
2000年にスタートした太田エロティック・マンガ賞は、エロティシズムをベースに独創的、刺激的、官能的な作品を募集するコンテスト。同賞をきっかけに、これまで中村明日美子、松本藍、シモダアサミなど多くの漫画家がデビューしており、審査委員長は『レッド』『分校の人たち』の山本直樹が務めている。山本の講評が発表されるのも大きな特徴だ。
今回エロティクス賞に選ばれた『夜の私を歩く場所』について山本は、
「それほどエロではないんだけど、会話の場面が、登場人物同士のやりとりにとどまらず、読者との対話という点まで含めてちゃんと成立していました」
「夜に歩いているうちに予測のつかない展開がどんどん出てくる、その突拍子のなさだけでも読ませるところが面白い」(講評より一部抜粋)
と、絶賛。優秀賞には『自殺旅行』(海岸亭)、奨励賞には『永くても春』(みん_(奥田成美)~~)と『もも缶3』(楽gaki)の2作品が選ばれた。
山本は総評で、「『ダイアローグ(対話)』と『モノローグ(独り言)』」という課題をあげ、
「登場人物同士が会話している場面でも、実際は作者の『独り言』としか伝わってこない作品がとても多かった」
「マンガの面白いところは、読んでいるうちに線で描かれたキャラが実際に話したり感情が動いてるように見えてくることだから、作者の『独り言』では読者に全然響いてこない」