東京都心から東へ約90km。千葉県一宮町でウェルネスライフを送っているのが、フォトグラファー、アートディレクターのMACHIOさんである。
なぜ一宮町だったのか?移住を決意したきっかけは?詳しく伺った。
波乗りをしながら創作活動を続けたい
MACHIO●1975年生まれ。フォトグラファー、アートディレクター。ビーチライフスタイルマガジン「HONEY」やロンハーマンのアートディレクションおよび撮影をはじめ、多彩なジャンルで活躍する。奥さまと娘さん、そして13歳のポップと保護犬のチップという2頭の犬と暮らす。
東京五輪のサーフィン競技会場となる釣ヶ崎海岸を擁するここ一宮町。海はもちろん、里山の自然も多く残る美しい町だ。
「海の近くで波乗りをしながら創作活動を続けたいと思い、3年前に代官山から移住しました。車でも電車でも1時間ちょっと。東京から決して遠すぎない、絶妙な距離感がいいんですよ」。
また移住者に対して比較的オープンな土地柄だとも感じているという。古くから別荘地・保養地として親しまれてきた歴史と、近年サーフタウンとして多くのゲストを迎え入れてきたホスピタリティ。
そんな町の成り立ちが包容力あるムードをつくり出しているのかもしれない。

MACHIOさんがサーフィンを楽しむのは主に朝。ポイントまでは車で5~10分という抜群の環境である。
さて移住を考えているサーフ好きの同世代にとって、ひとつ聞きたい点があると思う。それは家族の意見。奥さまは、ずばり移住についてどう考えていたのだろうか。
「妻は東京生まれですから、きっと東京暮らしが合っていたと思うんです。でも乗馬場の馬や、海辺を散歩する犬たちがいる風景は魅力的で、子育ての環境も抜群。何より妻は、今のこの家をとても気に入ってくれました。ただ移住のことに限らず、私がやりたいことに妻が合わせてくれる場合が多いと思います(笑)」。
食生活と車選びは独自のガイドラインで

食生活は野菜中心。この日はたまにオーダーするというビストロ料理だ。バーニャカウダ、アスパラガスのソテー、白身魚のグリル。渋谷の「ヴァンテオ」から届いた、気取らないが食欲をそそる料理の数々である。
「美味しいですよ。僕と同じ静岡県浜松出身の友人が経営している店。高校生の頃からの友人で、波乗り仲間でもあります」。

さてMACHIOさんは5年前から肉を食べなくなったとか。その心境にいたるまでには紆余曲折といっていい経緯がある。
「もともと肉は好きでした。ただ馬肉はかわいそうで食べられなかったんです。時おり『馬はかわいそうだから食べない。でも牛や豚は食べていいのか?』と疑問を感じるようになりました。その後鶏肉も含め、すべての肉を食べるのをやめたんです」。
そして「食べるために自分の手で命を奪うことができるものだけ、食べる」という結論にいたった。

また食生活同様、MACHIOさんらしさを感じるのが車の選択。
「サーファーというのはポイントの目の前にでも住んでいない限り、波を求めて常に車で移動しているような人種です。フォトグラファーも似た部分がある。どこかで“環境を汚染しながら生活しているのではないか”という罪悪感がありました」。

少しでも環境改善の一助になればという思いで、クリーンエネルギー、すなわち電気自動車であるテスラをチョイス。一方のメルセデスには「一台の車を長く大事に乗りたい」という思いが込められている。テスラがテクノロジーなら、メルセデスはヴィンテージという視点だ。
「でも今は車も含め、環境問題に対する考え方が自分の中で変わってきています。それでも大量生産、大量消費が良くないと思う気持ちは変わらないので、今はこの2台を大切に乗り続けていきたいです」。
自分らしく生きるために追求し、挑戦し続ける

こう書いていると「なんて意識が高く、なんてストイックな人なんだ!」というイメージを与えてしまうかもしれない。でも実際の人柄は逆の印象。いつも笑みを絶やさず柔らかい物腰で、こちらをリラックスさせてくれるのがMACHIOさんという人物。
「実はもうすぐ引っ越します。自分から発信するクリエイティブなプロジェクトを実現させるために、浜松に拠点を移して。
グラフィックや写真などのアート作品、紙やデジタルのメディアなどを通じて、このプロジェクトを発信します。もちろん何をやるにしても、好きなサーフィンは軸として持ち続けたいですね」。

サーフィン、食事、環境問題、そして創作活動のこと。MACHIOさんは自身のウェルネスライフについて、ずっと自問自答を繰り返してきたのだと思う。
誰が見ても素敵だと感じる今の生活も、MACHIOさんにとっては決して完成形ではなく道の途中。これからもきっと、自分らしくより良く生きることは何かを追求していくのだろう。
「こうして自分のことを話していると、常に葛藤を抱えながら生きてきた気がしますね。行ったり来たりを繰り返しながら、いつも答えを模索しているような。
サーフィンも写真もそうですが、僕は何か追求し続けられるもの、挑戦し続けられるものが好きなのかもしれません」。
朴 玉順(CUBE)、山本雄生、山城昌俊、鈴木泰之、宮前良将(Seven Bros. Pictures)、Rip Zinger=写真 水嶋和恵(La Plage)=ディレクション 加瀬友重、菊地 亮=編集・文 小山内 隆、押条良太(押条事務所)、髙村将司=文 FLUX CONDITIONINGS、MALIBU PYRAMID HOUSE、LIBERTYHILL CLUB=撮影協力