「猫背を治そう!」と一念発起。

背筋がまっすぐになるよう意識したり、毎日筋トレに励んだり、いろいろ頑張ってみるのだが、一向に改善の兆しが見えず、結局挫折……。

そんな経験を持つ人は少なくないはずだ。

これまでのべ2万人の姿勢を治してきた猫背矯正マイスターの小林篤史先生は「背筋を伸ばすことを意識するだけでは治りません」と断言する。

じゃあどうすればいいんだろうか。小林先生、猫背治療の真実を教えてください!

話を聞いたのはこの人!
2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背...の画像はこちら >>


姿勢の意識や筋トレでは猫背は治らない⁉

──そもそも猫背って悪いものですか?

猫背とは猫のように背骨が丸くなってしまう姿勢のことです。

見た目の印象が良くないだけでなく、背骨や筋肉に余計な負担がかかることで、肩や首のコリ、頭痛、眼精疲労、腰痛、膝痛、便秘、自律神経失調症(イライラ、めまい、倦怠感、不眠)、うつなど不調の原因になります。

──そんなに多くの症状が(汗)。猫背に悩む人はみんな「努力しても治らない」と口を揃えます。

猫背に悩むほとんどの人は、意識して姿勢を良くする、つまり、丸まった背中を伸ばし続けることにトライするんです。

でも、ちょっと気を緩めると、すぐに猫背に戻ってしまう。それは筋肉や骨格が長年固定された猫背の状態を記憶しているため、楽に感じるから。だから、いくら頑張って意識しても、すぐにもとに戻ってしまうんです。

2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背が治らないワケ」

──えーっ! よく胸を張ったり、肩甲骨を寄せたりするエクササイズがいいと聞きますが、どうですか?

猫背を大別すると、「背中全体が丸くなる」「肩が前に出る」「顔が前に出る」「それらの複合タイプ」という4つのタイプに分けられます。

胸を張ったり、肩甲骨を寄せたりするエクササイズはそれぞれのタイプの目立つ特徴を手っ取り早く改善しようとするものにすぎないため、根本的な解決にはならないんです。

──じゃあ筋トレは効果的ですか? 背中を鍛えれば、姿勢を矯正できる気もするんですが。

筋力の低下も猫背の一因ですが、背中の筋力がついたからといって猫背が改善するとはかぎりません

猫背で丸くなった筋肉は弱っているどころか、発達して盛りあがっている場合もあります。猫背の形に形状記憶された筋肉をさらに鍛えても、猫背が良くなるわけがありません。


猫背の原因は上半身の土台と呼ばれるアノ部分

2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背が治らないワケ」

──たしかに筋肉質なのに猫背という人もいますね……。では、原因はどこに?

ズバリ、背骨を支えている「骨盤」です。骨盤は上半身の土台というべき部分で、上半身と下半身のバランスを保ったり、内臓や生殖器を守ったり、大切な役割を果たしています。

しかも、体の中心にあるため、非常に多くの筋肉がついており、筋肉同士がバランスをとることで骨盤を正しい位置にキープしています。

この点がとても重要で、骨盤の前側と後ろ側の筋肉がバランスをとることで、骨盤はまっすぐ立つことができているんです。ところが、長時間のデスクワークやイスの座り方の癖、運動不足、心理的な要因(自信がない・不安)などによって、このバランスが崩れてしまうことがあるんです。

2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背が治らないワケ」
長時間椅子に座っていると、このように背中が丸まってしまう人が多いが、これは骨盤のバランスが崩れている状態だ。

──骨盤のバランスが崩れると、グラグラしてしまいますね。

体はどこかが出たら、バランスをとるためにどこかが引っ込むようになっています。骨盤が前へ傾くと、お腹が前に出て、お尻は後ろに突き出されるような格好になります。

姿勢がいい人の場合、S字カーブを描く背骨は腰の腰椎のあたりで前に少し反っているんですが、骨盤の前傾により、その反りが強くなって、いわゆる反り腰になってしまいます。

腰の反りが強くなると、体はバランスをとるために背中が丸まりやすくなります。下半身にも影響があり、脚は内股気味になり、太もも前面の筋肉が縮んで硬くなる傾向にあります。

──骨盤が後傾する場合はどうですか?

