デビュー25周年を迎えたシンガーソングライターの山崎まさよしさんにインタビュー!

FUN-TIMEについてはもちろん、最近話題になっているDIYに関することや、アーティストとしてのこれまで、これからについて語ってもらった。

 


DIYをしているときが何よりも楽しい!

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「ちょっとだけでいいんですか?」。

撮影中に「ちょっとだけ笑顔をください」とフォトグラファーがお願いすると、山崎は冒頭の言葉をぼそりと呟き、大きな目をキョロキョロとさせながらフフフッと小さく笑う。

掴みどころがない力の抜けた佇まいには色気と優しさが伴い、その雰囲気はメディアを通じて見る姿そのまま。いるだけでほっこりとした空気が生まれる。そしてどの質問に対してもゆっくりと考え、思いを咀嚼しながら自らの言葉で語る。

趣味はDIY。今年から自身のYouTubeのチャンネルで『クラフトパパ』をスタートさせるほどの熱の入れよう。そこに話が及ぶと、「楽しいですね」と改めて相好を崩す。

「楽しいからといって、別にずっとニコニコしているわけではないですが、DIYをやっている時間は無心になれると言いますか。そもそも昔から自分でものを作ることが好きでして。カホンという座って演奏する箱状の打楽器があるのですが、それを作ったこともあります」。

「少しでも明るい風景」デビュー25周年の山崎まさよしさんが今伝えたいこと

また、DIY以外でのFUN-TIMEは酒を飲んでいるとき。プライベートスタジオには酒を常備しているそうで、酒を飲みながら楽曲制作をするのかと思いきや……。

「基本的に曲を作っている間は飲まないです。

ただ、諦めたときにはもちろん飲みますが。『もう無理!』これ以上は進まないなと思ったときは(笑)。特に深夜になるとウイスキーを飲むことが多いです。

飲んでいるときにたまたま歌詞やメロディーを思いつくこともありますが、酔った状態で殴り書きでコードやフレーズをメモっているから、次の日見たら『これ何やろ?』って(笑)。酩酊状態からは名曲は生まれません」。

山崎といえば、Tシャツやデニムを使ったアメカジファッションの印象が強い。「ファッションに関しては疎いので……」と、頭をポリポリと掻きながら申し訳なさそうに答える。

「デビュー当時にお世話になったプロデューサーが、デニムやスカジャン、アロハシャツなどの古着が好きで、昔は言われるがまま着せられていたと言ったらおかしいですが……、よく着ていました。もちろん今は好きで着ていますが。

当時は正直、そういった服の魅力が全然わかりませんでした。あのときは本当に無頓着で10枚で数百円みたいな、洗濯機に入れたら全部溶けるんちゃうかなって思うくらいの服しか着ていませんでしたから(笑)」。


コロナ禍収束、明るい未来……『STEREO 3』に込めた想い

「少しでも明るい風景」デビュー25周年の山崎まさよしさんが今伝えたいこと

そんなデビューから25周年を締めくくる、メモリアルアルバム『STEREO 3』をつい先日リリースした。10曲中8曲を書き下ろしているが、制作する際はいつもとは違う意識の持ちようだったという。

     

「やはり今がコロナ禍であるという現実は、避けられませんでした。こういった閉塞した状況から何とか抜け出したい、またこれから時代を受け継いでいく子供たちの未来のために、少しでも抜けの良い明るい風景を見せてあげたいという気持ちは強く持って制作に臨みました。

今回の楽曲の中で“とにかく前に進もう”という感じの歌詞が多いのは、そういう意味が含まれています」。

7曲目に収録されている『斉藤さん』は、“もうそうさ どんな風に思われたって構やしない”“誰に迷惑がかかる訳でも無い どうとでも言え”など、反骨的な歌詞をベースにロックな楽曲に仕上げている。だがよく見ると、歌詞の中に『斉藤さん』というワードがひと言も出てこない。

一見すると突拍子もないが、いかにも山崎らしい自由な制作姿勢と楽曲との向き合い方。「歌っていて、ひょんなことからできたりするから面白いです」と、どこか人ごとのよう。

「『斉藤さん』って、実は斉藤和義くんなんです(笑)。これはDIYが好きだっていう歌なのですが、彼も今DIYにハマっているので仮タイトルを『斉藤さん』にしていて……。でもそのまま使うことにしました。あ、もちろん本人には了承を得ています」。

9月25日(土)にデビュー26周年目に入る。

今の率直な感想を訊ねた。すると「そうですねえ……」と、腕組みをしながらしばらく黙考したあと、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

