Aクラスをベースとしながらも、Cクラスに負けず劣らずの性能を誇る「シューティングブレーク」。先代よりも少しボディは大きくなったものの、都心で扱いやすいサイズ感は魅力だ。
積載能力の高さとエレガンスを両立させたこの車を、識者らはどう分析するのか。
MERCEDES-BENZ CLA SHOOTING BRAKE
メルセデス・ベンツ CLAシューティングブレーク
自動加減速やステアリングアシストなどの安全性はもちろん、車に話しかけるだけでエアコン調整や目的地設定などができるMBUXといった最新装備を投入。荷室容量はリアシートを倒さずともキャディバッグ2つは余裕だ。全長4690×全幅1830×全高1435mm 457万円~。
「オーシャンズな男」にとって満足度は高い
おかげさまで「メルセデスを日本一売った伝説の営業マン」とご紹介されることも多いのですが、私から何か特定のメルセデスを売り込んだことは一度もないんです。
まずはお客様のライフスタイルと嗜好を知り、「それならば、このメルセデスはどうでしょう?」と、その人の人生に合う車をご提案してるだけなんです。極端な話、他メーカーの車をおすすめしたこともあります(笑)。
そういった観点からCLAシューティングブレークのお話をするとしたら、まずは「アクティブなライフスタイルをお持ちの方にマッチする車」だと言えるでしょう。アウトドア・スポーツなどを楽しまれている場合には、最適な一台となるはずです。
しかし同時に、もともとは貴族が狩りの道具を載せるための車であったシューティングブレークに属するモデルですから、この車は実用一辺倒ではない。いわゆるワゴンとは一線を画す都会的で上質な佇まいを、アクティブなライフスタイルと同等に希求される方に似合うでしょうね。
グレードとしては、ディーゼルの200dか、AMGのCLA 35 4マチックがおすすめです。同じメルセデスのCクラスステーションワゴンと比較すると、より新しい設計の装備類や多少荷室を犠牲にしてでも、品のいい佇まいがお好みであるならば、CLAシューティングブレークのほうがよりご満足いただけると思います。

吉田 満
10年連続でメルセデス年間販売台数No.1を誇った伝説の営業マン。仕事にハマってから15年間は大好きなサーフィンを封印していたが、現在は伊豆と都内のデュアルライフを送る。
新型の車に乗るならコレ!
16歳から波乗りを始めて、今現在も熱心に続けています。僕の毎日は「仕事をしているかサーフィンをしているか」みたいな感じで、まぁシンプル極まりないですよ。
今乗っている車は古いメルセデスで、W124って呼ばれている1991年式のステーションワゴンです。サーファーの間では、その前モデルW123ってやつが大人気なんですが、W123だと「いかにも」って感じなので僕は選びませんでした。何事もそうですがギャップがあったほうが物事は面白いし、格好いいと思うんですよね。
そんな僕から見て、新しいCLAシューティングブレークはお世辞抜きでイイ! 欲しい! お尻のデザインは特に秀逸。個人的にボディカラーはガンメタっぽいマウンテングレーがいちばん好みかな?
今乗ってるW124の荷室にはクーラーボックスとかを積みっぱなしで、子供も連れて波乗りやキャンプに行ったりしているのですが、CLAシューティングブレークもそんな感じで「自分も家族も満足できる車」になりそうですね。
ラグジュアリーなCLAシューティングブレークですが、それにそのままラグジュアリーな服を合わせても面白くない。僕だったら、ギャップを狙ってヒッコリーのオーバーオールを着て海に行くかな? CLAシューティングブレークから、まさかの「オーバーオールでビーサン履きの40代男」が降りてきたら面白いし、何かカワイイじゃないですか(笑)。

金替雄太
アパレルブランド、チャーチャーディレクター。サーフィン歴は20年超。

車に詳しくなくてもワクワクする
酒を飲むことが好きで、休みの日に遠出をするのもそんなに好きではなかったこともあり、人と比べても車の持つ魅力に気付くのが遅かったと思う。もちろん、子供の頃から好きだったHIP HOPカルチャーの影響もあって、車という存在は気になっていた。
そして30代に入ったある日、お世話になっている方からメルセデスのBクラスをお手頃価格で譲っていただけることになり、思いがけないタイミングでメルセデスオーナーになった。現金なもので、その日から車は自分の生活に欠かせないものになった。
いろいろな車を運転したことがあるわけでもなかったので、ほかと比べてどうってのは正直わからなかったが、B180の乗り心地はとても良かった。適度に重さのあるハンドルと申し分のない加速。意外と荷物も収納できたので、仕事でも大活躍だった。
現在はもう乗り換えてしまったが、メルセデスの新作は今でも常にチェックしているし、このCLAシューティングブレークももちろん気になっていた。程良くスポーティーでありながら、メルセデスらしい重厚感もある。乗り心地の良さは言わずもがなだろうし、荷物の収納力の高さにも期待ができる。
今は横浜に住んでおり、都内との往復で普段から高速道路に乗ることが多いけど、そこでの快適な乗り心地も想像に難くない。そして何よりもこの見た目の格好良さたるや! いつになく、胸の高鳴りを感じる車だ。

