軽自動車よりパワフルで、2、3人で出かけるくらいなら十分、それでいてどんな狭い道や小さなパーキングでも困らない。男性にも女性にも、新社会人にも親世代にも人気がある「コンパクトカー」。
だからこそ、街中で被る率も高し。なるべく特別な、人と違うコンパクトカーを狙うなら、こんな4台はどうだろう。
■ポルシェ的趣味を持つ「トゥインゴ」
愛くるしいマスクやスタイルが女性のハートを射止めているトゥインゴ。
しかし、実はポルシェ911と同じくリアにエンジンを置いて後輪を駆動させる、今どきのコンパクトカーとしては特異な構造。それもあって一部のマジな車好きにもブッ刺さっている。
200km/hなんて出さなくても、80km/hも出せば思わず笑みがこぼれるリーズナブルなファン・トゥ・ドライブが楽しめるのだ。

メインは0.9Lターボに6速DEC(2ペダルMT)の組みあわせだが、「走りが楽しめなきゃ」というこだわり派には、エンジンの隅々、ガソリン一滴まで味わい尽くせる1L自然吸気×5速MT車もある。
ターボの付かない自然吸気エンジンにマニュアルトランスミッションの組みあわせなんて、現行型ポルシェ911でも最高速度318km/hのスペシャルモデル・GT3くらいだ。

もちろん、こっちはサーキットなんて走らなくても、街角を曲がるだけで楽しい。そういえばルパン三世が乗っている旧型チンクエチェントもRR(リアエンジン・リア駆動)じゃないか。
こういう小さなRR車でエンジンをぶんぶん回して走るのは、怪盗じゃない普通のとっつぁんである我々でもめちゃくちゃ楽しいはず!
■ギャップの美学「DS 3クロスバックE-TENSE」

そのゴシック調なデザインに、まずは「何、これ?」と周囲から注目が集まる。
しかもサービスエリアでスーッと急速充電器の前に止まれば「え、電気自動車なの?」とまたまた驚かれる。それがDS 3クロスバックE-TENSEなのだ。

DSというブランドはプジョー・シトロエングループの中でも未来的で、エレガンスで、アバンギャルドなブランド。
その最小コンパクトカーがDS 3クロスバックであり、その電気自動車ver.がE-TENSE。

誰もが知っている高級車を乗り回すのは野暮だと思うなら、きっとこの車の魅力がわかるだろう。
小さいのに、ドアに近づくだけで隠れていたドアノブがスッと現れ、乗り込めばダッシュボードやドアの内張に採用された、エレガントな本革のインテリアに驚く。
小さくてもラグジュアリー。ゴシック調なのに電気自動車。ギャップが魅力になるのは、人も車も同じである。
■マッチョな「限定パンダ クロス4×4」

チンクエチェントが万人に愛される見た目に振ったコンパクトカーだとするならば、パンダは実用性に振ったモデル。
そのパンダに度々追加されるのが、ほぼ必ず6速MTが組み合わされる4WDモデル、なかでも最近続けて販売されているのがパンダ クロス4×4だ。ポップな見た目で、中身は硬派。

何しろ0.9Lの2気筒自然吸気エンジンを6速MTで操る楽しさがある。これはほかの車ではなかなか味わえない。
最高出力なんて85psと軽自動車の64psよりちょっと高いだけにもかかわらず、バツグンに気持ち良く、自動車評論家たちにもすこぶるウケがいい。

もちろん肝心の4WD機能にも抜かりはなく、普段は前輪を駆動させ状況に応じて瞬時に後輪も駆動させてくれる。
パンダの母国・イタリアなら北部にあるアルプス山脈の麓を、こいつで雪煙を上げながら走るのがオツ。日本なら、視線を浴びながら走れる愉悦を、この一台はくれるだろう。
■ヨーロッパが詰まった特別な「スイフト」

日本では軽自動車のイメージが強いスズキだが、海外ではスイフトをはじめコンパクトカーメーカーとして知られている。
なかでも同社初の世界戦略車として2000年に登場した初代スイフトは、ヨーロッパで人気のラリー(ジュニア世界ラリー選手権)に参戦したこともありよく知られている一台だ。

2004年に登場した2代目のときはヨーロッパに開発拠点が置かれ、アウトバーンなど向こうの道を走り倒して開発された。
こうした知見をもとに、2016年に登場した現行型は地元静岡県内の工場で生産されている。ヨーロッパでのノウハウと、ジャパンクオリティが融合した車なのだ。

このスイフトのスポーツバージョンがスイフトスポーツ。
全長はノーマルと同じ4mに満たないサイズなのに、全幅は1735mmのため3ナンバーになる。実はこれ、5ナンバーサイズなんて規制のないヨーロッパサイズ。つまりスイフトスポーツはヨーロッパ用ボディが与えられているのだ。
加えて専用のエンジンチューンや足回りが与えられている。6速MTと6速AT、どちらも楽しい。スイフトの中でも特別な一台がスイフトスポーツ。小さなボディにみっちりヨーロッパ風味が詰まっている。
籠島康弘=文