基地の機能強化、周辺の負担増加につながる、という県民の声を無視するような強行配備である。
 米海軍の大型無人偵察機MQ4Cトライトン1機が嘉手納基地に飛来した。
20日夜の着陸では北谷町砂辺で「騒々しい街頭」レベルの71・8デシベルを観測した。
 防衛省は「騒音による影響は限定的」と説明するものの、これまでなかった機体による騒音は、負担の上乗せにほかならない。
 グアムの海軍基地からの移駐で、10月まで2機を嘉手納に一時展開する計画だ。
 17日未明に飛来する予定を取りやめた理由や、もう1機が飛来する時期など不明な点が多い。日本政府がそういった情報を地元に説明しないのも問題である。
 MQ4は高い高度で広い範囲、昨年10月から嘉手納に常時配備のMQ9は低い高度で狭い範囲の海洋を監視する。

 MQ4は嘉手納に常駐する有人のP8哨戒機とセットでの運用を想定している。MQ4が巡回しながら不審船などの目標を絞り込み、P8が引き継いで対処する。
 主に中国を念頭に情報収集や警戒監視を強化する狙いがある。中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海での監視も任務の一つとみられる。
 日米比の軍事協力が進む中、沖縄の米軍基地の役割や機能が強化され、拡大している可能性がある。
 嘉手納では、米軍が23日に6カ月連続のパラシュート降下訓練も実施する見通しだ。

 負担軽減に逆行する動きで、認められない。
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 米紙などによると、MQ4は2018年9月に米カリフォルニア州での試験飛行中にエンジンが停止し、飛行場に胴体着陸した。同年末を予定していた機体配備が1年以上遅れたという。
 防衛省が嘉手納への一時配備を県など関係自治体に通告したのは今月10日である。それからわずか10日後の飛来になるが、過去の事故や原因、再発防止の取り組みなど十分な説明があったと言えない。
 MQ9は18年6月からの約4年間に、海外で4件の墜落を含む7件の事故を起こしていたことが分かった。
この情報も嘉手納への配備後に地元自治体が質問し、沖縄防衛局が回答したものだ。
 県議会では与野党を問わず、不満、反発が広がっている。自民、公明の会派も「住民の理解を得られていない」と沖縄防衛局に配備の再検討を求めている。
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 在日米軍基地への装備品の配備や変更に日本側が口出しできない背景には、1960年の日米安保条約改定の際に結ばれた「事前協議」の取り決めがある。
 解禁された文書などによると、「米軍の装備における重要な変更」で事前協議の対象になるのは核弾頭や中・長距離ミサイルの持ち込み、そのための基地建設だけで、航空機や艦船は対象にならず、米軍任せになっている。
 日本の主権を制限した取り決めが住民の頭越しの配備、政府の主体性のなさを生み出していないか。
事前協議の在り方を見直す必要がある。