ヘイトスピーチを見聞きした経験を尋ねた項目(複数回答)では「テレビやネットなどの報道」との回答が45・7%で最も高く、次いで「ネットの書き込み」23%、「デモや集会、街宣活動」が14・6%だった。
これに対し「見聞きしたことがない」は34・5%で、県民の多くがヘイトスピーチを見聞きしている。
特にネット上にあふれる誹謗(ひぼう)中傷やデマに深刻な懸念を示した。
憂慮されるのは沖縄県民であることを理由にした差別的言動だ。15%が経験したり、感じたりしたことが「ある」としている。「外国ルーツ」11%、「性的指向、性自認」7%と続く。
10~50代の幅広い世代が、ネットを通じて差別的な表現を直接目にしている。
「あいつらは猿だから日本から追い出した方がいいと言われているのをネットで見た」「基地問題や性暴力、選挙の前後などで沖縄県民を侮辱するコメントをよく見る」
書くのも心がえぐられるような暴言だ。
県条例では外国ルーツの人々へのヘイトは県が発言者の氏名などを公表すると定める。他方、県民に対するヘイトへの対処は「解消に向けた取り組みを行う」との表記にとどまる。
しかし、県民もまたヘイトの対象となっている。県民か外国人か、または性的指向を理由にしたヘイトスピーチかで対処方法を変える必然性はない。
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いわゆる「沖縄ヘイト」をはじめとするネット上の差別的言動の解消が求められている。
県が力を入れるべき対策を尋ねたところ「プロバイダーなどに削除を義務付ける法的規制を求める」との回答が最多の56%だった。
ほか「相談窓口の充実」「削除を要求する」「ネットの監視・取り締まり」がいずれも高く、ネット対策に県の積極的な関わりを求める意見が多い。
県は今年3月、中国人を罵倒するユーチューブ動画2本をヘイトスピーチと認定した。
条例に基づく初のケースだったものの、発言者の氏名は公表していない。例外規定を当てはめたとしたが、条例の趣旨に照らして妥当な対応だったと言えるのか疑問が残る。
真に実効性のある条例への改定が必要だ。
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今調査で県条例を「知らない」と回答した人は67%に上った。「内容は知らないが聞いたことがある」(27・9%)と合わせると9割以上だ。
国籍や人種、性別などの属性を理由に特定の人を攻撃するヘイトスピーチは人権侵害に当たり、県条例はその防止を目的に作られた。
県民のほとんどが条例を知らないとなれば、何を規制しているのかも知られていないことになる。より一層の周知が求められる。