広い荷室を持つワゴンと悪路走破性を持つSUVのクロスオーバー。ボルボの最新モデルではハイブリッドのパワートレインを搭載し、走り出しはより軽快、そして好燃費に。
そんなワゴンとSUVのいいとこ取りな一台を、識者たちはどう分析するのか。
VOLVO V60 CROSS COUNTRY ボルボ V60 クロスカントリー
ベースとなる車体は、850やV70の実質的後継となる主力エステートワゴンのV60。これに最低地上高を210mmまで高め、さらには4WDを搭載することで高い悪路走破性を獲得。
全グレード同一の最高安全装備を搭載する点も見逃せない。全長4785×全幅1895×全高1505mm 579万円~。
1人目「次に狙う最有力候補」
出るんですよね、クロスカントリー。というのも、僕は現行のボルボ V60を1年半前から乗っていますが、当時クロスカントリーがあれば、選びたかったほどです。
V60との出会いは衝撃的でした。ある日、ボルボの正規中古車店にふらりと寄ったところ、何らかの事情で一台、新車のV60が展示されていたんです。格好いいなと思い、カタログをパラパラめくると飛び込んできたのが「デニムブルー」の文字。「これ、何ですか?」と即質問(笑)。
裏に一台あると案内され、現物を見たらぞっこん。「やはり、デニム関係?」とのスタッフに「はい、実は……」と。
半年後、会社の社長から突如ラインが。「お前の次の車はこれだ」って添付されていた写真が、V60のデニムブルー(笑)。何という偶然の一致かと。
V90ユーザーの社長が、ボルボのディーラーに話をつけてくれたというので、「ぜひ」と購入しました。ナンバーはデニム好きの象徴「501」です(笑)。
そもそも、いつかはボルボ 240 エステートに乗りたいと思っていたくらいボルボ好き。そんな僕にとっては、今のV60に満足していますが、車高が10cm高く、フェンダー回りが武骨なクロスカントリーは、さらに格好良く映ります。
なので、次に狙うのは当然、この車のデニムブルー。ハイブリッドなのも魅力ですね。使い勝手が良すぎて、240に行けなくなっちゃいそうですが(笑)。

藤原 裕
原宿の人気古着店の看板ディレクター。
2人目「郊外はもちろん都市部でも大活躍」
欧米では多様なライフスタイルにマッチする存在として古くから親しまれてきたステーションワゴン。日本でも’90年代に一世を風靡しました。が、’00年代以降、その座を取って代わったのがSUVというわけです。
一見、SUVになりたくて仕方のないステーションワゴンという体に見えるのがボルボのクロスカントリーシリーズ。同様のコンセプトはスバルやアウディも採用しています。はたしてこの手の車には、SUVにないものがあるのでしょうか。
あるんです。それは重心高。SUVの高い視点やゆとりのある室内高は確かに魅力ですが、そのぶん重心が高くなり、車体の動きは大きくなりがちです。それをなんとか抑え込むべく足回りを硬く締めたりすると、乗り心地にも少なからず影響は表れます。
対して重心の低いこのようなパッケージは、乗り味や乗り心地的には有利に働きます。郊外の目的地には高速道からの山道へというパターンも多いでしょうが、操縦安定性の面でも有利です。
また、この手の車の多くは全高が1550mm内に収まりますから駐車場の制約も少ない。都市での佇まいも圧が低くて大袈裟にならないという点を長所に思われる方もいるでしょう。
走破性はSUVとほぼ同等が確保されていますから、行動範囲に遜色はありません。V60 クロスカントリーもまさにそれ。より上質な走りを求める方には、ぜひ試してみていただきたい。

渡辺敏史
出版社で自動車/バイク雑誌の編集に携わったあと、独立。自動車誌での執筆量が非常に多いジャーナリストのひとり。車の評価基準は、市井の人の暮らしにとって、いいものかどうか。
3人目「ボルボのブランド性に共感」
今乗っているのは、ボルボのV70。仕事柄、車選びにおいて荷室が広いのは必須条件です。
趣味のサーフィンやケージに入れて連れて行く愛犬同伴の家族旅行など、プライベートでも便利。
ボルボを選んだのは、トータルバランス。デザインや性能、ブランド性などが自分らしいなと。服を選ぶ場合も、これ見よがしな王道というより、主張が控えめで良質なもののほうがしっくりくる。ボルボもそんなイメージ。
ブランドが掲げる安全性にも信頼を置いています。子供を乗せる機会も多いし、アシスタントが運転する場合もある。「死亡事故ゼロ」にこだわる姿勢にも共感しますね。
デザインは、正直に言うと以前乗っていたフォルクスワーゲン パサートのほうが好みだったんです。が、乗っていくうちに、気になっていた部分には実は意味がある、などとわかってくる。なるほど、北欧の機能美ここにありと、今では愛着を感じています。
このV60 クロスカントリーは、そうしたボルボの好印象が詰まった一台。何より内装が最高にモダンです。タッチパネルのコンソールなど、まさに現代の車。最新のデザインコードもクールだし、街で見かけるとつい反応してしまう。ハイブリッドという点にも食指が動きますね。