骨盤が後ろへ傾くと、腰が丸くなり、お尻が引っ込みます。上半身は背中全体が丸くなり、肩が前に出やすくなります。脚はガニ股気味になり、膝も曲がったままです。

太ももの後ろ側の筋肉が縮んで硬くなりやすいのも特徴です。骨盤の後傾は高齢者に多く、お尻の筋肉が落ちることが主な理由です。


骨盤の前傾と後傾は、お尻でチェック

──そうだったのか! 自分が前傾か後傾かどうかを確かめるにはどうすれば?

お尻に注目してください。立ち姿を横から見たときに、お尻が出ているか、引っ込んでいるか。お尻が出ていれば前傾タイプ。出ていない人は後傾タイプになります。

正しい立ち方も、お尻を意識するだけ。

前傾タイプの人は下腹に力を入れてお尻を引っ込めて、後傾タイプの人はお尻を突き出すようなイメージで立てば、骨盤がまっすぐ立ちます。

2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背が治らないワケ」
左が骨盤前傾、右が骨盤後傾の状態だ。骨盤前傾は、働き盛りの男女に多いという。

──つまり、骨盤の前傾・後傾が猫背の主な原因というわけですか……。

そうなんです。丸くなった背中や前に出た顔・肩といった猫背の典型的な特徴も、骨盤の前傾・後傾が原因です。それぞれの部分だけに対応するエクササイズを続けても、根本的な原因である骨盤の傾きが修正されないかぎり、猫背の改善にはつながりません。猫背を治す秘訣は骨盤にアプローチすることです。

そのために私が推奨しているのが、骨盤を整えるストレッチです。骨盤と股関節には多くの筋肉がついていて、骨盤が傾けば、それらの筋肉も緩んだり、緊張したりしています。

こうした骨格や筋肉などが固まりきっていなければ、ストレッチで骨盤の位置を整えるだけで、猫背が改善する可能性が十分あります。

 


【番外編】骨盤のバランスが崩れにくいイスの座り方

──ストレッチを教えていただく前に、正しいイスの座り方を知りたいです。長時間のデスクワークで猫背気味なもので……。

いちばん大切なのはお尻の穴がまっすぐに下を向いているかどうかを意識すること。

これだけで骨盤がまっすぐ立ちます。背面にはもたれないようにしてください。

2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背が治らないワケ」

パソコンで作業をしている場合は両脇を閉めて、左右の前腕を机の上に置くようにすると正しい姿勢をキープしやすいです。デスクは無理なく腕を置ける高さのものを選びましょう。

2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背が治らないワケ」

イスの座面の高さは両足が軽く踏ん張れるくらいがベスト。

また、座面の奥行きが長すぎると、骨盤が後傾しがちになるので注意が必要です。座面の硬さは柔らかすぎても、硬すぎても、骨盤が傾きやすくなるので、程よい硬さのものを選びましょう。

2万人の姿勢を矯正してきたゴッドハンドが語る「頑張っても猫背が治らないワケ」

ちなみにスマホを見るときは、スマホを持っている腕の脇に片手を入れて支えるようにすると、首が前に出るのを防げるので、姿勢が崩れにくくなります。

これらの姿勢は、ポイントを意識するだけで誰でも簡単にできるので、デスクワークで猫背が気になる場合は、ぜひ取り入れてみてください。面倒な方は、私が紹介するストレッチを行うといいでしょう。

 猫背の根本的な原因は骨盤の傾きにあり、骨盤を整えることが改善の近道だった。次回は、1回たった10秒で骨盤が整うという小林先生秘伝のストレッチをレクチャーする。

【取材協力】
宮前まちの整骨院
住所:神奈川県川崎市宮前区宮前平3-12-3 B-125
営業:9:00~20:30、水曜9:00~12:00、14:00~15:00、土・祝日8:30~18:00
定休日:第一水曜日午後
www.machino119.com

 

押条良太=取材・文

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