僕らがデニムの魅力に取り憑かれた、1980年代後半から’90年代。「渋カジ」「アメカジ」などデニムを中心としたファッションが街に溢れていた。
その頃、モデルから俳優へと転身し、スターダムにのし上がった反町隆史。彼の着こなすデニムスタイルはワイルドかつ自由で、“男臭さ”が眩しく映った。あれから、25年余。年齢とともにたくさんの経験を重ね、いくつものトレンドを通り抜けながら、僕らはずっとデニムをはき続けている。
今でも、デニムが好きだ。そして、やっぱりあの男も。
反町隆史、オーシャンズ初登場。大人のデニムスタイルを体現する。
シンプルなシャツとの組み合わせこそ、格好いい。
10代でモデルとして活躍し、20代で俳優デビュー。一躍、国民的スターになった。
「モデル時代から20代にかけて、本当によくデニムをはいていましたね。デニムとの出合いは、中学時代に流行ったケミカルウォッシュ(笑)。それからリーバイスの501に移って、アメカジブームだった’90年代にはブーツカットとかをはいていました。その後はビッグメゾンのデニム、たとえばトム・フォードがデザインしていた頃のグッチとかも好きで、何本か持っていましたね。20代後半、いちばん多いときで100本くらい手元にあったんじゃないかな」。

そして、今冬、反町隆史は45歳を迎える。すらりとした体躯と強い光を放つ目力はそのままに、2人の愛娘を持つ父らしく、逞しさと包容力を漂わせる大人の男になった。かつてはオーダーメイドのレザーブーツにさまざまなデニムを合わせて楽しんできたというが、心惹かれるデニムスタイルも徐々に変化してきたという。
「最近はキャンプや釣りなどアウトドアを楽しむことが多いから、以前ほど数を持っているわけじゃありませんが、相変わらずデニムは好きですね。よくはくのは、形がきれいでスタンダードなデニムが中心。年齢を重ね、いろんなファッションやトレンドを経験してきた今だからこそ、シンプルなシャツやTシャツで潔くデニムをはくのが、格好いいなと思います」。

「役作りや体力維持も兼ねて、今も体づくりは意識して続けていますが、トレーニング方法が変わってきましたね。闇雲に筋肉をつけるのではなく、目指すのは、動けるシャープな体。特に背面を重点的に鍛えると、洋服が似合う体になってくる気がします」。
シンプルなシャツにデニムという組み合わせが、無駄のない体にすっと馴染む。
上品で渋い大人の色。今、「茶色」が僕の“気分”です。
今回、撮影で着用したもののうち、特に気に入ったのはデニムに茶のジャケットを合わせたコーディネイトだそう。
「今、茶が僕の気分。普段、デニムに茶系のタートルセーターを合わせたりしています。こういった落ち着きあるジャケットスタイルなら、レストランなどでも違和感ないですよね」。

「昔は今と違って“所詮デニム”という感じが強かったから、仕事の現場にはいていくと『デニムで来るなよ』って先輩やスタッフによく叱られていたんですよ。でも、今は合わせるものさえ気を使えば、ほとんどの場所で受け入れてもらえる」。
柔らかな質感のジャケットとタートルネックで、茶のグラデーションが完成。デニムが秋の空気を纏う。
目指すのは、ベーシックかつ上質なデニムスタイル。

「小さいときは娘ともよくキャンプに行きましたけど、中学生になって、さすがに最近は機会が減りました。少しずつ手が離れていくのはさみしいような気もするけど、まあ、友達と遊ぶほうが楽しいだろうし。自分自身もそうだったから仕方ないよね(笑)」。
大人の色香が立ち上る、レザージャケットにデニムというベーシックな組み合わせ。こんな素敵なパパなら、きっと娘も自慢できるに違いない。
レザージャケットに合わせたのは、お気に入りのブランド、A.P.C.のデニム。
「はき込んだユーズドのデニムをブランドが買い取り、リペアして改めて販売するというバトラープログラムがA.P.C.にはあって。僕が数年前に購入したデニムも、誰かが20年ほどかけて、育てた1本。シルエットがきれいで色落ちも良く、かなり気に入っています」。
今後、デニムに合わせてみたいアイテムについてたずねると、「紺のポロシャツ」と即答。
「紺って日本人には似合いづらいけど、やっぱりいちばん格好いい色だと僕は思う。それをデニムと合わせてうまく着こなせたらいいな、と」。
かつては街の喧騒を愛した若者も、今では「自然の中で家族や仲間と目にする朝焼けや夕焼け、そこで交わす会話などが最高の贅沢」と語る、大人の男に変貌した。価値観と同じように、デニムとの付き合い方も次の次元へ。
「着こなし方は年とともに変わっても、やっぱりデニムは僕にとって欠かせない存在。ベーシックで上質なスタイルを追求しながら、好きなデニムと一生付き合っていきたいですね」。
平郡政宏=写真 村上忠正=スタイリング INOMATA(&’ management)=ヘアメイク いなもあきこ=文