メタバース上に再現された首里劇場に集まった観客と、ステージに立つむぎ(猫)=2024年12月8日
メタバース(インターネット上の仮想空間)で再現された首里劇場(1950年開館、2023年解体)で、シンガー・ソングライターむぎ(猫)のライブ「むぎ(猫)がメタバースにやってくる!にゃー!にゃー!にゃー!」が12月8日に開かれた。主催したのは、撮影や配信のスタジオを運営するG-shelter(浦添市)。
エンタメにおけるメタバースの可能性を語る黒澤佳朗さん=2024年12月8日、浦添市のG-shelter
メタバースとは
インターネットを利用した3次元の仮想空間やサービスのこと。生身の人間がその場に行かなくても臨場感が得られ、新たな体験やビジネスの創出が進みつつある。
G-shelterが提供する エンタメ新体験
メタバース上に再現された首里劇場の入り口。イベント用に飾り付けが施されている=2024年12月8日
自らのアバター(分身となるキャラクター)を操作して、現実世界ではもう見ることのできない首里劇場の外も中も自由に動き回ることができる。その歴史ある舞台上で、むぎ(猫)が身振りを交えて歌ったり、木琴を奏でたりしている。うちわなどのファングッズを手にした観客が、首里劇場を埋め尽くしていた。入り口では、2022年4月に他界した金城政則館長の優しげな姿が客を出迎える
メタバース空間の首里劇場は、デザイナーの平井晋さんによってかねてから設置されていたもの。このイベントでは、現実世界のG-shelterで演奏している音声や動きを、メタバース上の首里劇場にまるで転送しているかのような感覚で届けている。
メタバース空間の観客向けに流すための映像を操作するスタッフ=2024年12月8日、浦添市のG-shelter
この“場所”にいるそれぞれの客のアバターは言わずもがな、一人一人の人間が操作しており、それぞれの視点からそれぞれがコミュニケーションを交わしている。コロナ禍を経て爆発的に普及した「ライブ配信」と「メタバース空間でのライブ」の最大の違いは ここにある。
現実のライブではできない演出も
メタバース上に再現された首里劇場でステージに立つむぎ(猫)=2024年12月8日
この機会に初めてメタバース上のイベントに参加した人も目立った。Xでは「ライブ会場にいる感じがしてすごい」「ジャンプもできたし、手も触れた」などの反応が寄せられた。スマホやパソコン画面でも参加できるが、VRゴーグルなどの機器を使えば、まるで目の前にいるかのような臨場感を味わえる。
メタバースライブでの双方向性と臨場感から、黒澤さんは「お客さんだけではなく、やっている側の満足度も高いです。ライブをしながらお客さんの姿や振る舞い、反応を見ることができるので、現実のライブに近い空間の共有ができます」と話す。また、客同士も「同じ空間で会った」という感覚を得られるため、メタバース上でファン同士のコミュニティーが育ちやすいという側面もある。
現実世界では起こせない演出も可能だ。小道具が宙を舞ったり、自由な視点から現場をのぞいたり、衣装を一瞬で早着替えできたりと、工夫次第でイリュージョンを生み出せる。黒澤さんは「もちろん、音響面では現実のライブに劣るかもしれないし、視聴する側の機材や環境にもよりますが、メタバースライブは『現実のライブ』とはまた違ったエンタメになります」と断言する。
「首里劇場が思い出を超えた」
エンタメにおけるメタバースの可能性を語る黒澤佳朗さん=2024年12月8日、浦添市のG-shelter
G-shelterは2004年に宜野湾市我如古でライブハウスとして始まり、13年に那覇市安里に移転し。コロナ禍の影響で20年に那覇空港近接の倉庫地域にライブ配信・撮影に特化したスタジオとして在り方を変え、23年に浦添市大平へと移転した。
黒澤さんがメタバースと縁を持ったのは、メタバース上でDJイベントを主催しているミュージシャンがG-shelterのスタジオを使用したことがきっかけだった。「そしたら1000人ぐらい来たんですよ。『うわぁすげぇ!』って。現場スタッフは3人ぐらいしかいないのにですよ。未来はすさまじすぎるなと思い知らされました」
