米海軍のドック型輸送揚陸艦「サンディエゴ」が26日午前、石垣港に入港した。米軍艦船の入港は3年連続。全長208メートル、排水量約2万5千トンの大きさは同港入港の軍艦で最大級だ。
自衛隊の訓練支援艦「くろべ」も寄港。バースに日米の艦艇が並んで接岸した。
いずれも目的は「乗組員の休養と補給」という。同時入港について中谷元防衛相は「(訓練など)連動したものではない」とした。
ただ、サンディエゴは19日にホワイトビーチへの入港が確認されている。休養と補給が必要ならホワイトビーチで済ませればよかったのではないか。1週間後に民間港を利用する必然性は見当たらない。
陸上自衛隊石垣駐屯地の開設以降、市内では有事を想定した配備や訓練が相次いでいる。そうした動きに合わせて米艦船の入港ペースも上がっている。
ドック型輸送揚陸艦は上陸作戦などで海兵隊員や物資などを輸送する。今回の寄港は民間港利用の地ならしに見える。
石垣市の中山義隆市長は入港について「法的に問題なく、安全性に問題なければ許可していく」とした。
一方、市側が武器などの積載物の情報を問い合わせても回答はないという。港湾管理者として安全性をどう確認したのか疑問符が付く。
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この日は新石垣空港にも米軍普天間飛行場所属の作戦支援輸送機UC35Dが飛来した。市内で開かれる沖縄防衛局主催のセミナーに参加する米軍関係者を輸送するためという。
緊急性は見当たらない。なぜ民間機を利用しないのか。
日米地位協定5条は米軍が入港料・着陸料などを課されずに民間港や民間空港が利用できると定める。
軍務を想定したものだが、日米の軍事一体化が進む中、都合の良い解釈によって米軍の特権が拡大している実態がある。
玉城デニー知事は「緊急時以外、米軍が民間の空港や港湾を使用すべきではない」とする。
偶発的な事故の懸念があるほか、民間の空港や港は住民の重要な生活インフラだ。
米軍の使用をなし崩し的に広げるべきではない。
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政府は国家安全保障戦略に基づき「特定利用空港・港湾」の指定を急ぐ。新年度からは新たに「道路」を対象とすることも決めた。
指定後も「自衛隊や海保の利用に大きな変化はない」とするが、石垣港で日米軍艦の寄港が増えていることを見れば「軍事利用が増えるのでは」との疑念は一層深まる。
指定によって米軍による民間の空港・港湾利用のさらなる常態化も懸念される。
基地負担の軽減が一向に進まない中、米軍の活動を基地外に広げるような利用は認められない。