「Camp Gear Note」とは……
焚き火の知識と起こし方を紹介した前回に続き、今回は炭火の起こし方と扱い方についてお伝えしよう。
薪を燃やすよりも、炭を燃やす方が難易度は上。
まずは代表的な3種類の炭の特徴を把握しよう

まずは炭の代表的な種類と、それぞれの特徴を頭に入れることから始めたい。
ホームセンターなどで手軽にゲットできる炭は、大きく3種類ある。石炭や木炭の粉などを豆状に成形して作られる豆炭。続いて、マングローブを原料としたマングローブ炭。そして、ナラ材などが原料の切炭だ。
細かく言えば備長炭などもあるが、キャンプには現実的ではないのでここでは割愛する。

豆炭の特徴は、価格の安さと扱いやすさにつきる。
製品によって多少の違いはあるが、着火しやすくなる成分が練り込まれており、着火剤なしでも火がつけられる手軽さが人気だ。
しかし、火がつきやすい反面、燃焼時に煙が多く出るうえ、独特の臭いがするのが難点。BBQに使うならば、鍋や鉄板料理に利用するのが賢い使い方だろう。
炭火を売りにする焼肉店や焼き鳥店で豆炭を使っている店があれば、ちょっと疑ったほうがいい。

続きまして、マングローブ炭。
特徴は豆炭ほどではないが火つきがいいこと。手に入りやすく、値段も手頃だ。
一方、欠点は炎が上がりやすくて煙たいこと。燃焼時間が短いこと。爆ぜることの3点。また製品によるクオリティのバラつきも大きく、箱を開けてみたら細かく崩れた炭ばかり、なんてこともある。
まあ、BBQは何時間も食べ続けるわけではないので、食べ終わる頃にはきれいに燃え尽きてくれる手軽でコスパの良い炭、と考えよう。

3つの中で、もっともおすすめしたいのが国産の切炭だ。
箱を開けた瞬間に誰でもわかるほど違いは歴然。大きさが整っており、触った感触が硬いのが特徴で、つまり均一に長く燃え続けてくれるってわけ。
火は少々つきづらく、値段は前出の2種と比べると数倍するものもある。
燃焼時間も長いため使用量も少なく済み、結果として経済的だったりもする。
炭火の火つけは以下の2つを覚えておけばバッチリ

炭の種類が頭に入ったところで、炭火の起こし方へと話を進めよう。
主な着火方法は2つ。まずは、チャコールスターターと呼ばれる道具を使う方法から紹介する。
この道具は名前の通り、炭に火をつけるために生み出されたもの。底網の付いた筒の中に炭を入れ、下にセットした着火剤に載せるように使う。
炎が筒の中を上へと燃え上がる性質を利用し、簡単に炭に火がつけられるアイデア商品だ。

製品によって形はさまざまだが、概ね使い方は変わらないので、好みのデザインで選んでもOK。
ビギナー向けというものでもなく、ベテランキャンパーも賢く活用しているギアなので、炭の火起こしに自信がないならば積極的に取り入れたい。
チャコールスターターに頼らない方法もマスター

道具には頼らないぜ、という硬派な方は、着火剤とライターだけでできる方法をマスターしよう。
まず、セットした着火剤を囲むように炭を縦に置く。その炭の上にさらにもう一段、炭を縦に積み上げる。これでセッティングは完了。

すると、縦に積んだ炭が煙突のような役割を果たし、その中を炎が燃え上がることで炭全体に火がつく。チャコールスターターの役割を、縦長に組んだ炭自体が果たすイメージだ。
焚き火のポイントと同様、燃焼に必要な空気が通るために、隙間を詰め過ぎないよう組もう。
調理に適した炭火の状態「熾火」を見極めろ

火をつけてしばらくは、炭からも炎が上がる。この状態は煙や臭いが立ちやすく、火力も不安定で焦げ付きやすいため、料理には不向き。
料理に使うなら、炭が「熾火(おきび)」になってからがベター。炎が落ち着き、炭が真っ赤になった状態を料理開始の目安にしよう。

BBQでは、食材を真っ黒に焦がしてしまったり、生焼けになってしまう失敗が起こりがちだ。この理由は、まだ火が不安定に燃え盛る状態で食材を投入してしまっているから。焦らず、熾火になるのを待ってから焼けば、失敗の大半は回避できる。
上の写真のように、左右半分ずつ炭を置く量を変えて、強火エリアと弱火エリアを作っておくと、さらにキャンプ上級者っぽい。

ここまで読んでお気付きの通り、火の特性を頭に入れて準備を整えれば、焚き火も炭火も必要な作業はほとんどない。ライターで火をつける。それだけだ。
焚き火の前で、あれこれ忙しくしているのは上手くいっていない証拠。そんなときこそ基本を思い出し、落ち着いてイチから段取りし直してみるといい。
正しい手順さえ踏めば、誰だって火は簡単に起こせるのである。
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「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る
池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真 たき火ヴィレッジ<いの>=撮影協力