「愛しのパタゴニア バギーズ・ショーツ」とは……
パタゴニアのバギーズ愛好家の愛用品や着こなし、言葉から、その引力の源を探る本企画。今回はスタイリストの菊池陽之介さんにフォーカス。
バギーズを街に溶け込ませたモノトーンスタイル
「カラバリ、柄バリの豊富さはバギーズの魅力。ただ、街との親和性を考えたら……」と、2年前に手に取ったのが黒。パタゴニアのバギーズのなかでは少々控えめな部類だが、「いい大人にとっては丁度いい」と菊池さんも絶賛愛用中である。
「パタゴニアらしい鮮烈な色もいいのですが、街ではしゃぐ年でもないですからね(笑)。ほかのアイテムも黒系でまとめています」。
一方で、重い印象にならないよう、「トップに細ピッチのボーダー柄を加え、抜け感を添えることで黒の緊張を緩和しました」と菊池さん。そのうえ合わせたバギーズは5インチと短め。そのため、全体をダークにまとめていてもどこか軽やかに映る。

「丈は膝上が基本。スタイルのいい方ならまだしも、僕の場合、もうスタンダードなおじさん体型ですから(笑)。
短めにはくと裾と足先に距離が出て、スマートな印象に仕上がるんです。逆に短か過ぎるとスポーティさや幼さが目についてしまうので、やや下げてはくのがベストですね」。
海の近くに住みだしたことが契機に
古着ブームの頃からバギーズの存在は認識していたが、当時はその脇を素通りしていたという菊池さん。
「周りで古着のバギーズをはいている人は結構いましたから、だからこそ手を出してこなかったのかもしれませんね。
だが、とある日常の変化で強く意識し始めることになる。

「海の近くに住むようになってからですかね。海の近くに住んでいる人にとって、パタゴニアはより身近な存在だと感じます。
個人的に感化された部分もあって、7~8年ほど前に初めてバギーズを買いました。それがサーモンピンクのコレ。休日を海で過ごしたり、釣りへ行くときにはきたくなるんですよね、この色。焼けた肌にもよく映えるんです」。

「このパープルは、3年くらい前に購入した山専用のショーツ。いい大人が“色モノ”に手を出すのは少々ハードルが高いと思われがちですけど、意外に落ち着いた紫は使いやすいですよ。発色のいいゴアテックスのマウンパなんかとも相性抜群ですね」。
もはやその存在はあのアメリカントラッドの雄

菊池さんは、パタゴニアとの距離が近づいたことで、ここ最近実感していることがある。
「10~20代の頃、古着屋に並んでいるアウトドアブランドのアイテムは、すべてローテクなものとして捉えていました。でも今、アウトドア系のアイテムは基本的にハイテク。それでもパタゴニアは、多少のアップデートはあっても不変で、幅広い層から求められていることに驚きます」。
これを菊池さんは「まさにポロ ラルフ ローレンのよう」と言う……その心は?
「時代の変化に対応しながら、古き佳きアメリカントラッドをベースは崩さずに揺るがない世界を作り上げている。
それもあってか、ラルフのカタログや広告は、過去の写真を見ても古さを感じませんよね。その王道感や普遍性がパタゴニアにもあるんです」。
菊池家では、夏を迎えると奥様や子供たちも思い思いのバギーズを楽しんでいる。つまり、家族ぐるみの付き合いだ。その事実もまた、バギーズの魅力の一端を表しているといえよう。
「愛しのパタゴニア バギーズ・ショーツ」とは……
夏の大本命にして大定番、パタゴニアのバギーズ・ショーツ。誕生から約40年、その輝きは増すばかりだが、世のバギーズ・ラバーズはどう着こなしているのか。
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山本 大=写真 菊地 亮=取材・文