出産準備から小学校入学までの間、オレ中心ながらもきめ細やかな気配りで妻や子供を満足させるスマートなオトーチャンズ。そんなオトーチャンズの心得を紹介するこの連載の第6回は、保育園問題にオトーチャンズがどう向き合うべきか。
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「保育園落ちた日本死ね。」
匿名のブログから発せられ、都市部の保育園・待機児童問題を全国区に押し上げたこの言葉から早2年。保育園事情は改善の方向に向かってはいるが、いまだ希望の保育園には入れない家庭は多い。
都市型の家庭ともなれば共働きは当たり前。自分たちのタイミングで入れたい保育園に入園できないとなれば、なんらかの負担を伴う。
復帰後の勤務形態の変更を余儀なくされたり、保育園の送り迎えや子供の急な病気の対応で職場を離れたり、保護者間のつきあいの場に出たりといった物理的、精神的な負担。これらを妻に背負わせがちで、自分は「子供のための自己犠牲」ができずに罪悪感を抱えているオトーチャンズも多いかもしれない。
もで、ちょっとまて! 保育園問題とは、本当に自己犠牲の話なのだろうか?
保育園問題は、家族の将来設計のスタート地点

そもそも保育園への入園は、目先の1年の話ではない。その後の小学校入学を見据えた家族の将来設計のスタート地点である。
入園の話は、性急な課題であるが故に、今後ありうる家族の将来の話と切り離してしまいがちだ。しかし、その場しのぎの「保活」で夫婦どちらかが一時的に犠牲を払ったとしても、数年後、幼稚園や小学校に入ることになれば子供の終業時間が早くなるため、また同じ問題が発生するのである。
結局「子供にどう成長してほしいか」という環境作りと「夫や妻の仕事観やキャリアアップの長期的な計画」とをこの機会にしっかり考え、議論すべきなのである。
今の仕事を何年頑張ると収入が増える、出世して自分で時間をコントロールできるようになる、であるとか、何年以内に貯金を貯めるであるとか、そうした自分のキャリアパスがあり、目の前の保活において「だれが、どのように妥協をするのか」それを真剣に考えてみよう。
単に「今は忙しいから無理」とあきらめるのは簡単だが、長い目で見ればこの機会に自分自身の働き方と収入のバランスを考えてみることは、将来の自分にとっても有意義だ。
育児休暇は自己犠牲ではない。
ちなみに、オーシャンズでも事例を取り上げている男の育児休暇・育児休業(記事「『育休、どうでした?』取得率5%! その体験談を聞いてみた」)。育休と聞いた時点で直感的に「オレには無理」と拒否してしまいがちだが、そんなキミに改めて聞こう。
「目の前の仕事は、自分にとって本当に大事か?」。
自分のキャリアを長い目で見たときに、休暇中に座学などで知識を深めたり、家庭に入ることで新しい視点を得たりといった経験はその後の仕事においても大きな力となるはずだ。
さらには、自分の本当にやりたいことを見つめ直し、自分の内面を磨く良い機会ともいえる。実際、育児休暇を取る理由は「子供のため」ではなく、「自分のため」というオトーチャンズも多い。
仮にそうした選択が難しかったとしても、「もし自分が育児休暇を取ったら?」というシミュレーションをしてみると良い。そうした議論を妻とすることで家族にとって大切なことが見えてくるかもしれない。
この機会に引越しを本気で考える。

結婚後、将来マイホーム購入を検討していたり、キャリアアップの過程で引越しを考えているオトーチャンズもいるだろう。その最適なタイミングのひとつが保活のタイミングだ。
職場への通勤時間、子供が成長する段階で変わる必要な間取り、転職や転勤などの有無、それらを総合的に判断して「入園から4年間住む家」を決めたり、「この機会にマイホームを買って生活基盤を作る」といった判断は、しっかりとした家族計画がなされれば、保活の時期こそベストなのである。
一度、入園しやすい市町村の不動産情報を見てみると良い。都心であれば中古物件は豊富にあるし、賃貸相場もエリアによってお手頃なところがある。電車の乗り換えのしやすさなどで、会社への距離が遠くなっても逆に通勤時間が短くなることだってある。物件をみながらいろいろシミュレーションしてみよう。
なお、地域ごとの保育園情報を仕入れるには自治体に直接相談するか、リアルな口コミが一番だが、時間がないオトーチャンズにはハードルが高い。そこでメディアを存分に活用すべきだ。
例えば、日本初の保活支援サイト「EQG」や、ベビーシッターサービスを展開する「KIDS LINE」などがそれに当たる。そもそも保活とは? そんな根本的な疑問にも答えてくれるので、訪れてみることが考える第一歩になるだろう。
そもそも保育園に入れるのは何のためか、改めて問うてみると良い。
共働き家族の家計維持のためという人もいれば、乳幼児のうちから他人との交わりや教育的な体験をさせたいという想いの人もいるだろう。
優先順位が低いということは、「オレ自身の人生」を見直し、柔軟に変更することができるはずだ。
とはいえ、実際のところは急に仕事のスタイルを変えたり、育児休暇をとるのは難しいかもしれないし、まずは当面の収入の確保が最優先で自分の人生を振り返る余裕もないかもしれない。それでも、考えることを辞めないでほしい。オトーチャンズにとっては保活こそこれからの家族と自分の将来設計を本気で考える最良のタイミングなのだから。
島崎昭光=文 asacom.=イラスト