海パン、ビーサン、Tシャツの3種の神器は好きだけど、それが通用しない海もある。
ファッションディレクター赤峰幸生さんにビーチリゾートでのドレスアップにまつわるルーツや基本を教えてもらった。
赤峰幸生(あかみねゆきお)さん
1960年代より大手百貨店やセレクトショップ、海外のテキスタイルメーカーなどでコンサルタントを務める。現在は企画会社、インコントロの代表として、自らのブランド「アカミネ・ロイヤルライン」でカスタムクロージングを展開。クラシッククロージングへの造詣が深く、常にエレガントな装いで、メンズファッション業界では知らない人はいない重鎮だ。 www.incontro.jp
「映画が好きで、たくさんの作品を観た」と語る赤峰さん。最も影響を受けたのはフェデリコ・フェリーニの『8 1/2』。「イタリアのビーチリゾートで、マストロヤンニが着る白のコットンスーツ姿がとにかくカッコ良かった」。
また、ルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』では、アラン・ドロンがイタリアを旅し、ホテルで過ごしたスタイルに触発され、「当時は学生でお金もなかったので、東京の神田須田町でコットンギャバの生地を買い、埼玉・熊谷で3ピースで安く仕立てた」と、自身のファッションにまつわるルーツを語ってくれた。

リゾートでの着こなしでよく参考にしたのは、1950年代のフランス雑誌「アダム」など。「掲載されていたスタイルに加え、着こなしのアリ・ナシを学び、実践しながら基礎を確立し、そこからはあまり変わっていません。そのときどきの流行を気にすることもない」と、メンズファッションのレジェンドたる片鱗を見せる。

「“箸さばき”という言葉があるように、服もさばけてこそ。着せられているようじゃ駄目なので、軸をしっかり定めるのがドレスアップでも必須です」。
赤峰流ドレスアップの基本その①
どんなときでも襟のある服を

「リゾートでも、正装ならジャケットの着用は基本。ノーカラーはナシなので、脱ぐ際に備えてシャツかポロを」
リゾートシーンであっても、紳士たるもの必ず襟のあるものを着用する。その最右翼はポロシャツで、半袖も良いが長袖の袖をたくし上げて着るのがいちばんカッコいい。重ねるジャケットとの色合わせを意識しながら、幅広いカラーを準備しておきたい。それとリネンのシャツ。ホワイトかサックスブルーをタイドアップすれば何の問題もないし、1枚で着ても様になる。
赤峰流ドレスアップの基本その②
素材はリネンかコットン、色は自然から取り入れる
海や空を想起させる青色

リゾートに広がる海や空の青、波打つ水しぶきの白をイメージしたジャケパンのコーディネイト。ネイビーを軸に、青のトーン、白を挿して、爽やかで涼しげな印象に。長袖ポロのタイドアップ、段返り2つボタンのジャケットなど、目を見張るテクニックが満載。
土や屋根の色に馴染む茶

夏のリゾートに射す光には、ブラウンもよく映える。6つボタン、ピークドラペルなら風格が漂い、格調高い雰囲気になるので、かしこまった席でも問題ない。イタリア人が好む「アズーロ エ マローネ(青と茶)」という組み合わせもあるが、あえて赤を挿すのが赤峰流。
「最も気をつけるべきは色彩です。
基本は裏地なしのジャケット。カーディガンのように羽織れるけれど、構造がしっかりしたものを選ぶ。素材はコットンかリネン。最もリゾートに向くのは白のコットンだが、ベージュかブラウン、さらには明るめのネイビー、ロイヤルブルーもよく似合う。色合わせは、白はカウントせず2色以内に。軸色を決めて、そこにもう1色のみ加えて。自然界にある色に馴染ませることを考えると、おのずと纏う色も決まってくる。
赤峰流ドレスアップの基本その③
足元はホワイトバックス、もしくはキャンバスで

リゾートシーンで足元をドレスアップするなら、ホワイトバックス。白いアッパーには清涼感があり、上流階級が船遊びの際に履いたことも影響してか、海辺の正装には欠かせない。合わせる靴下には必ずホーズを。白かベージュの平織りのホーズが好相性だ。ショーツにはき替えた際はサンダルではなく、キャンバスのデッキシューズか、エスパドリーユで上品に。
倭田宏樹、吉野洋三=写真 谷中龍太郎=文