インターネット広告が登場したのが1990年代。それから20年あまりのうちに、「インターネット広告なんて」と施策から切り離されていたところから、「インターネット広告も」と存在価値を認められる時代へ。
そんなデジタルマーケティング史を軸に、広告にまつわるテクノロジーや当時の社会情勢など30年分の「知っておくべき」がこれ一冊にギュッと詰まっています!
インターネットユーザーの欲望が生み出したインターネット広告
新しいテクノロジーに驚き興奮し、このテクノロジーを使いこなしたいという欲望を抱いたインターネットユーザーたち。さらにWindows95、初代iMacという製品で市場を席巻したマイクロソフトやアップル等のIT企業を中心に発展してきたインターネットの世界ですが、「ここに人が集まってきているのだから、広告枠を作って広告費を取れば、ビジネスになり、収入を得られる。そうすれば自分たちのインターネット環境を維持・向上できるのでは?」と考える人が出てきました。
そのようにして登場したのが「バナー広告」です。世界では1994年に、『Wired』のデジタル版だった「Hot Wired」に掲載したAT&T等の企業の広告が、後に史上初のバナー広告として知られるようになります。
日本でも、1996年に「Yahoo! Japan」がサービスを開始し、バナー広告を取り扱い始めました。人が集まるところには、必ずそこを広告メディアとして使いたいというニーズが出てきます。インターネットユーザーの増加にともなって、インターネットに広告メディアが生まれる土壌ができていったのです。
1996年には、電通とソフトバンクの共同事業としてサイバー・コミュニケーションズ(現CARTA COMMUNICATIONS)が、そして博報堂、アサツー ディ・ケイ、読売広告社、アイアンドエス・ビービーディオー、デジタルガレージ、徳間書店の共同出資でデジタル・アドバタイジング・コンソーシアムも設立されました。これら2社は設立当初からYahoo!やマイクロソフトのインターネット広告を取り扱いました。

さらに1999年、任意団体として「インターネット広告推進協議会(現 JIAA:日本インタラクティブ広告協会)」が設立されました。媒体社、広告代理店等インターネット広告に関わる企業が集まり、ガイドライン策定・調査研究・普及啓発等の活動を始めました。これにより、バナーサイズ等サイトによってバラバラだった広告企画が標準化され、さらにインターネット広告の活用の手間が減りました。一気に産業として拡大していったインターネット広告市場でしたが、歴史がとても浅かったこともあり、インターネットを信頼される広告メディアとして発展させたいという欲望の表れだったのではないでしょうか。
しかし、90年代後半の日本は、バブル崩壊により広告予算が減っていたとはいえ、依然としてテレビCMを中心とするマス広告が圧倒的に重要視され、力を持っていた時代です。テレビCMで商品やサービスに対する話題や注目を獲得し、売り場に向かわせ、割引やおまけ等のプロモーショングッズで刈り取るという設計が定石でした。
当時のインターネットは、日本の多くの企業にとって実験的な場であり、先進的な企業に見せるための手段にすぎず、広告出稿されたとしても、既存の広告クリエイティブ画像をそのままウェブページに貼り付けるだけ、というものがほとんどでした。
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本書では、1990年代後半から現在にかけてのインターネット広告の変遷を具体例と共に解説しています。
Credit:
森永真弓