「ラジオ体操2.0」とは……
今回は、見た目ではわかりにくいインナーマッスルの強化に最適なラジオ体操を紹介する。日常のちょっとした動作で、体の衰えを感じている人は必見。
なぜならその原因は、単なる「歳のせい」ではなく、インナーマッスルの衰えにある可能性が高いからだ。
高地トレーニングを街中で体験できるスタジオ「ハイアルチ」の開発者であり、プロデューサー。長年のトップアスリートたちへの指導経験を活かし、高地トレーニングの効果を最大限に引き上げるメニューを構築。現在は、浦和レッズの槙野智章選手をはじめとしたトップアスリートのほか、大学駅伝の選手たちのトレーナーも務めている。
縁の下の力持ち。インナーマッスルの強化で体が若返る
―片脚で立って靴下を履く時にバランスを崩してしまったり、ちょっとした段差につまづいたりと、ちょっとした日常の動作のなかに「歳を感じるとき」ってありますよね。
新田 : それって歳のせいだから仕方がないと思っていませんか? とくに30代後半や40代に入ったあたりから、「歳のせいで〇〇ができなくなった」と言う人が多いようですが、それは間違いです。
―ほかに原因があるんですか?
新田:インナーマッスルが弱っていることが最も大きな原因でしょうね。もちろん、若くてもインナーマッスルが弱っていれば片脚で立って靴下をうまく履けなかったりすることだってあります。一方で、インナーマッスルの量や力が十分な人は、高齢になってもキレのある動きができるんです。
―インナーマッスルって、普通の筋肉とは違う特殊な筋肉なんですか?
新田:位置する場所が違うだけです。インナーマッスルは体の深いところにある筋肉。
―アウターマッスルとは働きが違う?
新田:アウターマッスルは力を出す時に必要な筋肉、インナーマッスルは健康を維持するために必要な筋肉と言えばわかりやすいかもしれません。
―健康を維持するためというと?
新田:関節の動き安定させたり、内臓の動きを助けたり、内臓を安定させて働きを低下させないなどの働きをもつ筋肉だということです。ポイントは、アウターマッスルもインナーマッスルにサポートしてもらわないと本来の力を発揮できないということ。それほど重要な筋肉ってことです。
―なるほど。では、そもそもインナーマッスルが弱っていると片脚で立って靴下を履くときにバランスを崩しやすくなるのはなぜですか?
新田:関節がグラグラしていてはバランスをとることが難しいでしょう? もちろん、体のバランスをとる時にはアウターマッスルも働きますが、それもインナーマッスルとうまく連動しないときちんと働くことができません。
姿勢の維持も同じ仕組みです。インナーマッスルが弱い人は猫背になる。それに、「つまづきやすくなる」っていうのも同じで、一歩ごとに脚を高く上げられなくなるからちょっとした段差でもつまづいてしまうわけです。
―いつまでも若々しい体を保つ上でインナーマッスルが大切な役割を果たしているんですね。
新田:問題は、アウターマッスルよりも運動では刺激が与えづらいので、鍛えにくいことです。
ということで、インナーマッスルを鍛えるなら、できるだけキツくなくて簡単なエクササイズのほうが続けやすいと思います。そこでおすすめしたいラジオ体操が、「体をねじり反らせて斜め下に曲げる運動」と「体を倒す運動」です。これなら運動経験ゼロの人でもキツさを感じることがないし、テレビを見ながらでもできちゃうので、手をつけやすいと思います。
インナーマッスルにも刺激を入れやすい「超複合関節運動」
―「体をねじり反らせて斜め下に曲げる運動」と「体を倒す運動」がインナーマッスルに効果的なポイントってどこなんでしょうか?
新田:この2つのエクササイズは「超複合関節運動」といって、さまざまな関節を同時に動かせる運動なんです。たくさんの関節を動かすということは、たくさんの筋肉を同時に動かせるということ。つまり、効率良くたくさんの筋肉、当然インナーマッスルにも刺激を与えることができます。
―確かに、体を大きく回したり、手をブラブラさせたりすることでいろいろな関節が動いていることがわかります。
新田:通常の筋トレのようにググッと筋肉に負荷がかかる感覚がないから、キツさも感じないはず。でも、インナーマッスルにはしっかりと刺激がいっているんです。動作自体は大きいから、全身の血行も良くなってスッキリ感も得られるんじゃないかな。
―これなら運動嫌いでも続けられそう。
【体をねじり反らせて斜め下に曲げる運動】

