「ラジオ体操2.0」とは……
「体の不調にはストレッチが良い」とまわりからすすめられたものの、ちょっと面倒くさい。手っ取り早く全身をストレッチできないものか?
今回はそんな人にとっておきの、4分間で全身ストレッチが完了する、時短ラジオ体操を紹介する。
高地トレーニングを街中で体験できるスタジオ「ハイアルチ」の開発者であり、プロデューサー。長年のトップアスリートたちへの指導経験を活かし、高地トレーニングの効果を最大限に引き上げるメニューを構築。現在は、浦和レッズの槙野智章選手をはじめとしたトップアスリートのほか、大学駅伝の選手たちのトレーナーも務めている。
体の根幹部を伸ばして、全身をくまなくストレッチ
―体を動かす時間が減ったせいで体が硬くなったという話をよく聞きます。例えば、落としたものを拾うときに前より前屈しづらくなったとか。
新田 : それは体の根幹部のまわりにある筋膜が硬くなることによって、筋肉が硬くなっていることが原因と考えられますね。
―体の根幹部って?
新田 : 四肢の結合部分、つまり腕と脚と胴体とのつなぎ目です。通常なら特別な運動をしなくても根幹部は頻繁に動かされる部位なんで、極端に硬くなることはありません。
歩くだけでも根幹部は動かされるから、通勤などで普通に歩いていれば、自然と根幹部周辺の筋膜や筋肉はストレッチされるんですよ。でも、リモートワークが増えて、通勤が減るとなると話は変わりますよね。
―そもそも筋膜と筋肉の違いって何ですか?
新田 : 筋膜って筋肉を包んでいる膜のようなものなんですが、体を動かさないとそれが硬くなって筋肉をギュッと圧迫しちゃう。すると筋肉が硬くなり、関節を圧迫し、関節の可動域が小さくなる、というわけです。
例えば、ビニールに肉を入れて空気を抜いていくと肉が圧縮されてカチカチになるでしょう?あの真空パック状態と同じ状態が体の中で起こっているということです。
―筋膜を柔らかくするにはどうしたらいいんですか?
新田 : 硬くなった部分をテニスボールなどでグリグリしてマッサージする、いわゆる筋膜リリースという方法もありますが、それだけでは筋肉そのものを柔らかくできません。それに、根幹部には体の深いところにあるインナーマッスルという筋肉が多いので、直接的に筋膜に働きかけることが難しいんですよね。
―そこで、やっぱりストレッチですか?
新田 : 常道でいけばですが。
―違うんですか?
新田 : ここはあえてストレッチではなく、ラジオ体操をおすすめしたいですね。根幹部まわりの筋膜を柔らかくして筋肉を柔らかくするだけでなく、血行も改善でき、さらには心拍数も上げられるから有酸素運動効果も得られる。
それも、時短で根幹部の奥底にある筋肉にまでアプローチできるから、器具を使った筋膜リリースと同等の効果も得られると。メリットしかありません。
ジャンプでストレッチしやすい体にスイッチ
―時短というと、どのくらい行えばいいんですか?
新田 : 約4分です。今回は3種目のラジオ体操をピックアップしますが、1種目をノーマルスピードで1分間ずつ、計3分間。それにプラスして、スピードアップして各種目を15秒ずつ行ってください。
―まずは「両脚で跳ぶ運動」ですね。
【両脚で跳ぶ運動】

新田 :ジャンプって究極の全身運動なんです。
スピードアップするとかなり心拍数も上がりますからね。ハイアルチのスタッフも、この「両脚で跳ぶ運動」を繰り返すだけでも、最後は腕が上がらなくなるほどキツいと言っています。簡単だけどラジオ体操でいちばんキツいのはこの種目。
体の後面を伸ばして、腰痛・膝痛を予防・改善
―次の「体を倒す運動」ですが、これにはどんなメリットがあるんですか?
【体を倒す運動】

新田 : 根幹部、特に、股関節まわりの筋肉の硬さがとれます。それと、ストレッチしにくい体の後面の筋肉のほとんどを、同時にストレッチできてしまうことです。
なかでも、背中の中部から下部にある筋肉(脊柱起立筋)と、お尻、ハムストリングスのストレッチ効果は抜群です。
―体の後面の筋肉をストレッチするメリットは?
新田 : 正しい姿勢がとれるようになって、体の安定性が高まることですね。そうなると、脚を動かしたときなんかもにグラつかないので、自ずと腰や膝への負担も減らせます。腰痛、膝痛に悩む人には最高ですよ。
股関節まわりが柔らかくなると、脚運びも軽くなるし、股関節痛も防げます。デスクワークで股関節を曲げたままの状態が長く続くと硬くなるので、この体操はリモートワークで座りっぱなしという人にもおすすめですね。
最後の仕上げは上半身のストレッチでコリを改善
―最後は「体をねじる運動」ですね。
【体をねじる運動】

新田 : この体操は、広背筋、僧帽筋といった肩甲骨まわりにある大きな筋肉や、胸の筋肉(大胸筋)を一気にストレッチできます。
体をねじる動きは、大きな筋肉を効率的にストレッチできる動きなんです。大きな筋肉を柔らかくすると血流も一気に改善されるので、上半身のコリを効率よく改善できるんですよ。
小難しいストレッチをやるよりずっと効果がありますよ。これがラジオ体操のすごいところで、全部が簡単なのに全部が効く。
―ちなみに今回の3種目を行うと、筋膜も柔らかくなるんですか?
新田 : もちろん。筋肉がストレッチされると筋線維が動く、ちょっと専門的に言うと「滑走」します。筋線維が滑走すると筋膜も筋線維と擦れ合って時次第に柔らかくなっていくんです。
●トレーニングの流れ
STEP1 ノーマルバージョン
90~100bpmの速さで「両脚で跳ぶ運動」→「体を倒す運動」→「体をねじる運動」をそれぞれ1分間ずつ行う。
↓
STEP2 スピードアップバージョン
「両脚で跳ぶ運動」→「体を倒す運動」→「体をねじる運動」の順に、それぞれ15秒間全力で行う。
【スピードアップトレーニングの参考動画はこちら】
「ラジオ体操2.0」
誰しも子供の頃に、一度はやった記憶があるだろう「ラジオ体操」。
ハイアルチ 吉祥寺スタジオ
住所:東京都武蔵野市吉祥寺東町1-17-18
電話番号:0422-22-7885
営業:10:00~22:00(平日)、10:00~19:00(土・日・祝)
http://high-alti.jp/
空間をまるごと低酸素状態にしたスタジオで行う「ハイアルチテュード(高地)トレーニング」を、気軽かつ、リーズナブルに体験できる日本初のハイアルチテュード専門スタジオ。専門トレーナー指導のもとでのトレーニングなので、安全に効率よく鍛えられる。都内では、吉祥寺のほかに、三軒茶屋、代々木上原にスタジオを構える。

千葉県船橋市出身。1977年生まれのオーシャンズ世代。市立船橋高校サッカー部時代は選手権全国優勝を経験。U-20日本代表選出され、1996年にジュビロ磐田とプロ契約。引退後はジュビロ磐田で2015シーズンまで広報や運営に携わる。2020年より高地トレーニングスタジオ『ハイアルチ』吉祥寺のGMを務める傍ら、並行して、女子サッカークラブのアドバイザーやモデル業も行うなど精力的に活動中。
楠田圭子=取材・文 渡邊明音=写真