照屋年之監督(ガレッジセール・ゴリ)の最新映画「かなさんどー」の沖縄先行公開が31日から始まる。母(堀内敬子)の死をきっかけに父(浅野忠信)を許せずにいる娘(松田るか)が主人公の作品で、伊江島を舞台に親子・夫婦の愛情とわだかまりを描く。
照屋監督は「多くの人に当てはまる物語だ。僕自身が助けられてきたエンタメを作る側として、多くの人に届けたいと思っている」と話している。(聞き手=社会部・真栄里泰球)
 -プレミア上映などでの反応は。
 「『見て良かった』『自分の家族について考えた』という声が多かった。脚本を書いた時点で、どんな人にも当てはまる物語ができたと感じたし、それを素晴らしいキャストが形にしてくれた」
 -6年前の「洗骨」に続き家族が題材になっている。
 「撮りたい映画はたくさんある。特に、家族の話にこだわっているわけではない。でも、物語を書こうとすると、どうしても家族というテーマが避けられない部分はある。主人公たちの姿に観客が共感し、自分自身を奮い立たせ、『頑張ろう』と思えるような作品を作りたいと思っている」
 -撮影地やキャストの選択は。
 「全てが『出会い』。例えば、浅野さんは僕の中では全くイメージになかった。でも、プロデューサーが提案してくれて、全く違う視点が加わった。
そういう出会いの積み重ねが映画を作っていく。伊江島も、物語を作る中で自然と導かれたような感覚がある」
 -主題歌に前川守賢さんの「かなさんどー」を選んだ。
 「たくさんの楽曲の歌詞を調べたが、一番この映画にぴったりだった。クライマックスでこの曲に乗せて夫婦の過去の愛の記憶が流れていくので、映像と歌詞がリンクして、観客の心に深く響くと思う」 
 -影響を受けた監督は。
 「ジャッキー・チェンには影響を受けた。お笑いの中にもアクションがあって、主人公が追い込まれながらも悪に立ち向かっていく。スピルバーグの『インディ・ジョーンズ』を初めて見た時の衝撃も忘れられない。僕自身、子どもの頃に落ち込んだ時や、学校に行きたくないと感じた時、寂しかったり、つらかったりした時に救われたのは、映画やテレビの世界だった。だからこそ、今度は僕がその立場になりたいと思う。エンタメは、幸せをより幸せにしてくれるスパイスであり、悲しい時には背中をさすってくれ、何かに挑戦しなきゃいけない時にはエネルギーになってくれる。僕自身、エンタメに助けられてきた。作る側として、多くの人に届けたいと思っているし、沖縄には育ててもらった恩があるので、沖縄を舞台にして、広げていきたいという気持ちがある」
 -ついに公開だ。

 「お待たせしました! 『かなさんどー』は子どもからオジー、オバーまで楽しめる映画になったと思う。夫婦や親子といった、誰にでも共通するテーマを描いているので、ぜひ見てほしい」 
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 映画「かなさんどー」の詳細は公式サイト(https://kanasando.jp/)。
 [あらすじ] 
 悟(浅野忠信)は、妻の町子(堀内敬子)を亡くし、年齢を重ねるとともに認知症を患っている。娘の美花(松田るか)は、母が死の間際に助けを求めてかけた電話を取らなかった父を許せずにいる。父の命が危ないと知らせを受け、故郷の伊江島へ帰った美花だが、親子の関係を一向に修復しようとしない。しかし、生前に母が記していた大切な日記を見つけ、父と母の「愛(いと)おしい秘密」を知る。
 てるや・としゆき 1972年生まれ。沖縄出身。映画監督、芸人、俳優。95年にお笑いコンビ「ガレッジセール」を結成。2006年から映画監督のキャリアをスタート。18年の映画「洗骨」で日本映画監督協会新人賞を受賞。
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照屋年之監督、映画「かなさんどー」 1月31日から沖縄で先行公開 親子・夫婦の心情描く【インタビュー】
映画「かなさんどー」より。娘役の松田るか(左)と父親を演じる浅野忠信(c)「かなさんどー」製作委員会
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