先んじて配信業に着手していたことも大きかった。音声、映像、配信の技術はメタバースライブを行う上で即戦力になった。今回のイベントを終えて「首里劇場が思い出を超えてメタバース上で生きた空間になったことが美しいと改めて思います」と充実の表情を見せる。
メタバース2030年予測
黒澤さん自身、メタバースの世界でやってみたいことがまだまだあるという。「例えばメタバースで映画上映会をやれば、関係者が家にいながら舞台あいさつで集まることができたり、作品の世界観に合わせたコンテンツをメタバース空間に配置したり、スクリーンの設置数や場所を自由に変えたりと、従来の映画を見るという体験自体を変えることができます」
メタバースは、2030年には多くの人が利用するとの業界の見方もあり、デバイスの小型化も進んでいる。黒澤さんは「今は誰もがスマホを持ってインターネットをしていますけど、1990年代は一部のいわゆるパソコンマニアのものと認識されていました。同様にまだ一般化したとは言えないメタバースも、プラットフォームとして遠くない将来に、今のネットのような当たり前のものになるでしょう」と見据え、新しいエンタメのドアを開いていく。
メタバース上に再現された首里劇場に集まった観客と、ステージに立つむぎ(猫)=2024年12月8日">
エンタメにおけるメタバースの可能性を語る黒澤佳朗さん=2024年12月8日、浦添市のG-shelter">
メタバース上に再現された首里劇場の入り口。
メタバース空間の観客向けに流すための映像を操作するスタッフ=2024年12月8日、浦添市のG-shelter">
メタバース上に再現された首里劇場でステージに立つむぎ(猫)=2024年12月8日">
エンタメにおけるメタバースの可能性を語る黒澤佳朗さん=2024年12月8日、浦添市のG-shelter">
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メタバース(インターネット上の仮想空間)で再現された首里劇場(1950年開館、2023年解体)で、シンガー・ソングライターむぎ(猫)のライブ「むぎ(猫)がメタバースにやってくる!にゃー!にゃー!にゃー!」が12月8日に開かれた。主催したのは、撮影や配信のスタジオを運営するG-shelter(浦添市)。
同社はライブハウスとしての業態が前身で、実際に現実世界でも活動する生身のミュージシャンがメタバース空間でライブをするのは県内では先駆的な取り組みだ。この日のイベントには延べ500人以上が集まり、G-shelterオーナーの黒澤佳朗さんは「これからはメタバースが一つのエンターテインメントの主戦場を担っていく確信があります」と、メタバース黎明(れいめい)期から広がる近い将来に期待を寄せている。
エンタメにおけるメタバースの可能性を語る黒澤佳朗さん=2024年12月8日、浦添市のG-shelter
メタバースとは
インターネットを利用した3次元の仮想空間やサービスのこと。生身の人間がその場に行かなくても臨場感が得られ、新たな体験やビジネスの創出が進みつつある。
G-shelterが提供する エンタメ新体験
メタバース上に再現された首里劇場の入り口。イベント用に飾り付けが施されている=2024年12月8日
自らのアバター(分身となるキャラクター)を操作して、現実世界ではもう見ることのできない首里劇場の外も中も自由に動き回ることができる。その歴史ある舞台上で、むぎ(猫)が身振りを交えて歌ったり、木琴を奏でたりしている。うちわなどのファングッズを手にした観客が、首里劇場を埋め尽くしていた。入り口では、2022年4月に他界した金城政則館長の優しげな姿が客を出迎える
メタバース空間の首里劇場は、デザイナーの平井晋さんによってかねてから設置されていたもの。このイベントでは、現実世界のG-shelterで演奏している音声や動きを、メタバース上の首里劇場にまるで転送しているかのような感覚で届けている。
