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コロナのおかげでずいぶん出遅れたが、娘の保育園のお父さんたちと始まった交流も、近頃はもはや地元のマブダチレベルの頻度で遊ぶまでになった。今回はパパ友と子供たちも含め、初めてカラオケに行くことになった。

パパ友と遊びすぎ問題

「初めてのパパ友飲み会」という回で、最近やっと、娘の保育園のクラスメイトのお父さん、お母さんとの交流が始まったことを書いた。コロナのおかげでずいぶん出遅れた関係だったが、その後は順調に進展し、最初は4人で始まったパパ友飲み会も、数日後に開催される予定の回には9人が参加予定だ。以前からの飲み友達などと話すと「自分のときはそういう交流、まったくなかったですね~」なんて言う方も多いので、自分は偶然にも、ずいぶんいい人々に恵まれているのかもしれない。

特に娘がいちばん仲の良いNちゃんのお父さんとは会う機会が多く、先日あった3連休は毎日、さらにその次の土日も2日続けて遊ぶという、もはや地元のマブダチレベルの頻度になっている。もちろん娘も込みで、家に遊びに行かせてもらったり、今季最後と思われる夏祭りに行ったり。ふたりともかなりの酒好きだから、会うたび「昨日は飲みすぎましたね……」がお決まりの挨拶のようになっていて、ほんの1年くらい前には想像もしていなかった状況が、不思議だしおもしろい。

子供と行くカラオケ

ところで、そんななかの一日。その日はもうひとり、友達のIちゃんとそのお父さん(この3人が特に酒飲み)を含め、父娘6人で遊ぼうということになった。理由は単に「ヒマだから」なので、目的地はどこでもよく、ひとまず地元の、子供が遊べるスペースもあるカフェに行こうということに決まった。ところが集まってみると、運悪く臨時休業。こんなとき、我々の住む街は石神井公園が近いのがありがたく、ひとまず公園に向かってみる。

とにかく、3人娘を遊ばせつつ、このあとどうするかを考えなければいけない。そこでいったん、公園に隣接した「旧内田家住宅」へ。ここは、かつて練馬区内の別の場所にあった茅葺き屋根の古民家を移築保存してある場所で、広い邸内で自由に過ごしていいというゆるい施設だ。

子供たちがいろりの周りではしゃぎまわったり、縁側で楽しそうにおしゃべりをしたりしている横で、父親3人は、このあとどうしようかと相談する。するとIちゃんがこちらにやって来て言った。

「からあげいきたい!」

「あ、お腹減った? じゃあ駅前のからあげ屋さんにでも行こうか」と答えると、そうではなくで、どうやら「カラオケ」に行きたいということらしい。

以前子育て経験のある飲み友達と話していて、子供と行くカラオケは盛り上がるという話を聞いていた。それで娘に、「こんどカラオケ行ってみる?」と聞いたこともあったが、「うん! でも、パパとママのまえではおうたうたわない。はずかしいもん」などと答えていた娘。カラオケに連れていったらどうなるんだろう? もちろん全員異論はなく、6人で駅前のカラオケ店に向かうことにした。

娘の反応は……

かつて会社員だった時代、新宿あたりで飲んでいて、2次会カラオケ行こう! なんて流れになり、朝に請求額を聞いて腰が抜けそうになることが多々あった。ところが、日中のカラオケ店は、30分で百数十円とか、逆の意味で腰が抜けそうになるくらい安い。飲み放題システムもあって、それも30分500円程度だそう。2時間いてもひと家族3000円程度。酒の注文を遠慮しなくていいことを考えると、気楽ではある。

というわけで、娘、人生初めてのカラオケに入店。さてどう出るか? と思っていたら、意外にも「『きみにきめた』うたいたい!」と最初からノリノリだ。「きみにきめた」とは、正式名称「1・2・3」という、相変わらず娘がハマっているポケモンのアニメの一時期のオープニングテーマ。さっそく入れてあげると、なんの躊躇もなく一番手で歌い出したのには驚いた。両手でマイクを持ち、必死で画面の歌詞を追いつつ、真剣に歌う娘。その横顔を見ていたら、乳飲児だったころからずいぶん成長したなぁと、やたらと感傷が押し寄せてきてヤバかった。

その後も、ポケモン関連の歌や、これまた好きな「ヒミツのここたま」というアニメ関連の歌などをどんどん歌う娘。アニメで知っているだけだから、2番になると突然つまりだすのもかわいらしい。もちろん他のふたりの女の子も、臆することなく好きな歌を歌いまくる。しかもそれが、我が子よりもずいぶんお姉さんっぽい、アニメ「推しの子」や「ワンピース」のテーマソングだったりして、小さなころから知っている子供たちの成長っぷりに驚かされてばかりだった。

ところで途中、Nちゃんのお父さんが、子供たちのためにとメニューにあった「ポッキー」を頼んだところ、グラスに数本ばかりが入って400円と、けっこうな割高感があって、ひと笑い。で、そのポッキーを運んできてくれた店員さんに僕が、「すみません、娘が基本、麦茶しか飲まないので、持ち込んだものを飲ませてもらってもいいですか?」と聞くと、「はい。

当店は持ち込み自由なんで!」とのこと。そうだったのか! と、Iちゃんのお父さんがすぐ近くの「おかしのまちおか」に買いものに行ってくれ、つまみになるお菓子をいろいろと買ってきてくれた。もちろんラインナップにはポッキーもあって、「さっきのポッキーはなんだったんだ!」と、また笑う。

もちろん、子供たちがいるので無茶な飲みかたはしない。そもそも「カラオケの酒」というものにあまりいいイメージがなかった。けど、普通にいも焼酎のソーダ割りとかが頼めて、僕の会社員時代のころのイメージから比べるとぜんぜんちゃんとしていた。最高じゃないの、昼カラオケ。

けっきょく2時間たっぷり、子供たちは歌を歌いまくり、カラオケが嫌いではないはずの父親たちが歌わせてもらえたのは、ひとり1曲ずつのみ。けれどもその間、我々はのんびりと飲みながら、娘たちの歌う姿を見て、間奏のたびに「うまいねー!」と盛り上がる。

小さな子供たちと行くカラオケ。そこには独特の幸福感があるということを初めて知れて、なんとも楽しく、有意義な時間だった。

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パリッコ『缶チューハイとベビーカー』次回第42回は、2023年10月20日(金)17時配信予定です。

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Credit: 文・イラスト=パリッコ

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