海洋プラスチックゴミを始め、世界中で環境汚染の問題が深刻化している。
海を愛し、ランニングを愛するオーシャンズな男たちは、ぜひ日本で行われる“世界初の取り組み”に注目してほしい。
国内の人気マラソン大会のひとつ「湘南国際マラソン」が、ゴミの大幅削減を実現するため、“400mlのマイボトル持参”をルールとした新しい形の大会を2021年2月28日(日)に開催することを決定した。
一大会で約5.7万本のペットボトルゴミが発生
マラソン大会でゴミがどれぐらい出るかをご存知だろうか?
昨年の湘南国際マラソンでは、ランナーに給水を行うために、ペットボトルが約3万1500本、紙コップやプラカップが約50万個、フィニッシュ後に配布されたペットボトルで約2万6000本のゴミが出た。
ひとつのマラソン大会で、ランナーの喉を潤すためだけにこんなに大量のゴミが出るのだ。しかもこれは湘南国際マラソンに限った話ではない。全世界のマラソン大会で起きていることだ。

もしあなたがマラソン大会に出たことがあれば知っているだろう。ゴミ箱は用意されているものの、ポイ捨てをするランナーも意外と多いことに。
そのゴミはアスファルトに散乱し、ともすると風に吹かれて転がっていく。それらを掃除するのはボランティアの人たちだ。申し訳ない気持ちになるし、すべてが回収されているとも限らない。
資源の無駄づかい、海洋プラスチックゴミの問題、そして焼却時のCO2発生と気候変動への影響……次世代のためにも、湘南国際マラソンはこの大量のゴミを極力なくそうと考えた。そこで導入されたのが“400mlのマイボトル持参”ルールなのである。
“マイボトル”でタイムは落ちる? 試算してみた
ランナーはコース上にある給水器から、水またはスポーツドリンクを自分で補充する。手ぶらでの参加は認められない。
世界初の試みのため、ネット上ではこの発表について、「タイムが落ちるのではないか」「密になるのではないか」と反対意見も多く上がった。だが、少し冷静に考えてみよう。
通常のマラソン大会の場合、紙コップに入っている水の量は半分から7割程度。約100ml~150mlだろう。
マイボトルの場合、まずスタートの段階で、ランナーは手元に400mlの水を持っている。スタートの段階から、給水所2カ所はパスできるぐらいの水を確保しているのだ。
前回の湘南国際マラソンの給水所は13カ所。単純計算すると約3245mに1カ所というイメージだが、対して“マイボトル”の場合の給水所は500カ所以上が設けられる予定だ。こちらは単純計算で約84.3mに1カ所になる。
3km以上先まで水がないと思うと、道中何があるかわからない。だから必死になって給水しようと思うものだ。だが、目視できる距離の84m先に給水所があったら? 誰かが使っているならば、空いている給水所で補充すればいい。
400mlをどのくらいで消費するかは、個人によって変わる。そう考えれば、1つの給水所に人が殺到することはなくなるだろう。混雑している13カ所の給水所に割り込んで立ち寄るより、タイムが縮まる可能性だってある。自分のタイミングで給水できるのだから、熱中症や脱水の心配もグッと減るだろう。
ちなみに、大会ではマイボトルのほかにマイカップの用意も推奨している。これは水とスポーツドリンク以外の飲み物も用意するためだ。ボトルには水かスポーツドリンク、カップで違う飲み物を飲む、なんて楽しみ方も用意されているのだ。
CO2削減効果は500mlペットボトル約17万本

この給水システムの導入によるCO2削減効果は約6トンにもなるという。これは500mlペットボトル約17万本の削減と同じ効果だ。
自分で給水することに、新型コロナウイルスの問題を心配する人もいるだろう。こちらは給水所にボランティアスタッフが立ち、1回1回蛇口部分を殺菌することで対応する。
ランナーとボランティア全員に除菌スプレーが配布されるほか、会場入場時とフィニッシュでランナーは手指と足を洗浄除菌するシステムも導入するなど、コロナ対策にも力を入れている。
ほかにも、参加Tシャツとスタッフウェアはペットボトルリサイクルによる繊維を使用。スタッフウェアは使用後に回収してリユース、大会プログラムはできる限り電子化するなど、すべての面において環境問題に配慮していくという。
世界で初めての挑戦だけに、1回目からすべてうまくいくとは限らない。思いもよらぬトラブルも起きるかもしれない。そのため、主催者は5年をかけてトライ&エラーを繰り返しながらベストな方法を探っていくという。
とはいえ、コロナ禍が終息に向かう気配はまだない。
エントリーは明日9月5日(土)から開始されるが、開催の最終判断は12月10日(木)に発表されるという。中止の場合は、振込手数料を除き、参加料は返金される。これなら、世界初のサステイナブルなマラソン大会にエントリーしない理由はないだろう。
新しい給水システムで、もしかしたらタイムは落ちるかもしれない。
だが、この一歩が、サステイナブルな大会がスタートする1ページになるのだとしたら。それは目先のタイムよりもよっぽど重要なことだと思えるはずだ。
林田順子=文