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「Camp Gear Note」とは……

春休みや大型連休を前に、手持ちの道具を見直したり、新調したりする方は多いだろう。生活雑貨や食料など、昨今は国産の魅力が見直されつつあるが、アウトドアギアも例外ではない。

国産の道具というと、品質は高いもののお値段が可愛くない工芸品のようなものを思い浮かべるかもしれない。しかし、国産ならではの高い品質はそのままに、価格も抑えるという難題をクリアするブランドがいくつか存在する。

新潟県燕市を拠点とする「ユニフレーム」も、そんな稀少な国産ブランドのひとつである。


日本人のための道具は日本人が作る

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
ユニークな炎を創造することが、ユニフレームの掲げる理念である。

ユニフレームが創業した1985年と聞いて、上越新幹線が上野駅に初めて乗り入れた年と思い出せる人は生粋の新潟県民だろう。新潟県民にとってこの出来事は大きく、新潟県全域で首都圏との商売が活性化した記念すべき年となった。今でも燕三条駅前に数多くのビジネスホテルが立ち並ぶのは、この年からなのだそうだ。

ユニフレームの母体となる会社、新越ワークスも例外ではなかった。それまで金属製のザルを主に扱ってきたが、2代目(現社長)が先代と同じことをしてはつまらないと立ち上げたのが「ユニフレーム」だった。

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
ヒーターを釣り道具店に卸していたことから、徐々にアウトドア市場に参入し始めた。

ブランド名は、「ユニークな炎(フレーム)を創造する」という理念から名付けられたもの。製品化第一号は、工芸用のカセットボンベ式トーチだった。

トーチの延長で、ワカサギ釣り用のヒーターや2バーナーもスタート。当時、キャンプ用の2バーナーといえば汁受けのない製品しかなかったため、汁受けを設けたモデルを作ったそうだ。

‘90年代のキャンプブームでは、誰もがパジェロなど4WD車を使うためにキャンプ場に向かった。

いわゆるアメリカのオートキャンプ的スタイルが人気を集める中、ユニフレームはコンパクトに収納できるガスランタンやグリル台、コーヒードリッパーなどを次々と開発。日本製らしい細やかなアイデアが光る商品がヒットし、徐々に市民権を得ていった。

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
写真右は初期モデルの2バーナー。「ツインバーナー US-1900」として、現在もその系譜は続いている。

「当時の日本のキャンプは、アメリカのオートキャンプというよりも花見の延長に近い感覚でした。日本のキャンプ文化は独特なので、我々は『日本人の道具は日本人が作る』ということを意識していました」とは、ユニフレームの横田さん。

アメリカのオートキャンプ文化から生まれた道具を、そのまま日本のキャンプシーンに持ってきても使いにくいものが多かったため、日本人が使いやすいことを念頭に作り変えたのだそう。そりゃ、使いやすいわけだ。


品質、価格、供給が3本柱

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
火器や金属製品が得意だが、タープやファニチャーのラインナップも幅広い。

しかし、良い時代がずっと続いたわけではない。

‘90年代後半になるとキャンプブームが去り、アウトドア業界は長い低迷期を迎える。当時は何を作っても売れず、ブランドとして迷走したこともあったが、地道な製品作りを止めることはなかった。

今も昔も、彼らは「品質」「価格」「供給」の3本柱を掲げて製品作りに取り組んできた。

一般的な製品はデザインありきで作られることが多い。しかし、ユニフレームでは上記の3つの柱を踏まえたうえで、実現したい機能を考えることから製品作りがスタートする。

その機能を実現するために試作を繰り返して形になってから、最終的にデザイン的な要素をプラスして製品化にいたるという段階を踏んでいる。

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
現在も人気のスライドガスランタンが生まれたのは1981年。機能の追求から生まれた美しいデザイン。

デザインを最優先してしまうと、機能や価格、品質を犠牲にしなくてはいけない場面も出てくる。そのため、彼らのものづくりは機能面を第一に考えて進められることが多い。

この姿勢を貫き、不遇な時代に生み出されたグリル台「ユニセラ」やマルチクッキングセット「fan5DX」、焚き火台の名作「ファイアグリル」などは、現在も人気が衰えないロングセラーとなった。

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
ユニフレームを代表する製品「ファイアグリル」も、冬の時代に生まれた製品のひとつ。

ユニフレームの姿勢が分かりやすく現れた製品といえば、1998年の発売以来、今も形が変わらないファイアグリルだろう。

当時の焚き火台といえば、頑丈で曲がらないことを売りにしたものが多く、どれも重くて扱いにくいものだった。そこで「軽量で使いやすい焚き火台」として作られたのが、この焚き火台だ。

変な力をかけるとフレームは曲がってしまうほど薄い。しかし、曲がることを前提に力を受け流す設計がされている。アイデア次第で、軽くても頑丈なものを作れるという発想の転換が広く受け入れられ、今では一番人気の商品となっている。


工芸品ではなく工業製品を作る

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
アウトドアブランドは数あれど、良いものを安く大量に作ることができるのはひと握りだ。

ちなみに、ユニフレームのスタッフは、自社製品のことを「工業製品」と評することが印象的だ。これは、良いものを安く大量に作ることができることに誇りを持っているから。しかも国内生産での話だから恐れ入る。

「良いものを安く大量に作るために、我々は金型や加工機に投資をしております。構造や加工方法はそのために選んでいるので、シンプルな造りで特殊な素材も使っていません。壊れにくく、長持ちするのにはシンプルな構造のほうがいいのです」。

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト
近年はフィールドでも自宅でも併用できるラインナップが拡充中。ガス台でも使える羽釜は最近のヒット作。

そう聞いてカタログを開くと15~20年クラスのヒット商品が多いことに気が付く。素材や技術の進化による新しいアイデアはもちろん取り入れているが、昔も今も根本的に売れるもの、求められるものは変わっていないそうだ。

つまり、20年後もきっとあなたが必要とする道具は変わらないはず。この春にギアを見直すならば、20年後の自分を想像して選んでみよう。

あなたはデザインで選ぶ? それとも機能で選ぶ?

日本のアウトドア好きのために。20年後にも使える「ユニフレーム」のプロダクト

[問い合わせ]
新越ワークス ユニフレーム事業部
03-3264-8311
www.uniflame.co.jp

「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

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池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真

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