ひと口に「長く着られる服」というが、それははたしてどんなものか。そのコツを探るべく、オーシャンズ世代を代表するファッションのプロであるお三方に話を伺った。
前回に引き続き、今回は長く着るために重要な「飽きがこない」服から探ってみたい。
ノンネイティブ デザイナー 藤井 隆行 Age 4320年続くブレない服作りで、業界の内外に多くのファンを持つノンネイティブのデザイナー。同業として共感できるブランドやリスペクトできるブランドをメインにピックアップ。

ご存じ「種さん」。ファッションに関する引き出しは多数。ルーフトップテントを装備したSUVで愛犬オカラとともに海へ山へと出かけるフットワークの軽さも、最近はコロナで停滞気味。

メンズ誌・広告・タレントなどで、クールなスタイリング手腕を発揮。独立して20年以上というベテランの域に。最近仕事と趣味用にバンを購入してサーフィンとゴルフも楽しむ2児の父。
——「飽きがこない」ってどんな服ですか?
藤井 洗い続けると味が出てくるというのが、結構大事。洗って色が落ちていく過程が格好いいと感じます。長く着ていくなかで変化を楽しめる。
橋本 僕は、トレンドと定番のバランスがいいブランドを自然と選ぶことが多い気がする。そこはノンネイティブにも通じるものを感じます。
種市 その辺は、ブランドとしてブレていないってところなんだろうね。僕が好きなブランドも結構そういうところがあります。ワコマリアはその代表格。設立した当時から、ディレクターの森くん(敦彦)や、今はブランドを離れた石塚くん(啓次)の自由な空気感が面白くて、15年くらい経っているけど、今も変わらないですね。パッションがある。

——面白さ=飽きさせないという図式ですね。
種市 大御所スタイリストで先輩の、近藤昌さんがスタートしたばかりのオルモストも面白いですね。長年にわたり服を見てきた人が、積み重ねた経験から、僕から見ると少しラフな感覚で作っている服。でも、狙いすぎてなくてちょうどいい。妙な色気も感じられるし。

藤井 ラフに見える種さんも、実際は、“なんとなく”では服を選んでないですよね。ブランドやデザイナーの背景にしっかりコミットしているから惚れ込める。
種市 少し癖があるほうが好きかな。ベーシックな服も好きなんだけど、そこに合わせる相棒として。適当に着ても格好良く見えるのがポイント。
橋本 適当に着て、キマる時点でうらやましさしかないですよ(笑)。
種市 緻密さを極めているおふたりにはかないませんて。
藤井 種さんは、特にサーフカルチャーへの共感も強いでしょ? LAのブランドは、根底でつながりを感じます。アウターノウンは思想がしっかりしていて、商売度外視というか。メッセージが強い印象。

橋本 愛着という意味では、思想の共感は不可欠だと思う。
藤井 愛着といえば、僕がつい選んでしまうのが、ハイカットスニーカー。
橋本 スニーカーは、藤井くんとほぼ同じ趣味。モードブランドなんかも新しい解釈の仕方でアメカジをなぞっていますよね。

——世代的に、アメカジへの愛着は抜けないですよね。
藤井 ただ、我々の世代ならば、必ず通過しているようなアメリカ的な要素はないけれど、そこはかとないエレガンスを感じるのが、ドリス ヴァン ノッテン。

橋本 わかる(笑)。ドリスのニットは昔から好きです。
種市 ミラノのセレクトショップなどのセールで見かけると、デイリーな無地ニットを買っちゃいますよ。でもよく見ると、編み地が変則的だったりして、細部が詰められているのが好き。
——シンプルでヒネリも利いている。これは大人のエレガンスに欠かせなさそうです。
藤井 ブランドロゴが強調されているよりは、アノニマスなほうが好き。
種市 マルジェラのステッチは、すごい発明だよね。

藤井 大枚をはたく価値がありますね。モノがいいのはもちろんありますけど。前から見たら普通の人だけど、ステッチを見て「あ」ってなる。その瞬間好印象を抱くから不思議。
——嫌らしくない程度にわかるブランド性。

恩田拓治=写真(取材) 竹内一将(STHU)、鈴木泰之=写真(静物) 増田海治郎、大西陽子、髙村将司、菊地 亮、秦 大輔、増山直樹=文 長谷川茂雄=編集・文