山下丸郎
フリーランスのエディターとしてだけでなく、さまざまなブランドでのエージェント業務をこなし多彩な顔を持つ。特に音楽とアートカルチャーに造詣が深い。現在の愛車はレンジローバー イヴォーク。
Cクラスワゴンに迫る出来の良さ
実質中身は狭めのステーションワゴン、それでいて見た目クーペというか、貴族的オーラすら感じさせるいいとこ取り、それがCLAシューティングブレークだ。
ワゴンに見られる実用主義的な土くささはいっさいなく、逆に下手な凡百のクーペよりカッコ良く、スマートに見えるのが最大のミソ。
初代は実質ワゴンと言いつつ、リアシート、特に頭回りにさほど開放感はなかったが、初代よりボディが少し大きくなった分、リアシートは身長176cmの小沢が普通に座れるようになり、ラゲッジスペースも拡大。とはいえ王道のワゴンには負ける。
何より現行Aクラスから採用した新型プラットフォームの出来の良さがここにも反映されており、メルセデスらしい乗り心地の良さと、しっとり磐石のステアリングフィールが味わえる。これならEクラスのワゴンを食える!?とは言わないが、Cクラスワゴンじゃちょっとマジメに見えすぎるという人にはピッタリではないだろうか。
オマケにこの世代から“喋るメルセデス”ことMBUX搭載。すべての操作を音声ですることはできないまでも、簡単な室温調整、ナビ操作、天気確認ぐらいは可能。ただし、根気よく使わないと電化製品に弱い人は飽きちゃうかも? とはいえ今どきのワイドスクリーンなコックピットは魅力的。
Aクラスじゃ小さすぎて、Bクラスじゃ若々しさが足りない!という人に。

小沢コージ
自働車ジャーナリスト兼ラジオパーソナリティ。TBSラジオ「小沢コージのカーグルメ」MCを務め、一般誌や自動車誌などにも連載多数。独特のワードセンスと忖度のない批評に定評あり。

乗ってる人はきっと育ちがいい人
ざっくり言うと、セダンがスーツ、SUVがカジュアルで、ステーションワゴンはその中間のジャケパン的な立ち位置だ。ジャケパンのいいところは、ネクタイやポケットチーフなどちょこっと工夫をすればフォーマルな場面にも耐え得るし、反対にスポーティな方向に寄せることもできる幅の広さ。
ま、ジャケパンにもいろいろある。きれいに弧を描くルーフラインからキュッと引き締まったお尻にかけての造形など、クーペっぽさを感じさせるこの車の場合は、ややエレガンス寄りのジャケパンだ。
ボディサイズは日本の道路事情、駐車事情でも扱いやすいグッドサイズ。最近のメルセデス・ベンツのデザイン流儀に則って、ギラギラ感やオラオラ感を抑えた“良家出身”な佇まい。全体に、身の丈に合った趣味の良いジャケパンで、老舗セレクトショップでコーディネイトした印象だ。
乗ってみれば運転しやすくて乗り心地も快適な“ザ・メルセデス”。「ハイ、メルセデス」と呼びかけるとエアコンの調整からオーディオの曲探しまでやってくれる音声認識のインターフェイスや、立体駐車場にも余裕で入れられる車高など、ガンガン使い倒せる。
面白いのはエンジン選びで、ディーゼルを選ぶとタフなSUV風味、ガソリンだと洗練されたセダンの味わいに。

サトータケシ
出版社勤務を経て独立、フリーランスのライター/エディターとして多方面で活動する。愛車シトロエン C6のパワステからオイルが漏れ、特別定額給付金がすぐに消えたという噂が……。
エレガンスと多用途性を両立
2011年に登場した2代目Bクラスを皮切りに、メルセデスのFF系アーキテクチャーは拡張性の高い構造に刷新。それを受けてAクラスのみならず、SUVのGLAや4ドアクーペのCLAといった新しいモデルが続々と生まれることとなった。
CLAシューティングブレークもそのひとつだ。そもそも狩猟用のワゴンを指すシューティングブレークは、積載能力などの機能性というよりも美しさで豊かなライフスタイルを彩ることに重きが置かれてきた。
CLAシューティングブレークはFR系アーキテクチャーのCクラスステーションワゴンと車格がほぼ同等なこともあり、新型でも競合が予想されるが、取り回しやすさや居住性、後方視認性などを譲る代わりにいかにもスペシャリティ的な佇まいを武器に棲み分けを仕掛けている。
デザインも前型よりクリーンなテイストでまとめられており、多くのユーザーを惹きつけるだろう。
省燃費のクリーンディーゼルから421PSをマークするAMG銘柄まで、エンジンバリエーションは多彩だが、いずれにも共通するのは走りのテイストがスタイリングに見合った上質感をきちんと織り込んでいることだ。
例えば同じエンジンを積むAクラスに比べると、音、振動の遮断は確実に一枚上手。一方で運動性能の損失は最小限にとどめている。

渡辺敏史
出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。
