「Camp Gear Note」とは……
半世紀以上にわたり、兵庫県でバケツや湯たんぽを作ってきた金属加工メーカー「尾上製作所」。前編では、彼らがキャンプギアを手掛けるにいたった理由に触れた。
後編では、初代BBQコンロから派生し続けてきた魅力的なラインナップと、その特徴を紹介しよう。
折り畳み式の焚き火台とピザオーブンが定番商品

大小さまざまな形状で展開するBBQコンロに加え、折り畳み式の焚き火台も尾上製作所を代表する定番のひとつ。
サイズは35cm四方で適度な深さがあるので、絶妙に市販の薪の収まりが良く、灰受けの穴から空気が取り込まれるので、燃焼効率も高い。
脚と灰受けを折り畳んで本体に収納し、厚さ5cmのコンパクトな形に収納できるのもうれしいポイントだ。
さらに、拡張性の高さも見逃せない。

例えば、上の写真のようにテーブルで焚き火を囲んでリビングスペースを作ったり、同社のトライポッドと組み合わせて焚き火調理に使ったり。
風防の付いたグリル台「ファイアグリルP-35」(別売)を載せれば、焚き火を利用したキッチンにもなる。
これは尾上製作所のギア全般に共通する特徴だが、ひとつの道具が使い方次第で何役も兼ねるようにデザインされている。
彼らにとって、焚き火台=火を焚くためだけの道具には止まらないのだ。

コンロと組み合わせて使うピザオーブンもロングセラー商品のひとつ。炭火の上にピザストーン付きのオーブンを置いてしまおうという、大胆かつ画期的なアイデア商品だ。
これを使えば、市販のピザでもカリッと焼き上がり、ワンランク上の本格ピザに早変わり。オーブンとしても使えるので、BBQで作れる料理の幅がグッと広がる。
もうひとつ、忘れてはいけない定番商品がある。「湯たんぽ」だ。

寒いキャンプの夜には、寝る前にこれを寝袋の中に入れて寝床を温めておくだけで幸せな眠りをもたらす魔法の道具。
クラシックなギアだが一度使ったら手放せなくなる。長く売れているものには理由があるのだ。しかもカバーなしなら、わずか1280円とお財布にも優しい。
シックな“鉄もの”が最近の売れ筋だ

近年の売れ筋は、シンプルで武骨な印象のガッチリとした鉄製品だそう。
まず紹介したいのが、「マルチファイアテーブルⅡ」。こちらも御多分に漏れず、使い方の自由度が高い。
単体でも使える4枚のテーブルは、それぞれ小さなジョイントパーツが付いていて、連結時に固定できる仕組みになっている。
焚き火を囲むように配置するもよし。四角く大きなテーブルにするもよし。縦長のテーブルにするもよし。
もうひとつ“マルチ”の名を冠した商品が、こちらのハンガー。

柱となるアングルパイル+フック付きハンガー+固定用のピンというシンプルなセットなのだが、この組み方のバリエーションが実に多彩。
上の2枚の写真は、組み合わせ方のほんの一例に過ぎない。別売りの拡張パーツやテーブルの天板、焚き火台などと組み合わせて、自分だけの使い方をクリエイトしてみよう。
「#尾上製作所マルチハンガー」で検索すると、ユーザーの創意工夫を覗き見できるぞ。
使い方だけでなく、カスタムだって自由にしてもらおうという発想

新製品に目を移してみよう。
「パンチングサイドテーブル」は、パンチングボードに差し込む板の位置や枚数次第で、棚やフックを自在に設計できるラック。
前出のマルチファイアテーブルやマルチハンガーを組み合わせて同じように使える拡張パーツも展開している。
使用例は公式ウェブサイトをご覧いただきたい。

この「マルチスタンドplus」もシンプルで、使い道が多い注目商品。
天板は下で火を焚いてゴトク的に使えるほど熱に強いため、熱々のダッチオーブンを載せるなんて使い方をしてもビクともしない。上述のマルチファイアテーブルと連結させて使うこともできる。
また、足が緩いと感じたら自分で簡単に調整することも可能。これもシンプルな構造だからこそなせる技だろう。
最後に、独特な形状の焚き火台「CAMBi(キャンビ)」も紹介しよう。

よく見ていただければ気が付くとおり、尾上製作所のアイデンティティであるバケツをベースに作られている商品だ。国産にこだわり、戦国時代のかがり火をイメージして設計されたそう。
脚の長さが調整できるので、かがり火のように焚いてもいいし、低くして網を載せて焚き火料理をしてもいい。炭の火おこし用のファイアスターターとしても使える、これまたマルチな焚き火台だ。
このように、尾上製作所のギアはどれも汎用性が高く、シンプルなのが特徴である。
製品によっては塗装がされていないトタン素材剥き出しのものもあるが、あえてそうすることによって可能な限り値段を抑えている。
「塗装を外注に出すと値段が上がってしまう。
尾上製作所のギアは、使い方やカスタムなど、手に入れてから自分色に染められる余白が残っていることも魅力なのだ。さて、あなたならどう使う?

[問い合わせ]
尾上製作所
079-232-1261
www.onoess.co.jp
「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る
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池田 圭=取材・文 矢島慎一=写真