荒木大輔
オーシャンズをはじめ、メンズ雑誌や広告、芸能人のスタイリングなどで活躍中。BMW 750、ホンダのエレメント、フォルクスワーゲンのパサート ヴァリアントからV70に連なる車遍歴をたどる。

4人目「ワゴンとSUVのいいとこ取り」
SUV派から「お前はステーションワゴンの仲間か?」と問われれば、「いえいえ私は車高を上げていますからSUVの仲間です」と答える。ステーションワゴン派から「お前はSUVの仲間か?」とたずねられれば、「いえいえ、私は広い荷室と安定感のある走りのステーションワゴンです」と答える。
といった具合に、クロスカントリーはSUVとステーションワゴンの“いいとこ取り”をしたスタイルで、イソップ寓話のコウモリみたいな存在だ。けれども実際に使ってみると、コウモリってサイコーにいいヤツだ。
雪山に向かう深い轍の掘られた道やキャンプ場周辺の凸凹道では、最低地上高をしっかり確保しているおかげで安心して走ることができる。一方、全高は1500mmちょいに抑えられているから、都市部のタワーパーキングも楽勝だ。
加えて、パワートレインが48Vのマイルドハイブリッドになったこともユーザーにはありがたい。発進時にはモーターがさりげなくアシストしてくれるから、滑らかで余裕のある加速になる。結果、赤信号からのストップ&ゴーが連続する都市部でもストレスがない。
一方、高速道路の走行では気筒休止システムが作動、好燃費と抜群の静粛性で、地の果てまで走れそう。この素晴らしいグランドツーリングの能力は、コウモリというよりシベリアを目指す渡り鳥みたいだ。

サトータケシ
編集者として経験を積んだのちに独立、現在はフリーランスのライター/エディターとして活動する。2021年に楽しみにしているのは、新型ランドローバー ディフェンダーのショートボディだとか。
5人目「オーラを纏った「角張感」がいい」
愛車は、7年前に購入したボルボ 240エステート。その前は、フォルクスワーゲンのゴルフⅡに乗っていましたので、角張ったデザインにどこか惹かれてしまうんでしょうね。
僕の240は、なかなか調子良く、17万kmほど乗っていますが、エンジン&ギア系のトラブルはいっさいなし。当たり車両でした(笑)。
ワゴンを選んだいちばんの目的は、趣味のマウンテンバイク&登山。キャリアを搭載して2台積めるようにしています。車体以外にもヘルメットや着替えなど、荷物が多くなるので、ワゴンが必需。4800㎜の車体は荷室が広く、山梨や埼玉の里山やコースに赴くのに重宝しています。
ボルボといえば、頑丈で安心。手袋を着けたまま扱えるセンターコンソールを持つ240は、ユーザビリティが考えられていて、北欧的な機能美も感じています。旧車に惹かれる僕にとっても、このV60 クロスカントリーは、クールな一台。
まず、モダンな最新デザインも、目の細さは少々気になりますが、大きなグリルやフェンダーなど、僕が車に求める角張り感がある。何より、いい車にしか出せない「オーラ」を纏っている(笑)。センターのタッチパネルも、「手袋対応」に通じる操作性の追求が感じられますね。
最近のボルボは、洗練されてラグジュアリー感が増したので「高嶺の花」になりつつありますが、V60 クロスカントリーと240の2台持ちができたら理想的だなぁ。

小林雄美
拓植伊佐夫氏に師事したのちに独立。現在は、オーシャンズをはじめとする雑誌や広告のほか、舞台などでもその手腕を発揮。好きな車が近づくと窓を開けて聞き入るほどの排気音フェチでもある。

6人目「ハイブリッド仕様で最早、死角なし」
ステーションワゴンをベースに車高を上げて、フェンダー回りにはマットな樹脂パーツを、ボディ下側にはアンダーガードを装着して、よりオフロード性能を高めた“クロスオーバー”モデルに注目が集まっています。
メルセデスのEクラス オールテレインや、アウディのオールロードクワトロ、VW パサート オールトラックなどはまさにそれで、オフロードを走る人はもとより、ステーションワゴンをよりカジュアルに仕立てたようなスタイリングが支持されて世界的なヒット作となっています。
実はこうしたクロスオーバーモデルの先鞭をつけたのがボルボ。1997年にステーションワゴンのV70をベースとしたV70 XCを登場させて以来、20年以上にわたって連綿とクロスオーバーを造り続けており、この種のモデルにかけては手練れです。
インテリアはアウトドア志向ではなく、実にラグジュアリー。肌触りの良いファインナッパレザーのシートに身を委ね、世界的に有名なスウェーデンのイェーテボリ・コンサートホールの音響空間を車内に再現したバウワース&ウィルキンスのサウンドシステムの音に包まれる空間は、贅沢そのもの。
既にボルボは全ラインナップの電動化を完了しており、このV60 クロスカントリーも48Vハイブリッド仕様。「安全装備にオプションなし」を標榜するだけに、先進安全運転支援機能は満載。まるで絵に描いたような安心・安全の高品質車なのです。

藤野太一
自動車誌の編集を経て、フリーランスの編集者兼ライターに。専門誌、一般誌をはじめ、自動車関連の分野をはじめとしたビジネスパーソンを取材する機会も多く経済誌などにも寄稿する。
髙村将司=文