―上体だけを大きく回すというのは意外と難しいですね。
新田:「体をねじり反らせて斜め下に曲げる運動」の注意点は、上体を回す時に力を抜くことです。脱力することで上半身が重りのようになり、全身の筋肉、とくに腹や腰まわりのインナーマッスルを鍛えられます。
力を抜いて、メトロノームの振り子のようなイメージで上体を大きく回しましょう。また、背骨の一つひとつがしっかり動くので、背中のコリの改善にも効果的ですよ。
【体を倒す運動】

―「体を倒す運動」は脱力しやすい体操ですね。
新田:体をゆする動作がメインなので、この体操自体に体を脱力させてリラックスさせる効果があります。しかも、より多くの関節を動かせる。ポイントは、胸を張って腰を少し後ろへ引くことで、できるだけ背中が丸くならないように意識しながら上体を倒していくことです。
今回のどちらの体操も、動きが大きいので、速く行えば有酸素運動の要素を取り入れられます。運動不足の解消にもぴったり。30秒全力でやる時も、脱力することを意識してください。
それと、上体を反らせる時に反動をつけすぎると腰を痛めるので、腰痛持ちの人はその点だけ注意が必要です。
●トレーニングの流れ
STEP1 ウォーミングアップ
90~100bpmの速さで「体をねじり反らせて斜め下に曲げる運動」+「体を倒す運動」を規定回数を行う。
↓
STEP2 スピードアップトレーニング
「体をねじり反らせて斜め下に曲げる運動」と「体を倒す運動」をそれぞれ30秒間全力で行う。
↓
STEP3 クールダウン
90~100bpmの速さで「体をねじり反らせて斜め下に曲げる運動」+「体を倒す運動」を規定回数行う。
【スピードアップトレーニングの動画はこちら】
「ラジオ体操2.0」
誰しも子供の頃に、一度はやった記憶があるだろう「ラジオ体操」。そのルーツは戦前までさかのぼる。そして、馴染み深い現在のラジオ体操第1は1951年、第2は1952年に正式制定されたものだ。そんな“国民的体操”を子供や高齢者のための運動と思ってはいないだろうか? それは大きな間違い!ラジオ体操は体の構造を徹底的に研究して考案された「スキのない全身運動」なのだ。これを極めれば、特別な筋トレやストレッチをせずとも体を進化させられる! 上に戻る
ハイアルチ 吉祥寺スタジオ
住所:東京都武蔵野市吉祥寺東町1-17-18
電話番号:0422-22-7885
営業:10:00~22:00(平日)、10:00~19:00(土・日・祝)
http://high-alti.jp/
空間をまるごと低酸素状態にしたスタジオで行う「ハイアルチテュード(高地)トレーニング」を、気軽かつ、リーズナブルに体験できる日本初のハイアルチテュード専門スタジオ。専門トレーナー指導のもとでのトレーニングなので、安全に効率よく鍛えられる。都内では、吉祥寺のほかに、三軒茶屋、代々木上原にスタジオを構える。8月に大宮、9月に茅ヶ崎、10月に溝ノ口と、新店舗も続々オープン。

千葉県船橋市出身。1977年生まれのオーシャンズ世代。市立船橋高校サッカー部時代は選手権全国優勝を経験。U-20日本代表選出され、1996年にジュビロ磐田とプロ契約。引退後はジュビロ磐田で2015シーズンまで広報や運営に携わる。2020年より高地トレーニングスタジオ『ハイアルチ』吉祥寺のGMを務める傍ら、並行して、女子サッカークラブのアドバイザーやモデル業も行うなど精力的に活動中。
楠田圭子=取材・文 渡邊明音=写真