会いで始まったなあ」と、独り言のようにつぶやき、続ける。
『37Seconds』に出演したことで障がい者に対する意識が変わりました
「映画『37Seconds』のことなんですけど。HIKARI監督とは、仕事の先輩が主催した飲み会で知り合ったんです。そのときはお互いに仕事のことは知らずに。それから1年後くらいに彼女から直接連絡がきて。ちょうど当時、友達と一緒に、仕事とは関係なく個人としての興味から、障がい者と健常者の隔たりについて、またパラリンピックをメディアでどう取り上げるかとか話していたタイミングでのオファーだったので驚きました」。
本作は、脳性マヒで車椅子生活を送る主人公・貴田ユマ(佳山 明)が、これまでの自分の世界から脱するため、夢と直感だけを信じて、自らの手で道を切り開いていく物語。作品に携わったことで、自身も心地良い刺激を受けたという。

「僕は障がい者に対して差別意識はないと思っていましたが、単純にどう接したらいいかを考えると、それが躊躇に変わっていた部分があったんです。でも撮影を通して障がいについて理解することで、当たり前に助け合える頭になったし、障がい者、健常者という思考的境界線がなくなりました。
興味が湧いたら即行動という気持ちがより強く芽生えたことで、最近新たに始めたことがあるという。
「『Note』というメディアでインタビューページを作ったんです。僕自身が気になる人に取材をするというもので、個人の抱くコンプレックスや社会との隔たりみたいなものが、ポジティブな物事に変換できないかということをコンセプトにやっています。とにかく、仕事も趣味も真剣に楽しんでいます(笑)」。
いつかみんなでキャンプファイヤーがしたい(笑)!
趣味といえば、昔からアウトドア活動も大好きなことのひとつ。キャンプや釣りなどさまざまな外遊びを経験しているが、まだ実現できていないことがあるそう。それは何かとたずねると、子供のように無邪気に笑いながら言葉を紡ぐ。
「キャンプファイヤー! 小学生の頃、丸太を組んでやったあれですね。ひとりじゃできないことなので憧れが強いです。そしてできたら、火を囲んでみんなでフォークダンスもしたいですね(笑)。幼い頃楽しかったなって思うことを大人になった今やるのって、すごくいいなって思うんですよ」。

ちなみに好きな時代は’70年だという。今年で34歳、おもに’90年代に幼少期を過ごした彼がなぜ……!? その理由は、’70年に大阪で開催されたあの世界的イベントにあった。
「大阪万博が大好きなんです。万博公園はもちろん、関連するグッズも集めていますし、岡本太郎さんの書籍も読んでいます。僕はあの時代に生きていたわけではないので偉そうなことは言えませんが、未来に対して希望しか抱いてなかったじゃないですか。
その未来への想像をそのまま物や形にしていたような時代だった気がして、そういう部分が素敵だなあって。僕にとってその象徴が「太陽の塔」なんです。
ものすごい好きで、つい先日も塔の中に入ってきました。やっぱりテンションが上がるっていうか、来る前よりも確実に元気になっているのが実感できるんですよね。あれこそまさに“FUN”な時間でした(笑)」。
だいとうしゅんすけ●1986年、大阪府生まれ。2005年にメンズファッション誌「FINEBOYS」の専属モデルとしてデビューし、その後俳優として活動。
http://37secondsfilm.com/index_jp.html
清水将之(mili)=写真 服部昌孝=スタイリング SHUTARO(Vitamins)=ヘアメイク オオサワ系=文
※このインタビューは2020年2月に行いました。