連載「実現可能か!? 俺の週末・軽井沢ライフ」
’80~’90sに青春をすごした男にとって、軽井沢は特別な場所である。かつて避暑地として一世を風靡した、緑深くも都会的なその土地に、憧れを抱かずにいられない。

そんな場所に、拠点がつくれるとしたら……! 今回は、週末・軽井沢ライフの魅力とハードルを考えるための基礎知識を紹介。

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東京から家族を連れて、車を走らせること2時間半。目的地は、雄大な自然に囲まれた「もうひとつの家」。緑に囲まれながらも都会的に過ごす週末は、妻も子供も大喜びするに違いない。

しかし、拠点をつくるとなれば、理想ばかりを見つけるわけにはいかないもの。実現するためにはいろいろな懸念点はある。

話を伺ったのは、軽井沢と首都圏で不動産業を営む「軽井沢コンサル」の金山城太郎さん。軽井沢観光協会の理事も務める先輩に、ヒト・カネ・暮らしの3つの視点から教えてもらった。

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「ヒト」:移住者・二拠点居住者は増加傾向。立地と別荘文化が人を呼び込む

最初のポイントは「ヒト」。これから付き合いを深くする土地ならば、どんな人がいるか、どんな人が拠点を置いているのかは押さえておきたい。

「地方の町村の多くは人口減に悩まされています。

もちろん、若い人たちが都会へ出る傾向にあるのは、軽井沢も変わりません。ただ、軽井沢市の人口は2005年の1万7000人から、2017年には1万9000人へと増加。週末だけ訪れる人も多いですが、この土地を気に入って移り住む人もいます」(金山さん、以下同)。

統計上、ここ数年は横ばいになっているとはいえ、地方都市での人口増は将来を占うポイント。これには二拠点生活や地方移住の流行もあるが、その立地や、時流の変化も関係している。

「富裕層しか週末移住できない、というのはもう変わりましたね。もちろん、懐に余裕のある企業の部課長クラスや公務員の家庭は多いです。けれど、軽井沢エリアだと1000万円、北軽井沢エリアなどなら400~500万円で買える格安の物件もあるので、一般的な会社員の家庭も増えている。東京まで1時間という地の利を生かし、新幹線通勤するケースもあります」。

週末・軽井沢ライフを夢見るなら。ヒト・カネ・暮らしで考える実現性


さらに、金山さんは歴史を踏まえたその風土にも触れた。

「古くから別荘文化があり、人の出入りには慣れています。下手に干渉しないし、引き際をわきまえた都会のコミュニケーションを身につけている。

かといって冷たいわけでもなく、移住者に対してもウェルカムです」。

地域の活動は盛んなため、青年団、消防団などのボランティア活動に参加する地元民は多い。移住すればコミュニティへの参加は必要だろうが、二拠点生活先としては適度な距離感で過ごせそうだ。そして、多様な働き方を推奨する時流に合わせようとする動きも始まっている。

「7月には『軽井沢リゾートテレワーク協会』も設立され、コワーキングスペースなども増えていく見込み。現状、自由の利く自営業の人が特別多いわけではありませんが、今後は増えていきそうです」。


「カネ」:別荘でも、価格はピンキリ。まずはお試し生活を数万円からはじめてみる

静かな週末を送る拠点としては打ってつけの軽井沢だが、もちろん「おカネの壁」が立ちふさがる。夢の別荘地ではあるが、その分だけ先立つものが必要なはず。別荘以外の拠点も含めその選択肢を考えてみよう。

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いわゆる高級別荘地の中にある物件。アメリカ式の住宅構造を採用した、時価2400万円の別荘。

まずは週末生活の拠点となる別荘だ。相場感はまさにピンからキリまで。

いわゆる軽井沢エリアだと富裕層向けの億越え物件のほか、3000万円前後の物件、さらに安価な1000万円の物件が相場だ。

「軽井沢における物件の相場は、駅からの距離ではなく、エリアによって大きく変動します。例えば、社会的ステータスの象徴でもある旧軽井沢の鹿島の森付近は、億越え物件もゴロゴロしている。逆に、住所としては群馬県に当たる北軽井沢エリアでは、一気に400~500万円ほどの低価格に。隣駅の中軽井沢はよりローカルな場所なのでいわゆる別荘よりも、地元の人が住むような物件があります。物件数は相当なものなので、予算に応じて十分選ぶことができますよ」。

