「数年前からヴィンテージのロレックスが気になって、まずは定番中の定番から押さえようということで『サブマリーナー』を買ってみたんです。
1960年代後半の個体で現行モデルと比べるとだいぶスッキリした印象なのですが、それでも大きく感じるようになって……。
そう話すのはアヤメ デザイナーの今泉 悠さんだ。
近頃、高級時計の世界では小径モデルの注目度が高まっているが、ヴィンテージを見渡すと該当するものがより多く見つかる。
今泉悠さんが行きつけの店ですすめてもらったのが、33mm径の「エアキング」だった。

「サイズ感がとても新鮮に思えて即決でしたね。この時計はドレスウォッチのような感覚で着けることが多いです。娘の学校の行事でスーツを着る機会が増えていて、コイツの出番がやってきます」。
生まれ年に製造された「エクスプローラー」は、手持ちの時計で最も着用頻度が高い大のお気に入りだ。

「正直、この一本さえあれば、ほとんど事足りてしまうのですが、なんだかんだでほかの時計も着けたくなる(笑)。
たとえば、金ボタンが付いた紺ブレなら、靴と革小物の色を合わせるような感覚で、手に入れたばかりのコンビケースの『デイトジャスト』を合わせたいですね」。

吟味しながら一本ずつ買い揃えていくうちに、いつしか時計は今泉さんのファッションに欠かせない存在として日常に馴染んでいった。
「メガネもそうですが、時計はその人の印象を決定づけるアイテム。仕事柄、服装も時計も自由に選べるので、会う人を不快にさせないセレクトを心がけています。
さらに、最近は同じような服装になりがちなので、そんなときはあえて時計を着け替えてみるんです。そうすると不思議なもので、また違ったコーディネイトに見えてきて、新鮮な気持ちになれる。
本来は時刻を知るための道具なのですが、時計ってそういう自分自身の気分をいい方向に変化させてくれるものだと思うんですよね」。
品田健人=写真 戸叶庸之=取材・文