[手話でつながる新しい世界]
 きこえない・きこえにくい人のオリンピック「デフリンピック」が11月、国内で初めて東京で開催されます。「だれもが個性を生かし力を発揮できる共生社会へ」という大会の理念を踏まえ、沖縄タイムス社は、受講生4千人のオンライン手話教室を運営する藤乃さん(37)=豊見城市出身=を講師に、県内、小中高校の児童生徒や大学生を対象にした「手話でつながる新しい世界 学校巡回プロジェクト」を各校で開きます。
手話は耳が聞こえない人と会話する必要不可欠な言語です。巡回プロジェクトを通し、手話の大切さや耳の不自由な人たちとコミュニケーションを取る意義、楽しさを伝え、「聞こえない世界」への理解を深めることを目的にしています。(東京報道部・照屋剛志)

生徒たちといっしょに「つながる」という意味の手話でポーズする藤乃さん(左)と渡辺博和さん

藤乃さん巡回授業 長嶺中プレ講演 「聞こえない世界」に触れる
 豊見城市の長嶺中学校で1月に開かれたプレ講演では、全校生徒540人が手話を学びました。
 「両手を垂直に上げ、手のひらをひらひらさせてください」。
 藤乃さんは、まず手話による拍手を紹介。耳の不自由な人たちは、どれだけ盛大な拍手をしても聞こえません。その代わり、手をひらひらさせることで、目にとまりやすく、すぐに気づくといいます。
 まったく聞こえない人もいれば、少しだけの人、片耳が不自由など、聞こえ方もさまざま。「生活の中での不便さも多様であることを知ってほしい」と説きました。
 藤乃さんとともに教壇に立った渡辺博和さん(31)は、補聴器を外すと、ほとんどの音が聞こえなくなる「ろう者」。渡辺さんは「後ろから声をかけられても気づかず、無視していると誤解されることもある」とこれまでの経験を解説しました。「肩を軽くたたくか、見える範囲まで近づくと分かります」と少しの気遣いで解決できることもあると説明しました。

 渡辺さんは、唇の動きで言葉を理解し、自ら発声する「口話」もできます。「とても練習して身につけた。健聴者は、耳の不自由な人に出会うと、会話を遠慮してしまいがちだが、意思疎通ができます。もっとおしゃべりがしたい」と話しました。
 藤乃さんは「誰にとってもコミュニケーションはとても大切。手話も覚えて、耳の不自由な人たちとの会話を楽しんで」と呼びかけました。生徒たちは「おはよう」「こんにちは」といったあいさつや、「だいじょうぶですか」などの基本的な手話を学びました。
 最後は、生徒会長の新城芽結さん(13)がお礼のあいさつ。「音が聞こえないことによる不便さがよく分かりました。すべてを手話で表現するのは難しいが、ゆっくり口を動かしたり、表情を大きくしたりして、耳の不自由な方とおしゃべりしてみたいです」と感想を述べました。
 保育士の母親から習ったという新垣妃奈さん(13)が手話で通訳しました。
 全生徒が拍手の手話で感謝を伝えました。
540人の手のひらが舞い、にぎやかに講演を終えました。

手話の魅力を伝える藤乃さん

 1988年生まれ、豊見城市出身。手話歴23年。那覇高校卒業後、手話通訳や言語学を専門に学修。結婚を機に東京へ移住。専業主婦の生活から一念発起し、2019年にオンライン手話教室を開始。独自開発した教材などが人気を集め、受講生は4千人を超えています。日本手話文化協会、代表理事。

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