米軍普天間飛行場周辺で高濃度の有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)が相次いで検出されている問題で、県の専門家会議は「基地が汚染源だ」と結論付けた。
 自然界ではほぼ分解されず体内に蓄積されることから「永遠の化学物質」と呼ばれ、発がん性などが指摘される化合物だ。

 何より優先されなければならないのは住民の健康である。実態解明のため、県が求める立ち入り調査を直ちに実施すべきだ。
 専門家会議(座長・平田健正和歌山大名誉教授)は、2021年度から汚染源についての検討、議論を重ねてきた。結論として、少なくとも2地点の汚染源は普天間飛行場と断言。理由を次のように説明する。
 ・地下水は普天間飛行場の南東側から北西側へ流れ、高濃度のPFASは下流で検出されている。
 ・飛行場の格納庫、消火訓練施設で泡消火剤の使用が確認された。
 ・これら地点に近い流域の地下水から、米軍が導入した泡消火剤にしか含まれない成分が検出され、物質の構成比も類似する。
 米軍はPFASを含む泡消火剤を長年使用してきた。以前から基地が汚染源として疑われてきたが、公式には認めていない。
 それだけに今回、会議がファクトとデータに基づき導いた結論は、合理的で説得力がある。
 日本政府と米軍への専門家からの「重い警告」と受け止めるべきだ。

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 日米地位協定は3条で米軍に「公共の安全に妥当な考慮を払う」よう義務付けている。
 15年には日米環境補足協定が発効。米軍基地における環境対策は、日本環境管理基準(JEGS)に基づき行われ、日米のうちより厳しい方の基準を採用する原則となっている。
 問題はこの約束が守られず、基地内の環境保全措置についての情報がほとんど公開されていないことだ。
 専門家会議が汚染源は基地だと結論付けた4日、東京では市民団体「宜野湾ちゅら水会」が、一向に解決しない現状を「人権侵害だ」と訴えていた。
 席上、防衛省の担当者は「米軍との因果関係について、確たることを言うのは困難」と回答している。
 はっきり言って今の国の姿勢は、防衛省も外務省も、米軍をかばい米軍の利益を守るため、県民の前に立ちはだかっているようにしか見えない。
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 基地周辺住民の血中PFAS濃度が全国平均を上回っている調査結果もあり不安は尽きない。
 基地由来との結論が出た以上、県と政府と米軍が一体となって対策に取り組む必要がある。
 地位協定改定を持論とする石破茂首相は7日、トランプ米大統領と会談する。
 立ち入りが実現しない背景に、米軍の排他的管理権という地位協定の壁があることはよく知っているはずだ。
 国内法の適用など日本側の権限を強化する改定を迫るべきだ。
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