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都内を中心に活躍するFLATHOUSE設計の貸別荘。レンタルは、1棟3.6万円〜/日。[問い合わせ]ARICA(http://vr.aricajapan.com/index.html)

続いて、貸別荘という選択肢も。これはオーナーの利用していない期間、別荘を日単位や月単位で貸し出すサービス。相場感は1日あたり4万~8万円、1カ月あたり10万円~と、週末・軽井沢ライフのお試しにちょうどいい。週末ごとで宿を変えてみる、そんな使い方も面白い。

週末・軽井沢ライフを夢見るなら。ヒト・カネ・暮らしで考える実現性
日本一のキャンプ場と言われる「北軽井沢 スウィートグラス」。行き届いた施設と、キャンプ場内でオリジナルイベントが催されるのも魅力。

そのほか、万全のサービスを求めるならホテル、アウトドア派にはキャンプなど、別荘にこだわらず自分のスタイルで拠点を用意するのも手。“週末を軽井沢で過ごす”ということを軸とすれば、歴史ある別荘地だけあり、宿泊地には事欠かないのはうれしい。

好きなスタイルを選ぶことはできる。


「暮らし」:鮮やかな四季に囲まれ、趣味を存分に楽しむ生活を。

ヒトとカネ、シビアなことばかり触れてきたが、実際の軽井沢での暮らしはどんなものだろう? その楽しみ方を教えてもらった。

「東京での趣味をそのまま軽井沢に持ち込む人は多いですね。澄んだ風を浴びながら、読書やスポーツに没頭する。その楽しさはひと味もふた味も違います。ジョギングやトレッキングはもちろん、軽井沢にはゴルフ場からスキー場、大型のスポーツジム、プール、ボルダリングジムまで揃っています」。

自然豊かな土地だけあって、季節ごとの景観も魅力だ。

「春は桜やコブシの芽吹き、夏は生命力のある力強い緑。秋には紅葉にはじまり、徐々にカラマツなどの黄色い葉も色づいていく。空気の澄み渡る冬には、満開の星空も広がります。季節の表情を楽しむのは、軽井沢ライフの醍醐味ですね」。

週末・軽井沢ライフを夢見るなら。ヒト・カネ・暮らしで考える実現性

さらに、観光地や地方にありがちな生活全般の利便性にはこう言及する。

「軽井沢って、いわゆる地方の不便さが少ないんです。大型スーパーやアウトレット、家電量販店もある。飲食店にしても、お馴染みのチェーン店から東京の名店まで軒を連ねている。地元民から別荘族までさまざまな人の住む地域なので、お店も自然と多様化しています」。

観光地ゆえに交通上の混雑はあるものの、駅周辺や旧軽井沢のメインストリートを外れれば、閑静な別荘地が広がる。その居心地の良さからか、地域に馴染めずに離れていく人は少ないという。ただ、実際にオールシーズンを通して通う場所という意味でいえば、注意点も存在する。

「クルマ移動中心の生活になるので、注意したいのは冬の雪。幹線道路は除雪を行われますが、交通量の少ない脇道は自分たちで除雪作業をしないといけません。一方で、かつての『軽井沢=避暑地』だった時代と異なり、通年楽しむ人が増えた影響もあり、別荘自体の暖房設備は強化されている。屋内では快適に過ごせると思います」。

軽井沢=セレブの別荘地。そんな旧来のイメージは保ちつつも、この土地は変わりつつある。夢の軽井沢ライフ、勇気とお金の余裕はもちろん必要不可欠だが、いまなら“自分ごと”として視野に入れることができそうだ。

澤田聖司=撮影 佐藤宇紘=取材・文

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