春風亭昇羊(武藤奈緒美さん撮影)

 若手落語家の春風亭昇羊(33)の沖縄初独演会が2025年1月5日、那覇市三原の花園寄席(アベニア)である。テレビ番組「笑点」の司会や新作落語の旗手として知られる春風亭昇太師匠の門下の二ツ目。
2023年のNHK新人落語大賞では決勝進出を果たした。「僕の落語は江戸の風は吹かないです」「売れたい気持ちはあるんですよ。伝わってないと思いますが」―。ひょうひょうと語る昇羊に、独演会への思いを聞いた。(社会部・真栄里泰球)
しゅんぷうてい・しょうよう
1991年横浜市生まれ。2012年春風亭昇太に入門。16年二ツ目昇進。落語芸術協会所属。著書「ひつじ旅 落語家欧州紀行」は書店のほか、BOOTHからも購入できる。
バナナケーキの縁
 昇羊の沖縄初高座は2024年2月24日。国立劇場おきなわで開催された、昇太師匠の落語会での「権助提灯」だった。「沖縄のお客さまはとても温かく、やりやすい雰囲気でした」と話す。
空き時間には城好きの師匠と共に、南城市の玉城城跡などにも足を伸ばし、文化や風土にも引かれたという。
 「気候も人も素晴らしく、何度でも訪れたいと思える場所」と表現する沖縄に、約1年ぶりに戻ってくる。独演会のきっかけは「バナナケーキ」だった。花園寄席の席亭・知花園子さんは洋菓子店「アベニア」も営み、バナナケーキはそこの人気商品だ。
 「師匠の会で出されたのをいただいて、スタッフだった知花さんに『これ、すごくおいしいですね!』と思わず声をかけました。それがきっかけで交流が始まりました。あの時のバナナケーキがなければ、このご縁は生まれなかったかもしれません」と昇羊。

沖縄初独演会のフライヤー

女性キャラクターと「江戸の風」
 女性が出てくる噺(はなし)が好きだという。NHK新人落語大賞では、旦那の留守に若い男を呼び込む商家のご新造が“活躍”する「紙入れ」を演じて、高得点を獲得した。2024年2月の沖縄での「権助提灯」は、田舎者の権助と旦那が提灯をともして本宅と妾宅を往復する内容だ。
 「『紙入れ』や『権助提灯』のような演目は、女性キャラクターの感情の動きが細やかで、感情移入しやすい。僕の中では似た噺というか同じくくりなんですけど、女性が出てくる噺を気づいたらよくやるようになっていました」
 女性のキャラクターを掘り下げる一方で「僕は江戸っ子の要素が全然ないんです、噺に江戸の風は吹かないですよ」とも話す。
「啖呵を切る人とか嫌だなって思うし、江戸っ子は口は悪いが腹の中はさっぱりしているというけれど、僕は逆で腹の中にいろいろあるけど言葉にできないタイプ。宵越しの銭は持ちたいなって思いますし…」
 「江戸の風でなければどんな風が?」と水を向けると「気弱な男の子の風じゃないですか」とかわされた。
 独演会では落語3席を披露する予定だ。演目は当日のお楽しみ。得意技で攻めるか、イメージ一新の高座になるか、期待が高まる。

2024年の夏に旅したドイツのケルンで

初の著書もお披露目
 沖縄初独演会では、初の著書「ひつじ旅 落語家欧州紀行」(虹色社)もお披露目される。2025年元日に発行される同書は、2024年の夏にベルギー、ドイツ、オーストリアを落語会で巡った道中をつづる。帯には昇太師匠の「昇羊、面白い!! なるほど、旅はネタの宝庫だ!」との言葉がある。昇羊本人は「何度も読み返しているので、自分では何が面白いのか分からなくなっていますが、読者の方にはぜひ楽しんでいただきたいですね」と話す。

春風亭昇羊著「ひつじ旅 落語家欧州紀行」

 「もちろん、売れたいとか活躍したいという気持ちはあるんですよ。伝わってないと思うんですが」。軽い口調の裏には、師匠の元に7回通って弟子入りを認められた熱意や「落語家だけはやめようと思ったことがない」という性根が隠れている。

 「毎年、わくわくする出来事が増えているので、2025年もさらに刺激的な年にしたい」と語る昇羊。沖縄での初独演会は、その第一歩となる。
【公演概要】
第4回花園寄席
春風亭昇羊 沖縄初独演会
2025年1月5日(日) 開場17時半/開演18時
木戸銭2500円
那覇市三原1-14-5
予約・問い合わせ
電話090-9497-9484
metalcurry5710@gmail.com(知花)

 
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若手落語家の春風亭昇羊、初の沖縄独演会 1月5日那覇市の花園寄席 「刺激的な2025年」の幕開けに
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若手落語家の春風亭昇羊、初の沖縄独演会 1月5日那覇市の花園寄席 「刺激的な2025年」の幕開けに
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若手落語家の春風亭昇羊、初の沖縄独演会 1月5日那覇市の花園寄席 「刺激的な2025年」の幕開けに
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若手落語家の春風亭昇羊、初の沖縄独演会 1月5日那覇市の花園寄席 「刺激的な2025年」の幕開けに
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