2016年に名車「ディフェンダー」の生産が終了した際、大いに落胆した人も多いだろう。

イギリスの大手石油化学メーカー「イネオス」の会長、ジム・ラトクリフ氏もそのひとり。

ただラトクリフ氏のその後の行動は、普通の人とは違った。

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ご存知の通り、2世代目となる現行型ディフェンダーの発売が2019年に発表されるのだが、ラトクリフ氏はそれよりも前の2017年2月に「ディフェンダーに代わる本格派オフローダーを作る!」と宣言したのだ。

そして今年、写真の「グレナディア」が完成した。

ラトクリフ氏は宣言とともに子会社「イネオス・オートモティブ」を設立。CEOに、フォードやフォルクスワーゲン、ベントレー、ジャガー・ランドローバーなどで腕を鳴らしたダーク・ハイルマン氏を据えた。

旧型ディフェンダー好きの大富豪が本気で作った「グレナディア」のスペック解説
ルーフの荷物を固定するためのバーがルーフ横に用意されている。背面ドアは30/70の分割式で、小さいドアだけを開けての出し入れが可能。

またパートナーとして、マグナシュタイヤー社を招聘。同社といえば、かつてメルセデス・ベンツとゲレンデヴァーゲンを作り、今では世界中の自動車メーカーと車を開発。最近ではソニーの電気自動車を手掛けたことで有名だ。

そもそもラトクリフ氏は一代でイネオス社をイギリス屈指の石油化学メーカーにまで成長させた人物。最近では石油メジャーの一角、イギリスBP社から石油化学部門を買収したことが話題となった。総資産約3兆円とも言われる、イギリスの大富豪だ。

旧型ディフェンダー好きの大富豪が本気で作った「グレナディア」のスペック解説
ドアはヒンジむき出し。積載量は最大1トンまで、3.5トンの牽引力を備えている。下り坂でステアリング操作に集中できるヒルディセントアシスト機能など、オフロード走行に便利な機能も備わる。

同氏の率いるイネオス社は、セーリングやサッカーなどスポーツのスポンサーであり、中でもツール・ド・フランスでのチーム・イネオスの活躍は有名。

またF1の常勝チームであるメルセデス・AMGのスポンサーも務めている。

そんな「イギリスで最も稼いでる男」とも呼ばれるラトクリフ氏は、この新型の本格オフローダー、グレナディアに数億ドル投資する用意があるとした。

世界中の探検家や農業従事者、オフロード愛好家、もちろん従来のディフェンダーファンをターゲットにしている。

見た目がクラシカルなだけでなく、伝統的なオフローダーの構造であるラダーフレームを採用。現行型ディフェンダーがいくら技術革新によって強固なモノコックボディとしたとはいえ、オフロードでのタフさや修理の容易さが求められる(同氏の言う)本格派オフローダーにはラダーフレームは欠かせないようだ。

旧型ディフェンダー好きの大富豪が本気で作った「グレナディア」のスペック解説
シートは水拭きができるレカロ製シート。床は水抜き栓のあるラバーフローリング。だからこんな風に川を渡ってもへちゃらだ。

さらにエンジンはBMWから3Lターボと3Lディーゼルツインターボが供給され、トランスミッションは欧州メーカーの多くが採用しているZF社製の8速ATを用いるとしている。

旧型ディフェンダー好きの大富豪が本気で作った「グレナディア」のスペック解説
液晶パネルがメインの今どきの車とは逆バリの、スイッチたっぷりで男心をそそるコックピット。手袋でも簡単に操作でき、イギリス製なので右ハンドルも用意されている。

もちろん前後のデフロック機構も備えた4WDを搭載。電動化が進むこの時代、現行型ディフェンダーにもPHEVモデルが追加されると言われている中で、あえて内燃機関を選択していることにもラトクリフ氏のこだわりが見てとれる。

旧型ディフェンダー好きの大富豪が本気で作った「グレナディア」のスペック解説
飛行機のように天井にもスイッチがずらり。左右に脱着式のガラスルーフを備えることもできる。

現時点では5人乗りの乗用タイプと、2人乗りの商用タイプがあり、ダブルキャブのピックアップトラックも構想にあるようだ。

ピックアップトラック以外は2021年9月からすでに予約が始まっていて、2022年7月から販売が開始される予定。

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左からメルセデス・ベンツ ゲレンデヴァーゲン、トヨタFJ40、グレナディア、初代ランドローバー、ウィリス・ジープ。グレナディアのプロジェクト立ち上げ時にこれらの名車を手に入れ、参考にしたらしい。

懐古主義といえばそれまでだが、それの何が悪いのか? と言わんばかりのグレナディア。

今後の電動化への動きを考えると、フォルム的にもスペック的にもこんな車はもう登場しないかもしれない。

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籠島康弘=文

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