かく語る『スラムダンク』●映画公開も控えたバスケ漫画の金字塔『スラムダンク』。作品の持つエネルギーは凄まじく、それは時に人生を左右するほどの影響力を持つ。

実際に触発され、全国区へ駆け上がったオーシャンズ世代の同志はこの漫画をどう読んだのか。男たちは、かく語る。

連載終了から25年が経った今もなお、同作に魅せられている大人は多い。彼らに共通しているのは、人生に大切な“なにか”を学んだということだ。

第1回目のゲストは、自身のYouTubeチャンネルでも取り上げるほどに『スラムダンク』への思い入れが強いサンシャイン池崎さん。

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日陰の道を歩んできたこの男も、今では太陽のような存在としてお茶の間を照らしている。その奥には『スラムダンク』の確かな教えがあった。サンシャイン池崎、『スラムダンク』をかく語る。


不良(ワル)への憧れを内に秘めた少年時代

どうも、サンシャイン池崎です!

『スラムダンク』を知ったのは、実は漫画ではなくアニメ。テーマ曲も良かったですし、序盤のバイオレンスパートも刺激的でしたよね。

どこかヤンキーマンガのようなヒリヒリとした展開。少年漫画にありがちな、絵がデフォルメされた描写ではなく、リアルだったので余計過激に感じました

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓
『スラムダンク』新装再編版全巻購入で、応募者全員にプレゼントされた県大会“決戦前夜”特大ポスター。サンシャイン池崎さんの自宅に大切に飾られているそう。

その中心にいたのが宮城と三井。

僕の中でやはり彼らは特別ですね。子供の頃の僕はおとなしい子でしたから、ワルならではの格好良さへの憧れがあったんでしょうね。

主人公は桜木花道で、ゴリも流川もストーリーの中軸的なキャラじゃないですか。その中にあって、宮城と三井って最高のバイプレーヤーだと思うんですよ。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓
『スラムダンク』(22巻)

僕らが学生の頃って、よくボストン型のスポーツバッグを持ち歩いたじゃないですか。そこに部活の道具なんか入れたりして。僕は宮城の影響で、それを頭に引っ掛けながら部活に行ってましたから。まぁ、卓球部だったんですけどね。

宮城、いいんだよな~。大人になって読み返すと彩子さんの可愛さにも気付いて、余計宮城の気持ちが分かるようになりましたもん(笑)。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓
『スラムダンク』(9巻)

えっ!? 普通すぎるって? そんなん、前フリに決まってるじゃないですか!

僕の本命は三浦台高校主将の村雨です!!(笑)。

わかります? 村雨。

桜木のダンクを頭に食らったやつです。そう。こんなふうに。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓


「怯まない心」を湘北メンバーに学ぶ

好きなシーンをあげるとするならば、対山王戦のワンシーンですね

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓
『スラムダンク』(31巻)

三井はもうギリギリの体力でプレーしてるんですよね。それで宮城からパスをもらい、ワンフェイクを入れて、山王工業の松本からファールを受けながらも3ポイントシュートを決めるんです。

ただ、僕がブルッとくるのはその後

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓
『スラムダンク』(31巻)

シーンが湘北のベンチに切り替わり、1年生部員の石井健太郎が泣きながら「ぐひっ…ぐひん~~~っ 湘北に入ってよかった……」と口にするシーンですよ!

石井くんって、おそらく3年間スタメンで出ることは叶わないようなキャラじゃないですか。そんな彼が「湘北に入ってよかった」と泣きながら口にしている。きっと、心底思ってるんだと思います。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓
石井くんに自身を重ね、涙ぐむサンシャイン池崎さん。

陽の当らない子が言うからこそすごく刺さるんですよね。僕も中学時代に所属した卓球部では二軍、三軍生活を過ごしましたから、なんとなく分かるんですよ。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓

そう考えると、僕の人生は陽の当たる場所をほとんど歩いてこなかったですね。

逆境に次ぐ逆境の連続というか。だからこそ、もともと弱小チームだった湘北に共感するのかもしれません。

今も山王戦前夜のようにブルってしまう夜を過ごすことだってありますよ。ダウンタウンさんとの仕事の前夜もそうだし、R-1グランプリやガキ使のときもそうだったな~。震えてましたもん(笑)。

でも、湘北メンバーは格上にどんどん立ち向かうわけじゃないですか。その諦めの悪さというかね

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やっぱり諦めない気持ちは大事だと思うんですよ。僕も芸人をやってるんで、売れてないときとかは、売れてるやつ、山王みたいなやつらを「テンションで倒してやる!」みたいな気持ちはありました

「関係ねーんだ!」って。「俺の培ってきたパワーでぶっ倒す!」みたいなね

自分でも気づかないうちに湘北メンバーの背中から怯まない心は学んでいたかもしれないですね。

彼らも山王に怯まなかったですもんね。「ワルモノ見参!!」って。

そういう魂は、今後も大事にしていきたいと思いますね。


サンシャイン池崎が選ぶスターティングメンバーは?

湘北メンバーのような気持ちはずっと持っていたいんですけど、お笑いでいったらワタナベエンターテインメント(サンシャイン池崎さん所属の事務所)は湘北じゃないんだよな~、やっぱ。

当然、吉本興業さんは山王工業じゃないですか。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓

ワタナベはね~……陵南でもないし、海南でもない。どちらかというと愛和学院ですかね。ちょっとキラキラした感じ(笑)。

湘北はどこでしょうね……。グレープカンパニーさんかな~(笑)。やっぱり少数精鋭だし、サンドイッチマンさん、永野さんに、今はカミナリや東京ホテイソンも出てきて。

うん、グレープカンパニーさんで決まりです! 湘北バスケ部を支えてきた赤木と小暮のような存在のサンドさんがいて勢いのある若手が縦横無尽に駆け巡るみたいな(笑)。

え、最後に僕が考えうるベストメンバーですか? そうですね~……。

ガードは越野ですかね、ガッツあるし。あとは彦一も出します。石井くんも出して、あとは湘北の角田……。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓
『スラムダンク』(11巻)

実は角田ってすごいと思いますよ。対翔陽戦、桜木が5ファールで退場になり、三井もガス欠でコートを去った。主力ふたりを欠いた中、残り1分50秒ですからね。

最後は湘北が勝ちますけど、それでも2点差ですし。そして、よく見ると残り1分50秒からスコアが変わってないんですよ。

ということは、花形たち競合を相手に、ゴール下でカクが耐えてるってことじゃないですか。

カクがいなかったら全国に行けてなかったかもしれないですよね。いい仕事をしたと思いますよ。

で、残るひとりは当然決まってるじゃないですか。村雨です(笑)。

日陰者だったサンシャイン池崎が『スラムダンク』から学んだ教訓

さすが、2万本シュートならぬ「1万回ジャスティス」を自身のYouTubeでやってのけた空前絶後の男、サンシャイン池崎さん。その視点は独特である。ただ、内に秘めた想いは芸風同様、実にアツかった!

 

佐藤ゆたか=写真 菊地 亮=取材・文

出典:『スラムダンク』井上雄彦著/集英社刊

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