「まずここまで続けてこられたのは、曲を聴いてくれているファンの皆さんがいてくれたから。すごくありがたいです。あとはいつもサポートをしてくれるスタッフのおかげでもあり、感謝しています。

僕自身は大したことはしていません。それこそ、いきなりDIYに興味を持ったりして、自由に楽しくやらせてもらっているだけですから。これからもミュージシャンとして、また趣味でも迷惑をかけない範囲で何かに没頭するなど、世の中に対してアプローチをしていけたらいいなと思います」。

「少しでも明るい風景」デビュー25周年の山崎まさよしさんが今伝えたいこと

今年12月で50歳になる。若いときに想像していた50歳と、今の自身を比較して思うことはと訊ねると、「酒を飲んでクダを巻いているのかなって思っていました。ただ当たらずといえども遠からずと言いますか、近いことにはなっていると思います」と、あの笑顔で語る。

さらに、年齢を重ねたことで気付いたことがあると続ける。

「力を抜くということです。やっぱりライヴをするにも体力がいるんです。

昔は力を入れてガーッと歌ったら、周りが納得してくれると勘違いしていたのですが、最近は、同じように声を出すにしてもギターを弾くにしても、ブラブラブラ~ってするというか、とにかく力を抜く。そのぶん、本当に力を入れるべきところではインパクトをちゃんと出すという、そういうふうになってきました。

“酔拳”みたいな感じっていうか……。あれっ違うかな。例えがちょっとおかしいかもしれませんが、気持ち的にはそんな感じと言いますか」。

最後に、ミュージシャンとしての今後の夢について訊くと「ないんです」。その理由を静かに語る。

「これまでの人生で新曲をリリースすること、アルバムを出すこと、それによってライヴができることというのが夢の連続みたいなもので、既に経験させてもらっているので特にないんです。

強いて言えば、先ほども話したようにコロナ禍の収束です。人類というのが、今の情勢をどれほど克服できる集合体であるかということを夢見ています。

それと同じく子供の成長、あとあわよくばDIYで素晴らしい作品ができたりとか、そういうことです」。

インタビューは終了していたが、大好きなDIY以外に、最近気になっていることがないか雑談交じりに訊いてみると。

「先日、庭師さんにお願いして自宅の庭をきれいにしてもらって作業風景を見ていたのですが、どこまで切っていいのかとか、剪定のテクニックが全然わからないんです。

いつか自分でもできるようになりたいと思っているので、樹木についてもっと知識を深めていきたいです。DIYにも似ていそうですし、今かなり気になっています。木だけに……(笑)」。

再び大きな目をキョロキョロとさせ、フフフッと小さく笑い席を立つ。周囲をほっこりとさせるあの笑顔と空気を残して……。

 


山崎まさよしの10問10答

「少しでも明るい風景」デビュー25周年の山崎まさよしさんが今伝えたいこと

Q1. 今欲しいものは何ですか?
ヒマ。

Q2. 昔モテようとしてやっていたけど、今思うと勘違いだったことは?
音楽。「今思うと勘違いでもなかったかも……!?」。

Q3. アーティストとして普段から心がけていることは?
常にアンテナを張っているフリをする。

「ちょっと俺、変わっているぞ」みたいな(笑)。

Q4. 大人になったと思う瞬間はどんなとき?
領収書をもらうとき。

Q5. 毎日欠かさないことは?
朝コーヒーを飲んでチョコレートを食べること。

Q6. ゲン担ぎはしますか?
手首は気の流れがあるそうで、最近腕時計をしています。昔、当時所属した事務所社長からいただいたロレックスのサブマリーナ。

Q7. 自身の人生に見出しをつけるなら?
行き当たりばったり。

Q8. 最後の晩餐で食べたいものは?
かっぱえびせん。

Q9. 一日が3時間増えたら何をしたいですか?
映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を途中まで観る。あれ4時間近くあるんで……(笑)。

Q10. カラダのためにしていることは?
ストレッチポールで肩甲骨をほぐしたり、前屈したりする程度で、そのほかは不健康の塊です。

 

山崎まさよし●1971年生まれ、滋賀県出身。’95年にデビューし、今年は25周年メモリアルイヤーの集大成として、2年ぶりのオリジナルアルバムとなる『STEREO 3』が発売中。

山本雄生=写真 宮崎まどか=スタイリング 島 徹郎 =ヘアメイク オオサワ系=文

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