米軍による物資の投下訓練は、度々事故の原因となっている。過去には民間人が巻き込まれて命を失ったケースもあり、不安は根強い。
米軍は住民の生活地域に近い場所での投下訓練の一切を中止するべきだ。
 米海兵隊のMV22オスプレイが伊江島周辺の海上に重さ400~450キロの貨物を誤って落下させていたことが明らかになった。
 伊江島補助飛行場への物資投下訓練中で、兵士らに配給される携帯食(レーション)を積み込んだ縦、横、高さがいずれも1・3メートルの貨物パレットが落とされた。
 現時点でけが人や物的な被害は確認されていないが、現場は伊江島の南西にある西崎漁港の沖合とみられている。
 漁船の出入りがあるほか、今の時期はホエールウオッチングのための遊漁船も航行する海域だ。住民を巻き込んで、事故が取り返しのつかない事態を招いた可能性があることは言うまでもない。
 米軍は「予期せぬ風向きの変化で予定していた着地点から外れた」と説明。貨物は提供区域外に落下した。海に近い場所は天候が変わりやすく、事故の再発リスクが拭えない。今後、この地域で安全に投下訓練を実施することは難しいのではないか。
 2014年4月には、重さ約200キロのドラム缶4本が落下。20年1月には箱状の重りが提供区域外の畑に落ちている。

 落下事故が繰り返されており、深刻だ。
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 伊江島での投下訓練は、復帰時の日米合同委員会で在沖米軍基地の使用条件を定めた「5・15メモ」で日米が合意した。
 以降、伊江島補助飛行場では落下・降下訓練による事件事故の発生が相次いでいる。度重なる事故に伊江村側は「物資の投下訓練は住民の命に関わる」として中止を求めている。
 投下訓練を巡っては1965年、読谷村で米軍が投下したトレーラーの下敷きになり小学5年の女児が犠牲となった。
 伊江島補助飛行場では米兵のパラシュート降下訓練も行われ、兵士が区域外に降下する事故もしばしば起きている。
 ヒューマンエラーだからといって、事故を放置するような対応は看過できない。
 日米両政府は事故の原因を究明し、県や地元へ説明を尽くすべきだ。
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 今回の落下事故では、オスプレイが訓練に使用されていた。
 米軍は昨年、米本国でオスプレイが墜落寸前の事故を起こしたことを受けて、全軍のオスプレイの飛行を一時停止した。
 だが数日後に、在冲米海兵隊は、飛行停止の詳しい理由や安全策の内容も十分に示さないまま、オスプレイの飛行を再開した経緯がある。
 住民の不安をよそに飛行を続けるべきではない。
日本政府は事故の再発防止策と安全策の徹底について、もっと強く米軍に要求すべきだ。
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