ラン活戦線、異常あり●就活に婚活に妊活。望む“出会い”を得るために、自ら活動することが当たり前の今の時代。
もう遅い? ランドセル選びを始めるタイミング
ラン活とは「ランドセル活動」の略。欲しいランドセルを手に入れるための活動のことだ。
そもそもオトーチャンたちが小学生の頃のランドセルといえば男子は黒、女子は赤、以上。それが当たり前だった。
活動なんてしなくても自然と定番のアレが用意されていたのが現実。しかし、時代は変わった。
子供が学ぶカリキュラムも多様化し、ランドセルに使われる素材など技術の進化も目覚ましい。さらに言えば、とにもかくにも“自分らしく”のご時世。そして、イケてるランドセルは争奪戦が繰り広げられ、早々にソールドアウトしてしまうのだ。
そんなラン活事情を探るべく、髙島屋のランドセル担当バイヤーである野中直人さんを直撃した。

「ラン活が一気に広まり出したのは4~5年前からです。最近では活動開始時期もどんどん前倒しになっていて、2021年4月入学の方でも、早い人ではこの年始から情報を集めているケースも多いようです。
え!? となると、来春に入学ならもうスタートしないと! 活動のポイントを、野中さん、教えてください!
家族内の役割分担が、勝敗のカギを握る
「ランドセルの購入タイミングは年々早くなってきており、昨年ベースだと5月のゴールデンウィークぐらいには購入を決めるケースも多く見られました」と語る野中さん。いやいや、ちょっと待って。まず、どうやって買うべきランドセルを決めればいいんですか?
「カタログを取り寄せることから始めましょう。髙島屋でも当然用意していますが、ほかの百貨店さんやブランドさんが作ったものなど、多くのカタログが存在します。そして3~4月くらいになると、展示会や店頭予約開始のシーズンがやってきます。そこで実物を見て、家族で話し合って決めていただくイメージですね」。

なるほど。そう言われれば、厳しい戦線にもどうにかついていけそうな気がしてくる。まずは初動で遅れない。そして、展示会や店頭予約でお目当てのランドセルをゲットするのだ。
「お店にはご家族みんなでいらっしゃる方も多く、それぞれで役割分担されているようです。お子さまが男子と女子の場合で異なりますが、比較的よく見るケースはお母さまが決定権を持っていて、お父さまはどちらかというと見守る係。
では、実際にどんなモデルが人気なのだろう。
「お子さまが気に入る基準は、実はほとんどカラーリングです。男子は今でも黒が多く、おおよそ85%を占めていますね。女子にはピンクと赤が人気で、昨年はラベンダーが流行りました」。

親が知っておくべきランドセル選びのポイント
ほかに、親目線で注意すべき選びのポイントは?
「大きく4つあります。まず重要なのは軽さ。実は最近のランドセルは昔より大きくなっています。昔はB5の書類が入るサイズでしたが、今ではA4フラットファイルが入る大きさが標準です。そのため、どのブランドも余計に軽さを重視しています。そのため昔主流だった天然皮革(牛革や馬革)よりも軽い人工皮革がシェアの約85%を占めています。また人工皮革はカラーリングの幅が広いという利点もあるんです」。
なるべく軽いランドセルを優先する。小さい子供が使うのだから、なるべく体に負担がかからないものがベター。ごもっともである。

「2つ目のポイントも背負いやすさを左右する肩ベルトです。肩のラインに沿って立体的に立ち上がったベルトのほうが、背負った際に重さを感じにくい。ただ、これはほぼどのブランドさんで今や“前提”に近い作りですが、昔のようにランドセルを下に置くと肩ベルトがペシャンコになるようなベルトは、子供への負担が大きいかもしれません」。
立体的なディテールが大事…… なんだかファッションみたいな話になってきた。
「3つ目は、夜道でも安全な反射素材があしらわれていること。そして、4つ目がランドセル上部に持ち手が付いていることです。
学童や習い事など、遅くまで外に出ている子供が増えている現状で、リフレクター(反射素材)は重要性を増しています。持ち手に関しては、昔のものにはフックに掛ける用の金具がついていましたが、それだと持つ際に手が痛くなってしまう。些細な変更点ですが、使ううちにありがたみに気付くディテールです」。
視認性を上げる反射素材、利便性を高める持ち手。やはり親が第一に考えるべきは、子供にとっての安全・安心なのだ。そう肝に命じて、ラン活をスタートすべし!
次回は、そもそもランドセルって何をしてランドセルなのよ? という素朴な疑問から、その歴史や各種パーツについて掘り下げていく。
[取材協力]
髙島屋
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増山直樹=文