外食はやっぱり楽しい。子連れでの外食は、子供にとっても新しい食べ物との出会いがあり、発見が多い。
子供にも大人気
以前、当連載の「子連れ外食」という回で、家族連れにとってのファミレスのありがたさや、コロナ禍を経ての2年ぶりの外食として、一家で「スシロー」へ行ったことなどを書かせてもらった。また「ぼこちゃん、カルビ焼き肉を好きになる」という回では、練馬区の富士見台という街にある焼肉の名店「牛蔵」へ行き、その日から娘が、すっかりカルビ好きになってしまったという話も書いた。
最近は、主にチェーン店が多くはあるけれど、家族で外へ食事に行く機会も少しずつ増えてきた。家での晩酌はもちろん楽しい。だけどやっぱり外食は楽しいなぁと、その喜びを噛み締めている。なにより、いつもと違う環境を娘が楽しみ、その場のノリで新しいものを食べることによって好きなものが増えていくのは、親としても嬉しいことだ。
とりわけありがたいのは、たとえば「サイゼリヤ」の存在。もはやその存在を知らない人はいないんじゃないかというくらい大人気の、イタリアンチェーン。もちろん僕も、特に“酒場”として考えたときのサイゼリヤが大好きで、毎回そのリーズナブルさと美味しさに感動している。
家族で行くときの定番は、妻は好物のパスタをなにか一皿ということが多く、僕はその日の気分によってう~んう~んと悩むのが、毎度楽しい。一軍はやはり「辛味チキン」と、最近“ペコリーノ”要素が加わってリニューアルした「柔らか青豆とペコリーノチーズの温サラダ」だ(以前は「柔らか青豆の温サラダ」だった)。比較的お腹が空いていれば「半熟卵のミラノ風ドリア」をちびちびつまみにする日もあるし、肉気分の日は「チョリソーとハンバーグの盛合わせ」を単品で頼んだりもする。
え~と、そうそう。そのサイゼリヤに娘を連れて行ったら気に入ってくれ、それ以来何度か家族で訪れているが、娘が特に好きなのが「プチフォッカ」。「もちもちしてておいしい!」と、おかわりまでしたがるほど。それが、1皿に4つのって150円。こんなにありがたいことがあるだろうか。他にも、「おこさまミートソーススパゲッティ」や「カリッとポテト」あたりは定番で、「もうおなかいっぱい」となってほんの少し残したそれらに、粉チーズやタバスコをかけて最後のつまみにするのは、僕の密かな楽しみだ。お腹がいっぱいだったはずなのに、デザートの「イタリアンジェラート」を、嬉しそうにばくばく食べている娘を眺めながら。
「しゃぶ葉」との出会いの衝撃
そしてもうひとつ、最近の超特大ヒット、もはや我が家のアンセムと言っていいチェーン店が存在する。それが「しゃぶ葉」だ。
ご存知だろうか? 「ガスト」や「ジョナサン」や「バーミヤン」などを運営する「すかいらーく」系列の、しゃぶしゃぶ食べ放題をメインとしたファミリーレストラン。
システムは、ランチとディナーで値段が異なり、当然ランチのほうがお得。しかもランチは、土日祝日は80分の時間制だが、平日は、11時のオープンからランチタイム終了の16時まで、時間無制限なのがすごすぎる。計算上、5時間しゃぶしゃぶを食べ続けてもいいというわけだ。我が家では基本的にランチ利用がメインなので、今回はランチに限定した話をさせてもらう。
コースは、2023年1月現在、税込み3299円の「海鮮&国産牛1皿付き イベリコ豚&アンガス牛食べ放題コース」が最高級品。なんと、海老やかにやホタテがセットになった豪華海鮮皿つきだ。それから「国産牛 食べ放題コース」「イベリコ豚&アンガス牛 食べ放題コース」ときて、続いていわゆる基本コース。1979円の「牛&豚 食べ放題コース」、1759円の「牛&豚 食べ放題コース」、1539円の「豚バラ 食べ放題コース」となる。
我が家の場合、家族で行くときは「牛&豚 食べ放題コース」。さらに告白すると、ある日、どうにもたまらずひとりで行ってしまったこともあるんだけど、そんな際は最安の「豚バラ 食べ放題コース」でじゅうぶんだ。だって、僕が肉のなかでいちばん好きな豚ばら肉が食べ放題なんだから。しかも信じられないことに、コース名には含まれていない「鶏肉」も食べ放題。せっかく食べ放題なのに表記しないなんてもったいない! と思ってしまうが、そこにまた、しゃぶ葉の余裕を感じる。
肉たっぷりのカレーまで
先述のとおり、娘はカルビ肉を好きになったのをきっかけに、一気にいろいろな肉を食べらるようになった。なかでも「牛&豚 食べ放題」コースに含まれる牛肉と豚のロース肉は好きで、すき焼きも好きなので、だしのひとつは「本格すき焼きだし」を選ぶ。あ、そうそう、しゃぶ葉の鍋は仕切りでふたつに分かれていて、6種類のなかから2種類を選べるのだ。さらに、追加料金を支払えば、4つ割りの鍋に4種のだしを選ぶこともできる。「鶏がら醤油だし」「柚子塩だし」「白だし」「きのこだし」「赤チゲ味噌だし」どれもこれも魅力的なので、毎回迷う。
で、娘にはすき焼きだしで煮込んだ牛肉や豚肉、白いごはんやうどん、最近食べられるようになった豆腐や、野菜のなかでは苦手でないほうのにんじん、かぼちゃなどを、火の通ったものからあげてゆく。
たれも薬味も種類豊富で、それらを組み合わせるオリジナル要素も楽しい。アルコールは80分間の飲み放題も1319円で用意されているけれど、そもそも絶対に料理で腹いっぱいになるので、僕にはちょっと多すぎる。しかしながら、心配(?)ご無用。他ももちろん手頃ながら、なんと赤と白のグラスワインが、それぞれ1杯109円なのだ。信じられますか?
当然僕より早めにお腹がいっぱいになってしまう娘だが、やはり甘いものは別腹のようで、妻と一緒にわたあめを作ったり、自分で焼けるワッフルの上にチョコソース、チョコチップ、コーンフレーク、きなこをトッピングしたオリジナルメニューを開発したりして、超ごきげん。僕はその様子を眺めつつも、意地汚く、たれや薬味の配合研究をしながら、肉や野菜をここぞとばかりに堪能する。ただし、シメのごはんも中華麺もうどんも食べ放題なうえ、僕の大好物であるカレーまでが食べ放題なので、余力は残しておきたい。
そう、しゃぶ葉のカレーが、これまためちゃくちゃうまいのだ! その理由のひとつが、店がら、豊富に用意するさまざまな肉の各部位の端肉が、たっぷりと入っていることにあると想像される。しかも運がいいと、それこそ我々が頼んだコースには含まれていない、国産牛の切れっぱしと思われる肉が入っていたりして、それに当たるともう、陶然。
と、今回は、一体どこが子育てエッセイなんだって内容になってしまったけれど、きっと娘がいなければ、ずっとしゃぶ葉の素晴らしさに気づかずに生きていた気がする。子連れ外食には、けっこうな制限がある一方で、自分の先入観や価値観を広げてくれる可能性もまた、あるものなのだ。
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パリッコ『缶チューハイとベビーカー』次回第25回は、2023年2月3日(金)17時配信予定です。
Credit: 文・イラスト=パリッコ