「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……
vol.14:「チェロキー(2代目)」
ジープ、1983年~2001年
四角いボディにタフな走行性能。時代を問わないジープの人気は言わずもがなであるが、それは我々ユーザーだけでなく、自動車業界内でも同様のようで、ジープブランドの所有権の変遷は目まぐるしい。
始まりは第二次世界大戦。
その後1953年にカイザーに買収されてカイザー・ジープに商標権が移り、さらにカイザー・ジープが1970年にアメリカン・モーターズ(AMC)に買収される。
ジープの商標権を獲得したアメリカン・モーターズは、カイザー・ジープ時代の「ワゴニア」の生産販売を継続しながら、1974年に「ワゴニア」の派生車種としてジープの初代「チェロキー(SJ型)」を開発した。
しかし1979年にアメリカン・モーターズはルノーの傘下に入る。さらに1987年にクライスラーに売却されるなどを経て、2014年にフィアットグループの傘下に収まった。
今現在ジープは、FCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)の1ブランドとなっている。
これだけ会社を渡り歩いているにも関わらず、今もブランドが続いているのは極めて稀である。それだけジープには独自の魅力があるということだろう。

大人になって、魅力を再発見する
2代目「チェロキー(XJ型)」が誕生したのは、ちょうどルノー傘下の頃。もともとルノーは、アメリカ市場に進出するための販売網を得るために、アメリカン・モーターズ社を買収したのだが、「ついでにヨーロッパでも売れるような4WD車を作ろうか」となったようで、アメリカン・モーターズは2代目「チェロキー」を開発した。
ルノーの意向もあり、初代と比べて全長で約500mmも短くなり、約500kgも軽量化され、当時のアメリカントラックや4WD車の主流であったラダーフレーム構造を捨て、乗用車と同じモノコック構造にフレームを組み込んだユニフレームという特殊な構造が採用された。

フランスも含め当時のヨーロッパは、ルノーなら「5(サンク)」、プジョーなら「205」といった小さな車がたくさん走っているような道路事情だ。
またアメリカン・モーターズ社が開発した、2WD/4WDを走行中でも切り替えられる4WDシステムが搭載されたことで、街乗りが中心という人にも大いに喜ばれた。そして2代目「チェロキー」は日本にもやってきた。
日本への輸入が始まった1984年当時の日本は、初代三菱「パジェロ」によって“クロカン四駆”ブームが巻き起こり、バブルの萌芽が見え始めていた頃で、「チェロキー」にとって格好のマーケットになった。
それまでの日本では、「ジープ」といえば三菱がノックダウン生産していたウィリス・オーバーランド時代の、いわゆる軍用車のようなイメージのジープ。そのイメージを一新するほど、「チェロキー」は売れた。

特に1993年に、アメリカのビッグ3(当時はクライスラーのブランド)としては初めてとなる、右ハンドル車が輸入されたのが大きかった。「郷には入れば郷に従え」ということわざがアメリカにあるかは知らないが、右ハンドルのチェロキーは多くの日本人ファンを獲得する強い武器となった。
しかも4Lエンジンを搭載しているにも関わらず最廉価グレードで299.8万円という戦略的なプライスも功を奏した。

アメリカやヨーロッパでもセールスは好調で、結局2001年まで生産され、3代目(KJ型)がそのあとを継いだ。現在はフィアット傘下で、5代目に進化している。一方で約20年間で生産が終了した2代目「チェロキー」は、今なおファンが多く、専門店もあるほどだ。
ボクシーながら、ルノーの影響か荒々しさのないスラッとしたそのスタイルは、1984年のあの頃からすっかり大人になった今の我々にこそ、似合う1台かもしれない。
「中古以上・旧車未満な車図鑑」とは……
“今”を手軽に楽しむのが中古。“昔”を慈しむのが旧車だとしたら、これらの車はちょうどその間。好景気に沸き、グローバル化もまだ先の1980~’90年代、自動車メーカーは今よりもそれぞれの信念に邁進していた。その頃に作られた車は、今でも立派に使えて、しかも慈しみを覚える名車が数多くあるのだ。上に戻る
籠島康弘=文