県議会で2025年度の当初予算案が審議されない状態が続いている。
 地方自治体は二元代表制だ。
知事が予算案を作り、説明し、県議会はその内容を認めるかどうかを決める。税金の使い方が県民の役に立っているか、無駄はないかと、議論を尽くすことが県と県議会にとって、最も重要な仕事の一つだ。
 しかし、19日からの代表質問や一般質問では、予算案に関する質疑が制約されるという。異常事態だ。
 根底には県のワシントン事務所を巡る問題がある。
 野党会派は事務所の設立経緯などに違法性があるとして、設立の際の出資金を議会で追認する議案の提出などを求めている。
 県は総務省の見解を基に出資金は事務所運営の委託費に含まれ、予算成立しているとして改めての議案は「不要」という立場だ。
 県議会と県はそれぞれ調査を進めている。一方、県は2月定例会に米事務所の運営費を盛り込んだ予算案を提出した。
 これに自民と公明の各会派が反発し、予算案を差し戻す動議を、賛成多数で可決したのである。
 総務省は動議に対し、議会が予算案を差し戻す「返付行為」に法的根拠がないという判断を示している。
 つまり、予算案は県に戻らずに、議会へ提出したままの状態だ。

 玉城デニー知事は、このまま議会で審議するよう求めている。
 予算案が県に戻っていないのであれば、議会は審議に応じるべきではないか。
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 一方、野党側は、動議の可決は「現在の予算案では審議できない」という議会の意思表示とする。
 知事の要求に応じれば、「一事不再議」の原則に反する可能性があるという認識だ。
 ただ、数の力で動議を押し通したことが混乱を招いた一因である。
 そもそも議会は予算案を審議し、否決したり、修正案を提示したりすることもできるはずだ。
 今後の想定として、知事が予算案を専決処分するか、現在の予算案を取り下げ、新たな予算案を再提出するかの2通りが挙げられる。しかし、年度当初の予算案を審議を経ずに専決処分した前例はない。
 異常事態の発端は米事務所の問題であり、県にも責任がある。
 双方で正常化の道を探るべきである。
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 予算案には、米事務所の7カ月分の運営費として約4千万円を計上する。
 県は事務所の機能を維持するためとするが、なぜ7カ月分か、なぜ県や議会の調査終了まで一時閉鎖できないのか、といった具体的な説明はない。

 米事務所の有用性を主張するなら、議会の理解と納得を得るための説明が不可欠である。
 予算案には子育て支援や離島振興、自立型経済の構築、戦後80年の平和祈念事業などが並ぶ。
 県民生活に直結する政策の議論を深めるため、県も県議会も県民目線で審議を始める必要がある。
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