メタバース空間の観客向けに流すための映像を操作するスタッフ=2024年12月8日、浦添市のG-shelter
この“場所”にいるそれぞれの客のアバターは言わずもがな、一人一人の人間が操作しており、それぞれの視点からそれぞれがコミュニケーションを交わしている。コロナ禍を経て爆発的に普及した「ライブ配信」と「メタバース空間でのライブ」の最大の違いは ここにある。
「主に演者から多数への発信」という構図ではなく、「演者も客も同じ空間を自由に共有できる」という点に新しい体験がある。
現実のライブではできない演出も
メタバース上に再現された首里劇場でステージに立つむぎ(猫)=2024年12月8日
この機会に初めてメタバース上のイベントに参加した人も目立った。Xでは「ライブ会場にいる感じがしてすごい」「ジャンプもできたし、手も触れた」などの反応が寄せられた。スマホやパソコン画面でも参加できるが、VRゴーグルなどの機器を使えば、まるで目の前にいるかのような臨場感を味わえる。
メタバースライブでの双方向性と臨場感から、黒澤さんは「お客さんだけではなく、やっている側の満足度も高いです。ライブをしながらお客さんの姿や振る舞い、反応を見ることができるので、現実のライブに近い空間の共有ができます」と話す。また、客同士も「同じ空間で会った」という感覚を得られるため、メタバース上でファン同士のコミュニティーが育ちやすいという側面もある。
現実世界では起こせない演出も可能だ。小道具が宙を舞ったり、自由な視点から現場をのぞいたり、衣装を一瞬で早着替えできたりと、工夫次第でイリュージョンを生み出せる。黒澤さんは「もちろん、音響面では現実のライブに劣るかもしれないし、視聴する側の機材や環境にもよりますが、メタバースライブは『現実のライブ』とはまた違ったエンタメになります」と断言する。
「首里劇場が思い出を超えた」
エンタメにおけるメタバースの可能性を語る黒澤佳朗さん=2024年12月8日、浦添市のG-shelter
G-shelterは2004年に宜野湾市我如古でライブハウスとして始まり、13年に那覇市安里に移転し。コロナ禍の影響で20年に那覇空港近接の倉庫地域にライブ配信・撮影に特化したスタジオとして在り方を変え、23年に浦添市大平へと移転した。
黒澤さんがメタバースと縁を持ったのは、メタバース上でDJイベントを主催しているミュージシャンがG-shelterのスタジオを使用したことがきっかけだった。「そしたら1000人ぐらい来たんですよ。『うわぁすげぇ!』って。現場スタッフは3人ぐらいしかいないのにですよ。未来はすさまじすぎるなと思い知らされました」
先んじて配信業に着手していたことも大きかった。音声、映像、配信の技術はメタバースライブを行う上で即戦力になった。今回のイベントを終えて「首里劇場が思い出を超えてメタバース上で生きた空間になったことが美しいと改めて思います」と充実の表情を見せる。
メタバース2030年予測
黒澤さん自身、メタバースの世界でやってみたいことがまだまだあるという。「例えばメタバースで映画上映会をやれば、関係者が家にいながら舞台あいさつで集まることができたり、作品の世界観に合わせたコンテンツをメタバース空間に配置したり、スクリーンの設置数や場所を自由に変えたりと、従来の映画を見るという体験自体を変えることができます」
メタバースは、2030年には多くの人が利用するとの業界の見方もあり、デバイスの小型化も進んでいる。黒澤さんは「今は誰もがスマホを持ってインターネットをしていますけど、1990年代は一部のいわゆるパソコンマニアのものと認識されていました。同様にまだ一般化したとは言えないメタバースも、プラットフォームとして遠くない将来に、今のネットのような当たり前のものになるでしょう」と見据え、新しいエンタメのドアを開いていく。
メタバース上に再現された首里劇場に集まった観客と、ステージに立つむぎ(猫)=2024年12月8日">


イベント用に飾り付けが施されている=2024年12月8日">



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