健康被害の可能性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」について、環境省は代表的なPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)に関する対応の手引きを、自治体へ通達した。
 全国の地下水などからPFASの検出が相次ぎ、懸念が広がっている。
これまでの専門家会議での意見などを踏まえ、2020年6月の初版を更新した。新たに「今後の対応の方向性」を追加したのが特徴だ。
 PFOSとPFOAの合計で1リットル当たり50ナノグラムと定める国の暫定目標値を超えた汚染水を住民が飲まないよう、対策の徹底を呼びかけている。
 関連が報告されている健康影響として、コレステロール値の上昇や、発がん、赤ちゃんの低体重などを挙げた環境省の「Q&A集」を紹介するなど、情報発信に力を入れている。
 一方で、汚染の原因となる「排出源」を特定するための記述が少ない。
 手引きでは、特定の原因によると疑われ、継続性があると判断される場合、「必要に応じて排出源の特定のための調査を実施し、濃度低減のために必要な措置を検討することが考えられる」との表記だ。
 具体性に乏しく、国民の不安からすれば、あまりにも消極的過ぎる。
 汚染のリスクを伝えるだけで、その原因を突き止め、拡大を防ぐ対応を示さないようでは、不十分と言わざるを得ない。
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 県内では、県企業局の本格調査が始まった14年以降でも北谷浄水場の水源となる河川などから高濃度のPFASが検出され、継続性が認められる。
 嘉手納基地や普天間飛行場周辺の河川、地下水からも高濃度のPFASが検出され、県は「米軍基地が汚染源の蓋然(がいぜん)性が高い」と判断し、繰り返し立ち入り調査を求めてきた。
 だが、米軍は日米地位協定を根拠に調査を認めず、日本政府も環境補足協定の要件に該当しない、と歩調を合わせている。
 東京都の横田基地や山口県の岩国基地の周辺でも自治体や市民団体の調査で、地下水などからPFASが検出されている。

 環境省は手引き通達後も米軍基地内の調査には「外務省や防衛省との調整、米側への申し入れの対応を進める」と従来の説明にとどまり、排出源特定の本気度が伝わってこない。
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 国の調査では、全国の水道事業で目標値を超えなかった。ただ、沖縄ではPFASが検出された河川からの取水を制限し、高機能粒状活性炭で浄水するなど抑え込んでいるのが実態だ。
 県はPFAS対策に10年間で80億円以上を見込む。
 米国では飲み水の基準をPFOSとPFOAの各1リットル当たり4ナノグラムと設定するなど厳格化の流れにある。
 環境省も水質管理を強化する方針で、対策費用はさらにかさむ。
 汚染を食い止めるためには排出源の特定は欠かせない。安全な水の提供は国の重要な役割だ。排出源の特定に責任を果たすべきだ。
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