「時短ケアのススメ」とは……
湿布や塗り薬を使っても、鍼灸院やマッサージに通っても一向に改善されない頑固な肩こりや腰痛。そこへ追い打ちをかけるように、コロナ禍の影響でこれまで以上に長時間のデスクワークを強いられる状況に……。
こんな調子では、症状はますます悪化するばかりだ。そんな人におすすめしたいのが骨盤位置の矯正。
今回は、セルフで骨盤位置を正常に戻す時短エクササイズを紹介する。
高地トレーニングを街中で体験できるスタジオ「ハイアルチ」の開発者であり、プロデューサー。長年のトップアスリートたちへの指導経験を活かし、高地トレーニングの効果を最大限に引き上げるメニューを構築。現在は、浦和レッズの槙野智章選手をはじめとしたトップアスリートのほか、大学駅伝の選手たちのトレーナーも務めている。
体の痛みが発生したら“骨盤のゆがみ”を疑え
肩こりや腰痛だけではなく、体の痛みやこりを引き起こす元凶は骨盤位置の異常、いわゆる「骨盤のゆがみ」にある。骨盤は上半身と下半身をつなぐ“扇の要”。正しい位置にないと全身に悪影響を及ぼすのだ。
「扇子って要の部分がゆるんでいるとスムーズに開けないですよね。体も同じで、骨盤がゆがんでいると上半身と下半身がスムーズに連動して動かなくなる。そうなると、肩、腰、膝などの各パーツが無理な動きをして全体のぎこちなさを補完しようとします。これが大きな負担となり、その状態が長びくことで痛みやこりが発生するのです」。
骨盤のゆがみと聞くと、「骨が変形している」と勘違いしている人が多い。しかし、実は骨盤そのものが変形することはなく、アンバランスに硬くなった周辺の筋肉に骨盤が引っ張られた状態のことをいう。
「骨盤位置を矯正するには、骨盤に付着している腸腰筋という筋肉を動かして柔軟性を取り戻すことが効果的です。腸腰筋は体の深層にあるインナーマッスルに分類されるもので、日常動作の範囲ではあまり動かさない筋肉。そこで、エクササイズなどで刺激を入れてあげるといいんです」。
腸腰筋とは、「腸骨筋」「大腰筋」「小腰筋」という3つの筋肉から構成されている筋肉の総称で、骨盤を中心に、始点は腰椎に、終点は股関節に付着している。正しい姿勢の維持や体幹を安定させる働きを持っている。脚を持ち上げるときに使われる筋肉もこれだ。
「加えて、骨盤底筋(骨盤下部に位置する筋肉)の弱体化も骨盤ゆがみの原因のひとつです。この筋肉は下から支える器のような筋肉なので、ここが弱くなると骨盤の安定性が失われてしまいます。ちなみに、下腹のたるみの原因にもなります」。
骨盤に付着する筋肉をほぐして機能不全を修正
そこで、腸腰筋の柔軟性と骨盤底筋の機能を高める時短エクササイズだ。
「どちらも非常にシンプルです。ただし、正しい姿勢を保った状態で行わないと十分な効果を得られないので注意してください。とくに骨盤ウォークは、上半身をできるだけ動かさないように前進することがポイント。上半身が動いてしまうと、効果は半減してしまいます」。
【骨盤ウォーク】


「いくら体幹トレーニングをしても、腸腰筋が硬いままだと体幹は安定せず、トレーニング効果は半減してしまいます。骨盤ウォークを体幹トレーニングと組み合わせれば、その効果を高めることが期待できます」。
【骨盤腹筋ストレッチ】


「骨盤底筋を中心に、骨盤まわりに位置する筋肉を効率的に伸ばして刺激を与えられるストレッチです。起き上がるときに曲げた膝の角度を維持し、組んだ手が離れてしまわないように注意しましょう」。
このストレッチは、腹筋など体幹まわりの筋肉を鍛えることも可能。ストレッチと筋トレ、両方の効果が期待できるエクササイズだ。
「時短ケアのススメ」
トップアスリートだってしきりに言っている。「長く現役生活を続けるためには練習と同じくらい体のケアが必要だ」って。
連載「時短ケアのススメ」一覧へ
【取材協力】ハイアルチ 吉祥寺スタジオ
住所:東京都武蔵野市吉祥寺東町1-17-18
電話番号:0422-22-7885
営業:10:00~22:00(平日)、10:00~19:00(土・日・祝)
http://high-alti.jp/
空間をまるごと低酸素状態にしたスタジオで行う「ハイアルチテュード(高地)トレーニング」を、気軽かつ、リーズナブルに体験できる日本初のハイアルチテュード専門スタジオ。専門トレーナー指導のもとでのトレーニングなので、安全に効率よく鍛えられる。都内では、吉祥寺のほかに、三軒茶屋、代々木上原にスタジオを構える。
楠田圭子=取材・文 渡邊明音=写真