主演や助演、ゲスト出演でも幅広い役柄で作品にインパクトを与え続ける俳優・青木崇高さん。

今年で41歳を迎えた旅好きのオーシャンズ世代に、釣り堀でひと息ついてもらいながら、デニム論を伺った。

 


大人になって変わった距離感とは

俳優・青木崇高のデニム論「服の中でも特殊なカテゴリーのひとつ...の画像はこちら >>

「最近はほとんどデニムをはかないんです」と開口一番。「もちろんデニムをはきたくなるときもあります。たまたま今は、シルエットのキレイなパンツが好きなんですよ」と話す言葉から、青木さんの正直な人柄が滲む。

ただ、話を聞くにつれ、青木さんとデニムとの関係が徐々に浮き彫りになってくる。

大阪出身ということもあり、デニムとの出会いはアメリカ村だったそう。今年41歳を迎えたばかりのオーシャンズ世代。重なる部分も多いだろう。

「高校時代から、リーバイス501の66モデルなどを雑誌やお店で見かけては、これがヴィンテージだのあれがレプリカだの言いながら、どっぷりとデニム文化にハマっていました。同時に、ステュディオ・ダ・ルチザンや、ドゥニームといった日本デニムブランドも出始めた頃で、並んで買ったりもしました。

今思えばそうしたデニムは、体型や、似合う、似合わないは二の次で、手に入れていることの満足感が最優先。無理してはいていたのかもしれません」。

30代を迎えてから、服に対する意識が変わってきたという。

「デニムに限らず、ブランドネームに左右される感覚は、だいぶ薄れてきました。

服本来の意味を感じられるようになったのかもしれません。他人が何と言おうが、自分が好きじゃないと意味がない。相対的ではなく、絶対的なもの選びのほうがいいと感じています。

10代、20代は、キツくてもブカブカでも、我慢してお洒落をしてトンガっていた(笑)。でも今は、心地良い服を着てリラックスしたい、そういう服選びになっています」。


一生の趣味である旅の中での役割

俳優・青木崇高のデニム論「服の中でも特殊なカテゴリーのひとつ」
デニム5万600円/デンハム(デンハム・ジャパン 03-3496-1086)、シャツ3万1900円/ラグ & ボーン(ラグ & ボーン 表参道 03-6805-1630)、手に持ったコート8万5800円/オーラリー 03-6427-7141、靴15万9500円/ジェイエムウエストン(ジェイエムウエストン 青山店 03-6805-1691)

「デニムって、もともとは仕事着じゃないですか。でも、長い時を経てファッションアイテムになった。そういう歴史や背景があって、シルエットや素材などの流行がありながら、土台がブレないところが面白い。服の中でも何か特殊なカテゴリーのひとつだと感じます」。

こうしたデニムの本質については、共感できる読者も多いだろう。

「パンツだけではなくてジャケットもある。着こなし次第で印象も変わる。

非常に受け皿が広いので、いろいろな角度で付き合えるのがいいところ。今まったくはかなくても、ずっと近くにいてくれる存在です」。

俳優・青木崇高のデニム論「服の中でも特殊なカテゴリーのひとつ」
以前、撮影ではいて気に入ったというのが、デンハムのデニム。「はき心地の良さと、丁寧に作られたメイド・イン・ジャパンコレクションの生地の面構えがいいなと。ロゴのハサミが可愛いですし」。

青木さんといえば、旅好きでも知られている。ドキュメンタリー番組の出演のみならず、盟友・加瀬亮さんを訪ねる初監督の映像作品『あおきむねたかの「ウズベキスタン」までちょっと会いに。』などからも、行動的なキャラクターが見て取れる。デニムは、そうした気軽な旅のお供でもあるそうだ。

「バックパッカーだった20代の頃は、例えば1カ月の旅なら、デニム1本で過ごすのが基本。バリバリになるし、汗やホコリまみれで汚くもなるし、臭います(笑)。でも、すごくいい相棒になる。手元に紙がないときは、デニムに直接ペンでメモったり、暇な移動中は落書きしたりして、キャンバスになる(笑)」。

そうしたデニムは、たいてい古着だそうで、旅を終えるとその一生も終えるのだ。

「旅の間は、デニムがそのテンションについてきてくれるんです。

でも、旅が終わると、東京の生活でそれをはくのは、なんか気分と合わなくて。不思議なもので、そういうデニムはどこかに消えていってしまいます。死に場所を選ぶ、老いたゾウみたいに(笑)」。

えも言われぬロマンティックな感じが、青木さんらしい逸話だ。

 

柏田テツヲ=写真 石黒亮一(太田事務所)=スタイリング 佐鳥麻子=ヘアメイク 髙村将司=文

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