危険運転罪の成否が争点だった。
事故は2021年、大分市内で起きた。当時19歳だった被告の男が一般道を走行中、右折車両に衝突。運転していた男性を死亡させたとして危険運転致死罪に問われた。
裁判では、直線道路を走る被告の車両が「進行の制御は困難」だったかどうかが問題とされた。
被告の車は法定速度60キロの3倍を超える猛スピードで走行していた。
大分地裁は判決で、たとえ直線道路であっても、当時の路面の状況などからハンドルやブレーキ操作のわずかなミスで進路を逸脱する可能性があったと指摘。「進行の制御が困難な高速度に当たる」として危険運転と結論付け、懲役8年を言い渡した。
どこまでが「過失運転」で、どこからが「危険運転」かの線引きは曖昧だ。
悪質な自動車運転の処罰の在り方を議論してきた法務省の有識者検討会は27日、呼気や血中のアルコール濃度、走行速度について、一定の数値基準を新設することを報告書にまとめた。
法改正に向けて、今後は法制審議会へ議論を委ねる。より市民感覚に即した適用と厳正な処罰につなげてほしい。
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自動車運転処罰の在り方を巡っては、1999年、東名高速道路で飲酒運転のトラックが乗用車に追突し女児2人が死亡した事故を契機に議論が活発化した。
2001年、刑法に「危険運転致死傷罪」が新設され、14年には刑法から切り離された「自動車運転処罰法」が施行された。処罰の上限は過失の懲役7年に対し危険運転は20年と重い。
だが判断基準は曖昧だ。
福井市で20年、酒気帯び運転し、パトカーの追跡を逃れようと時速約105キロで走行して2人を死傷させた事故が「制御困難とはいえない」として過失となった。
また、いったん過失と認定された後に、危険運転に変更される事案も相次ぐ。
有識者がまとめた報告書では、一定の数値を超過すれば一律に「正常な運転は困難」とすることを想定している。「最高速度の1・5倍や2倍」などとする意見も盛り込まれた。
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大切な人の命を奪った罪の重さを判断する基準が曖昧では、残された者は納得できない。大分の遺族は危険運転致死罪への変更を訴えて署名活動を行い、約2万8千筆を集めた。
今後、一定の基準が示されれば、より客観的な判断が期待できる。一方で、基準から漏れるケースも出てくるだろう。
車社会の沖縄で交通事故は決して人ごとではない。安全運転を徹底し、危険運転に対する意識を一層高めていくことが必要だ。